第五話
それから何日かがたった。屋敷の中や家人など色々探ったが何も出てこない。
ハルラ山を護る力…龍の力を代々受け継ぐ者が誰なのか。李家に青龍の器がいるという情報があったのだが。
この李家の血を継ぐものとしては、この家の主人のジソブ、長男のホジュ、次男のセオング、三男のテソン、長女のヨンジェがいる。
主人のジソブと次男セオング、三男テソン、長女ヨンジェにはあざのようなものはなかった。
あとは長男のホジュのみ。
ホジュにあざがあれば継承者と言うことになる。ホジュの回りを探ろうとするがガードが固く、あざを見ることなどできそうにない。一か八か寝る前に飲む酒に眠り薬を仕込み確認する…それしかないだろう。
ホジュの部屋の前、ミジュがお膳を持って立っている。
いつも行くホジュの世話係が変わってくれと言ってきたのだ。渡りに船だ。
しかし世話係がいつも男の人だっていうのは面白い。何か秘密があるのだろうか?
それとなく聞いてみるが”よろしく”というだけ。
「ホジュ様…お酒をお持ちしました」
「…入れ」
ミジュが入るとホジュが窓のそばの椅子に座っている。窓から入る月光を眺めていたのだろうか…
ミジュが入ると窓を閉めテーブルに着く。
セオングと違い、線が太くがっしりしたタイプで豪傑そうだ。
「新しい侍女か?」
「はい…ミジュともうします」
じろじろと頭の先から足の先までを嘗め回すように見る…いやなタイプだ…これは早めに出て後から確認に来るほうがいい…
用意を整え出ようとしたとき…
「勺をしろ」
侍女であるため逆らえない。仕方なく返事をする。
「…はい」
酒の入った入れ物に手を伸ばし杯にに注ぐ…
「お前も飲め」
「申し訳ございませんホジュ様それだけはご勘弁くださいませ。お酒は飲めませんの…それに奥様の部屋にも行かなければ…」
席を立とうとするミジュにホジュは手を握り引き寄せる。
「な…何をなさいます」
手を払うのは簡単。伸してしまうのも簡単。でも今、正体をばらすわけには行かない。
必死に抵抗しようとするが鍛えているだけあって本気を出さなければ逃げられそうにない。
あれよという間にベッドのすぐそばまで来てしまう。
焦りを感じ始めるミジュ。
「ホジュ様…やはり先にお酒を飲みませんか?お注ぎいたします。」
すうっと身を交わしながらさり気なくテーブルのほうに近づく。
その瞬間、強い力で引っ張られ布団の上に押し倒される。
盛りのついた馬か…そんなことばが浮かぶ。
そんなことを考えているうちにホジュは胸の紐に手をかけひいてゆく…
しゅるる…と絹がすれる音がする。
ミジュの両腕は、ホジュの左の手1本で押さえられている。
大きな男に力ずくで抑えられると、さすがにびくともしない…
片手だけでも自由が利くなら…
胸元がはだけ着物の裾が上げられてゆく…
こんな場面など何度も切り抜けてきた。手が自由ではない今、帯に手をかけられると危ない状況に…
「ホ…ホジュ様…わかりましたわ…自分で紐を解きます…なので手を緩めていただけません…?」
首筋まで近づけていた顔をミジュのほうへ向ける。
「ほう…観念したと言うことか?…」
手は緩めない。
「新しい女が入ったと聞いて味見をしてやろうと世話係に金を握らせたのだが…お前は声ひとつ出さないのだな…泣きわめかない女など少しつまらんが…どこまで耐えられるものかな…?」
着物のすそを引っ張られビリビリと破られる。
それまでゆっくりと反応を楽しむように進められていた手が打って変わってぞんざいに扱われあざが残りそうなくらいきつく両手首を絞められる。
ホジュの罠ににはめられたのだ。世話係がいつも男なのはいつも侍女に手をつけるのでそれをさせないため。
だがそれも形だけのもので世話係はすでに買収されて言いなりなのだ。
怒りがこみ上げていく。少しづつ暴れるようにして身体をずらす。
ミジュの首筋に息がかかるほど顔が迫っている。すこし右手が自由になりそうだ。
もう我慢も限界だ…本気を出すときか??そう思って右手を引き抜こうとしたそのときだった…