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愛を凍らせて  作者: かなえ
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「今年も綺麗に咲いたわね。この白い花」


これは夢だ。

夢の中で私が話している。

白い花がポツポツと咲いている。ここは月の神殿のあの庭だ。

振り返ると、黒い制服を着たカイト様が微笑んで立っていた。

いつも見ているカイト様よりも髪の毛がとても短い。

しかし顔は全く同じだが雰囲気が少し優しい感じだ。

私がアイリーンならこのカイト様に良く似た人はカイ様だろう。


「いい加減この花の名前覚えたら?アイリーン」

苦笑しながら言うカイト様の顔はとても優しい。

「長くて覚えられないわ。カイは覚えているの?」

「もちろん、覚えているよ。そうだ、そんなアイリーンにプレゼント」


そういって、ポケットから銀でできたネックレスを渡された。

見覚えがあるデザイン。

私がカイト様から渡されたものと同じだ。


「うれしいわ。付けてくれる?」

そういって後ろ向いた私にカイト様が静かに近寄ってネックレスを付けてくれた。

私はとてもうれしくて何度もソレを指先で撫でた。

すると後ろからカイト様に抱きしめられる。

「愛しているよ、アイリーン」

「私もよ、カイ」


私はこの人が大好きだ。愛しているという気持ちでいっぱいになった。

幸せだ。


そして目の前が真っ暗になった。

急に体が苦しくなり、荒い息を繰り返す。

目を開けるとまだリアルな夢の中だ。

太陽の神殿の中だろう。天井に描かれている絵が目に入ってきた。

何度か瞬きをすると、悲しそうな顔のカイ様の顔が近くにある。

夢の中の私の体はとても辛く立ち上がることもできないようだ。

床の上に座り込んだカイ様の膝の上に抱えれている状態だ。

これは最後の場面だ。

覚えがある。


そう、私がクール化した人を治し黒い霧を体に入れすぎた後の光景だ。

・・・・私が?


何故か私だと解る。

『そうよ、貴方は私。同じ魂なのよ。思い出した?』

頭の中で私と同じ声が響く。

そうだ、あれは私だ。


カイ様は息も絶え絶えの私を抱きしめて涙を流している。泣かないで。

そう言いたいのに声が出ない。


ふと体から抜け出る感覚に瞬きをすると、私はアイリーンの体から出て二人を少し離れた場所から見ていた。

カイ様に抱きしめらているアイリーンは荒い息を吐きながらカイに告げた。


「私をこのまま殺して、そうして貴方の力で封じ込めて」

「無理だ。出来ない」

アイリーンは震える手でカイ様の頬を流れる涙をぬぐって微笑んだ。

「このままでもいずれ私は死ぬわ。貴方の手で殺して。大丈夫また会えるわ。わかるのよ」


震える声で伝えるアイリーンにカイは首を振る。

「無理だ」

「お願い・・・私は時期に死ぬわ・・・最後は貴方の手で」


そう、このときはもう『私』は声を出すのも苦痛だった。

カイはそれが解っているのだろう、アイリーンを強く抱きしめ声を殺して泣いている。

かすかに微笑みながらアイリーンが声を絞り出した。


「また会えるわ・・・・。生まれ変わっても私は貴方を愛すから・・・これで最後じゃないのよ」

「嫌だ・・・。無理だ、出来ない・・・」


そうだ、もうあの時『私』は限界だった。

「もう、息をするのも・・つらいわ」


掠れた声で呟くアイリーンにカイ様はアイリーンを抱きしめて小さく呟いた。


「この世界がどうなったっていい、アイリーンが生きていないのなら意味がないんだ」


アイリーンが何かを言おうとするが、声が出せず口を微かに動かしただけだった。

もう目を開けているのもやっとのアイリーンにカイ様は苦痛に顔をゆがませて息を少し吐いた。


「アイリーンとただ生きていたかっただけなんだ。ずっと、・・・・ずっと。君が居ない世界には意味がないんだ」


そう呟いて、カイ様はアイリーンを抱きなおした。

「だから一緒に・・・」


そう呟いて、カイ様はアイリーンの背中から剣を勢いよく刺した。


そうだ、思い出した。あの時私はカイの手で殺されたのだ。

私はあのとき安堵と喜びを感じていた。

苦しみを開放し、なおかつ最後を愛する人に最後を託した喜び。

そして私はふと、カイを一人残していく不安を感じ闇に落ちた。

それからは何も覚えていない。

あの後彼はどうしたのだろうか。


私はアイリーンとカイ様から少しはなれ場所から二人を見守った。

あの時『私』は愛する人の手で終われた喜びの中真っ暗になりそこで記憶が終わっている。


カイ様がアイリーンと共にゆっくりと床に崩れ落ちた。

大量の血が床に広がり、カイ様は息を長く吐いた。

「あぁ、これで君と共に」


最後の言葉は聞こえなかった。

アイリーンの背中から刺した剣は彼女の体を突きぬけ、カイ様をも貫いていた。

彼は自らの手でアイリーンと自らを刺したのだ。


アイリーンを抱きしめたまま、カイ様はゆっくりと床に倒れた。


二人を見つめていると、乱暴に教会のドアが開かれ占いババと呼ばれているエマが息を切らして飛び込んできた。

血溜りの中で倒れている二人を見て、声をあげる。


「なんてこと!あれほど、死んではいけないって言ったのに!」


青ざめながら二人に駆け寄って脈を計り長いため息をついた。

「カイはまだ息があるわね」


カイ様をゆっくりと起こすとエマは声を荒げる。

「自分で死んだら、生まれ変わることなんて当分できないんだからね!それがこの世の理よ。

私は貴方達が気に入っているのよ。二人が幸せに暮らせるようになって欲しいのよ。だからカイアンタは死んだらだめなのよ。って言っても聞こえてないでしょうけどね・・・」


息も絶え絶えのカイ様の額に手を置いて呪文のようなものを唱え始めた。

光がカイ様とアイリーンを包み込んだ。


「これでいいわ」

エマが弱弱しく呟いて立ち上がった。

倒れていたはずのアイリーンはクリスタルに包まれ、カイ様胸にあった傷は無くなっているが服は血まみれだ。


「アイリーンはもう助からないけど、クリスタルで封じたからクールが出て来ることはないわ。

カイはしばらく眠るといいわ。アイリーンの魂がまたこの世に生まれ変わるまで」


静かに呟いて天を仰いだ。


バタバタと足音がし、数人の兵士が入ってきた。

血まみれのアイリーンとカイ様を見て一瞬絶句した後、天を仰いでいるエマに近づき恐る恐る声をかける。

「一体これは・・・何があったのですか」


「・・・そうね。これは極秘にすすめてちょうだい」


エマの声が遠ざかり、また目の前が真っ暗になった。

そうか、あれは私なのか・・・。

遠くで、私ではないアイリーンの声が聞こえる。

『そうよ。貴方は私。あの人に会うためだけに生まれてきたのよ』

『目を覚まして、自分がどうなってもいいなんて思わないで。そんな事は私も貴方もカイも誰も願っていないから。私の体を使えばいいのよ。私はあなたなのだからわかるわよね』


頭の中でアイリーンの声響く。

そして、私は重い目を開いた。


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