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第十二話

セオングの胸の青い光が手を伝い、炎珠の中へと入り込んでゆく。ザリザリと身を削るような痛み。

セオングがうめく。

それは蛇のような…龍のような…うねりながら炎珠の胸の中心へと向かう。


そのとたん炎珠は背中をそらし目を大きく開き、声にならない声をあげる。


「!!!」


セオングは何がおこったのかわからず炎珠に差し出しかけた手を止める。

炎珠を見るとセオングから放たれた龍が体中をめぐっているように見える。

その間も炎珠は身体を硬直させ震えている。

炎珠の中から徐々に赤黒い光が広がってゆく。炎のように揺らめくその光は次第に広がり羽根を広げその間から頭を持ち上げる。


朱雀だ。


朱雀と龍が絡み合って赤黒い光を放っていた朱雀が徐々に鮮やかな朱色に変わってゆく。

完全に朱雀の赤い光が戻ったとき、痛みに耐え切れなくなって気を失って倒れる炎珠をあわててセオングが支える。まだ龍は炎珠の身体をめぐっている。


「炎珠!炎珠!!」


体を揺さぶるが、まったく反応がない。指を鼻のところに持っていくと息をしていない。


「炎珠!!!」


そのときその龍がセオングの手から胸へと這って体に戻ってゆく。毛を逆なでられるような痛みを伴った感覚。

セオングはうめきを上げながら抱きかかえている炎珠を落とすまいと必死だ。

すべてがセオングの身体に収まった時…


「っっぷはぁ〜〜ゴホッ!ゴホッ」


と炎珠が息をはじめた。朱雀の光も徐々に収まり胸の中心へ消えてゆく。


「大丈夫か?」


そうセオングが声をかけるが、息遣い荒く、意識が朦朧とした炎珠。


「ここから…出なければ…」


そういいながらセオングの支えを払いのけ、立って歩こうとするが体に力が入らないようでその場に崩れる。

セオングが再び炎珠の体を支えると、すぐに気を失った。

身体を触るととても熱く、熱が出ていた。




丸1日熱にうなされながら寝ていた炎珠がゆっくりと目を開ける。

春欄とレイレイが心配そうに覗きこむ。

炎珠の熱はまだ高く、身体が震え、とても苦しそうだ。


「よかったわ。目を覚まされたのね…」


レイレイがそういいながら額の汗を拭いている。


「女の方でしたのね。セオング様にうかがうまでわかりませんでしたわ」


そういいながら汗でほほに張り付いた髪を直す。

炎珠は熱があり、苦しいはずなのににっこりと微笑むと


「お…かあさま…」


熱でかすれた声でそうつぶやく。レイレイは夢と現の間で自分を母親だと勘違いして口走っているのだろうと思っていた。


「…お…かあさま…ほうじゅは…大丈夫ですから…おかあさま…ゆっくりお休みになって…」


そういいながら炎珠は震える手を、額の汗を拭いてくれているレイレイに伸ばし、手をとって膝へと置く。


「ちいさな春蘭が…さみしがって…なきだしますから…早く行ってあげてくださいね」


そういうとまた意識を失ってしまう。


レイレイは時間が止まってしまったように驚いた表情のまま微動だにしない。しばらくしてやっと一言


「ほう…じゅ・・・?」


そう言葉に出すと、せきをきったかのように目から涙があふれる。

そして宝珠のしぐさや行動、性格などを鮮明に思い出した。

宝珠が熱をだしたとき、レイレイが一晩中看病をしていると、いつも母であるレイレイを気遣い休ませようとするしぐさにそっくりなのだ。

レイレイは炎珠と呼ばれるこの女性は宝珠なのだと確信する。




それから炎珠はまったく意識が戻らず、高い熱と震えが止まらないので医者を呼び診察してもらう。


「薬ですね。麻薬のような常習性のあるものです。かなり長い間飲んでいるようですね。廃人にならないのが不思議なくらいです。死んでもおかしくないですよ。一応薬は出しますが手の施しようがありません。これからもまだまだ発作はおきるでしょう。そして…」


もう長くはないとそう医者が答える。


診察の間レイレイはそばについていたが、背中にはむごい傷が何箇所も重なるようについていて、顔を背けたくなるようなものだった。小さな頃にさらわれて、それからどんな人生を歩んできたのか・・・それを思うと涙が止まらなかった。

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