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愛を凍らせて  作者: かなえ
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カイト様に押されて廊下を出ると誰も居なかった。

みんなは何処にいってしまったのだろう。

今朝まではエウラと同じ制服をきた侍女の方たちが忙しく廊下を歩いているたのに。


「静かね・・・」


廊下の窓から下を眺めるが誰も歩いていない。


「そりゃそうですよ。300年ぶりに太陽の神官が決まったんですから。みんな見たいんですよ。

就任式も、挨拶も」


「そんなに大々的なものなの?」


顔をしかめた私にカイト様が何故か笑みを浮かべて私を見ている。

「なにか?」


変な事を言ってしまったかと問いかければ別になんでもないというように肩をすくめただけだった。


「アイリ様。私はここで失礼いたします。カイト様とキハル様が案内してくださいますから」

頭を下げたエウラに驚く。

ずっと付いてきてくれるとおもっていたのだが確かに無理なのかもしれない。

私がおもっていたことが判ったのかエウラはにっこりと笑った。


「見える位置を確保していますからね。しっかりがんばってください!いろいろと」


そういわれてカイト様との事も言っているのだと気づき思わず顔をしかめた。

そんなの難易度が高すぎる。

エウラがそっと私に耳打ちしてきた。


「だって、そんなネックレスくれるぐらいですよ。脈ありですよ!アイリ様」


いやいや、これはお祝い的なものでしょ。

なんてプラス思考なのかしら。

でも、それぐらいではないとこれから先やっていかれないかもしれない。


「ありがとう。エウラ」


エウラに勇気付けられて頷いて歩き出す。私たちの様子を見ていたキハルさんとカイト様も私を先導するように歩き出した。


就任式をする場所は城の大聖堂だ。

大聖堂の前には騎士達が並んで待っており緊張しながらカイト様と並んであるく。

一斉に敬礼ををされ驚いて歩みが止まる私の背をカイト様が苦笑しながら押してくれて何とか大聖堂の中へと入ることができた。


「ここで400年前からこの城に使えているという占い師のババ様から太陽の神官として任命される儀がある。アイリは返事をするだけでいいから」


カイト様が歩きながら小さく指示をしてくれるが、400年魔からいる占い師のババ様とは一体何物なのだろうか。


「400年前って言いました?」


聞き間違いかと思い隣を歩く美しい顔を見上げると彼は前を向いたまま頷いた。

「そう。まぁ、信じられないだろうけど。昔、竜の生き血を飲んだとかで不老不死になったらしい」

「怪しい人ですね・・・」


大聖堂は大きなドーム型の吹き抜けの天井にステンドグラスが四方にあり、太陽の光が差し込んでキラキラととても綺麗だ。

私たちが入ってくると中に居た人たちの視線をいっせいに受けまたたじろいだ。

煌びやかな式典用の騎士の服を身につけているおじ様や、ドレス姿のご婦人もいらっしゃる。


「この国の有力者たちだ。太陽の神官を一目見るために集まった人たちだよ。歴史的な瞬間だからね」

「私に荷が重過ぎます」


緊張が高まり胃がキリキリと痛み出した。

大聖堂の置くにたっている司祭様らしき人まで距離があるが私とカイト様は並んで歩く。

これは、あれだ、まるで結婚式のようだ。


そう思ったら急に楽しい気分になってきた。

こんな綺麗な人と並んで大聖堂を歩くことなんて多分もう無いだろう。

ニヤッと笑った私に気づいてカイト様がかすかに眉をあげる。


「落ち込んだかと思えばすぐに笑い出して。また変な妄想をしているのかな」


またといわれるほどの付き合いは無いはずだが間違っては居ないので軽く頷く。


「妄想は自由ですから」

「なるほど」


一番奥までたどり着くと、司祭様とおもわれる立派な教会の服を着たおじい様が私たちを見て微笑んでくれる。


「はじめまして。太陽の神官であられるアイリ様。私は大司祭のパウロでございます。あなたの活躍を期待しておりますよ」


期待といわれても困るんですけど。

なんて答えていいかわからずにあいまいに微笑むとカイト様も惚れ惚れするような笑みを浮かべる。


「私は期待はしておりませんよ。パウロ司祭。彼女はたまたま妙な力を発揮したまで。

きっとただの偶然だったのでしょう。きっとすぐに太陽の神官の器ではないとみんなも気づきますよ」


この場に相応しくない言葉に私とパウロ司祭は固る。

いくら私が能力がないとはいえ今言う言葉ではないだろう。

落ち込みそうになったが、私に太陽の神官としての能力が無いのは事実なので深呼吸をして落ち込む心を持ち直す。


「そういう僕も月の神官としての能力は何もありませんけれどね」


カイト様はそういって私に微笑んだ。

その美しさに私含めたお嬢様方のため息が出る。


小さい声で話しているので私たち以外には何を話しているのかは聞こえないだろうが私たちを見守る人たちの視線を思い出して背筋を伸ばした。


「何をおっしゃいますか、カイト様はその剣があればすべて丸く収まります」


パウロ司祭の言葉に今度はカイト様の笑顔が固まった。


「300年前と同じようにすれば怖いクールも封印できるとおもっているのよその爺さんは」


どこから現われたのか黒いフードを被った女性が私の肩に手を置いた。

「あらぁ。ずいぶんそっくりね。顔もなにもかも」


女性はそういって頭から被っていたフードを取った。

私と大して歳が変わらない美しい女性の姿。濃い目の化粧に真っ赤な口紅が付いた口元にすこしキツい印象を受ける。


「占いババ様。余計な事は・・・」


硬い表情のカイト様に綺麗なお姉さんはギロリとにらみ付けた。


「なにその占いババ様って呼び方。私はエマよ。よろしくね太陽の神官ちゃん」

「は、はぁ・・・」


この人がまさか400年だか500年だか生きているという占い師?

ババ様というぐらいだからてっきり、よぼよぼの婆さんを想像していただけに私と歳が変わらない見た目に驚いて彼女を眺める。

黒いローブを羽織っているため体は良くわからないが私より少し背の高いエマはニッコリと笑みを浮かべた。

「ずーっと訳ありでこの国の専属占い師をやっているんだけど、最近はたまにしかココには顔をだしてなかったんだ。でも、アンタがココに来た。私は歓迎するわ」


そういってエマはローブを脱いで近くに居た女性に渡す。

体のラインが判るようなぴったりとした短いドレスに胸の谷間が見えるセクシーな黒い洋服にパウロ司祭が顔をしかめた。


「神聖な場でなんという格好を」

「神聖なる場所はココではないわよね。司祭。もっと相応しい場があるわよね」


意味ありげにエマに言われて司祭は押し黙った。

エマの姿を見た人たちがザワザワと驚きの声をあげるのが聞こえた。

「あれが、ウワサの不老不死の予言師」

「初めて見た。あまり人前には現われないとか・・・」


ソレを満足げに見つめてエマは両手を天井に挙げた。

ざわついていた大聖堂の中がシンと静まり返る。


「我は占術師エマ。このアイリを太陽の神官へと認めこれより先我が与えられるものすべてを捧げることにココに誓う!」


少し間をおいてパウロ司祭も片手を挙げて宣言をした。


パウロ司祭の宣言をうけて大聖堂にいた人たちがいっせいに手を叩いた。


「これでこの国も安心ですな」

「クールもあの太陽の神官が納めてくれる。ありがたいことだな」


ひそひそと話す人たちの声が妙に耳に残った。



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