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第十五話

次の日の朝セオングは早めに宿を立ちフォン家へやってきていた。

宿で昨日夜遅く彫金師と会い、宝珠に似合いそうな蝶の模様の髪飾りを買った。

早く見せたいのもあって早く宿を立ったのだ。


門の前に立つと異様な雰囲気で体中がビリビリする。

嫌な予感がし、門を開けてはいると壁やそこかしこに赤い液体が振りまかれている。


血だ!


すぐに宝珠のことを思い、宝珠の部屋へと向かう。そこにはベッドに横たわる血まみれの女性の姿があった。

心臓が早鐘のようになり始める。すぐにそばに行き抱き上げるとレイレイ夫人だった。

すでに事切れており青白い顔をしている。

そっとベッドに横たえると部屋を後にし、駆け足で各部屋を見て回る。

離れなければよかった。そばにいれば…そんなことを思うが後の祭りだ。


「いやぁぁぁ〜!!」


宝珠の声だ。声のするほうへと走り出すセオング。


バン!


扉を開いたとき、見えたのは白い着物を赤く染め、立っている後姿。


「宝珠!!」


声をかけるとゆっくりと振り返る。


顔じゅうに血しぶきが飛び、目には涙が浮かんでいる。

宝珠に隠れて見えなかったが後ろには春欄が立っている…が、目はうつろでどこも見てはいない。

胸には剣が突き立っていて、その剣を黒い手をした宝珠の手が握っている。


「兄さま…逃げて…」


宝珠の息は荒く、目がうつろだ。気を失いかけている。

宝珠は春欄に突き立てていた剣を抜き取る。血しぶきが宝珠へと散る。宝珠の身体がビクンと反応する。


「しゅん…らん…おとうさま…おかあさま…ごめんなさい…」


涙が一筋頬を伝う。ふっと気を失い崩れ落ちる。


「宝珠!!」


駆け寄るセオング。


黒い手袋だと思っていたものから黒い煙が湧き上がり、宝珠を覆うように沸いてくる。

近寄って宝珠を抱き上げようとするが、その煙のようなもので近づけない。

黒い煙りは宝珠のすべてを覆いつくし、内側へと吸収されると、肌の色はよりいっそう白く、唇は赤く、開いたまなざしは宝珠のものとも炎珠のものとも違い、まがまがしいものだった。


『ふふふ・・・・これで朱雀の力は私のもの。もう誰にも止められるものか。最後の希望と幸せを奪ってやったのだから』


声のトーンが変わり男の声になる。


「宝珠!!…お前は…ファネルだな…」


セオングのほうを向くファネル。


『まだ生きている者がおったとは…ちょうどいい…朱雀の力、試してみようぞ』 


そういうが早いか、セオングに手をむけ手のひらから赤黒い光を放つ。

セオングは剣を構えるが吹き飛ばされて壁に激突する。


セオングが身体の痛みをこらえ起き上がるとファネルは剣を握っていた。

そのとたん剣から赤黒い炎がゆらゆらとまがまがしく揺らめく。

ファネルはセオングへと剣を向け、攻撃を仕掛ける。

セオングは交わすので精一杯だ。

ファネルの身体からからあふれ出る邪悪な何かが体中の力を奪ってゆく…


「宝珠…宝珠…目を覚ませ!!」


セオングが邪悪なエネルギーに飲まれそうになりながらも声を振り絞り叫ぶ。


『無駄だ…絶望のふちに追い込んでやったのだから』


キンッッ


ファネルが刀を振り下ろし、それを受け止めるセオング。

見詰め合う目と目…黒い…暗い何かが伝わって来るのを感じる。

それを感じるたび、だんだん力が入らなくなってくる。


”宝珠の…炎珠の眼とは違う…宝珠たちを傷つける訳には行かない。だめだ…探さなくては…炎珠を…宝珠を…”


そう思ったとたんセオングの胸が青く光り、目の色が銀色に変わる。

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