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第七話

ここは魔の宮殿。魔神殿の間。


祭壇は赤と黒で占められ床には幾何学模様。ところどころに文字が重ねられ柱はそれを囲むようにたっている。


「しくじっただと!!」


大声で怒鳴られ、炎珠のほほを平手打ちが飛び、その反動で吹っ飛び、後ろの柱に身体がぶつかる。

すぐに体勢を立て直しひざまずき


「申し訳ありませんでしたファネル様」


平手打ちで唇を切ったのか唇からは血が出ている。


魔王が目覚めていない今、ファネルがこの宮殿を仕切っている。

炎珠はファネルの下で手足となって刺客や密偵などの危険な役割を果たしている。


「青龍の器のことをまったくつかめなかったのだな。」


そう訊ねられ


「…はい…確認が取れなかったのは長男のホジュだけなので一番怪しいかと…」


表情一つ変えずに答える炎珠。


「お前が朱雀の器だからこそ探りに行かせたのだ。その役割も満足にこなせぬとは…いつまでたっても役に立たぬ人間め!」


怒りをこめた目でじっと炎珠を見つめ、そばに近づき、炎珠のあごに指をかけ、顔を上げさせ、たれた血を親指でぬぐいその血をなめる。


「…まぁいいだろう…後で部屋に来るがいい…仕置きだ」


炎珠の髪を一房すくい取り、少しかがみながら髪の香りをかいだ後、耳元でささやく。

ねっとりと絡みつくような視線を残し、部屋を出てゆくファネル。

炎珠はうつむいて唇をかみ、ひざまずいた膝の上に乗せている手をぎゅっと握り締める。

10歳のときここに来てから繰り返されてきた仕置きという名の屈辱。

繰り返されるごとに恐れと孤独と絶望と無力感で心が死んでゆくのを感じていた。


何度抜け出そうと試みたことだろう。そのたびに連れ戻された。そのうち薬漬けにされ逃げ出すこともできなくなった。定期的にここに戻り薬をもらわなければ発作が起きるのだ。

何度死を考えただろう。けれど朱雀の器として存在する以上天寿を全うするしか死はありえないのだ。


セオングのことをふと思った。

まったく違う世界の住人。交わることはない人種の人間だった…はずだった。


最後の映像が浮かぶ。

セオングの胸に青い渦を巻いている光。青龍の器である証。


炎珠はファネルにセオングのことを隠したがきっとすぐにわかってしまうだろう。

そのときは敵になるのだ。


胸に手を当てる炎珠。

ふわっと赤い炎の光が広がる…が、すぐにその光は黒く染まり、渦を巻く。


「うっ…」


胸が苦しくなり、押さえる炎珠。


「朱雀…すまない…私がこんなだから…」


すまなそうにそうつぶやくと、それに答えるように、胸の光が赤くふわっと光った。


そして立ち上がったときには感情をまったく感じない冷たい表情でファネルの部屋へと向かう。


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