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愛を凍らせて  作者: かなえ
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「クール化したぞ。斬れ」


カイト様の命令にキハルさんが悲鳴をあげた。

騎士に囲まれているユミナの顔は細長い触覚のようなものが顔に巻きつき口だけが大きく開き中からまた触覚か舌かわからないがチョロチョロと見え隠れしている。


「殺してやる!」


ユミナの声が聞こえるが体はうまく動かないのか動きはゆっくりだ。


「ダメよ!殺さないで」


あの黒い影を消せばいい。

直感でそう思いカイト様の前に飛び出した。

私が突然動いたことで驚いたのか私をつかもうとしたカイト様の手をするりと抜けてユミナの元へと走る。


「アイリ!」


私を呼びながらカイト様が私を捕まえようとするが、すばやくユミナに抱きついた。

私は知っている彼女から黒いモヤを取る方法を。


「ユミナ、ダメよ。しっかりして。そんな黒いモノに心を許しちゃダメよ」


「アイリ様、離れてください。危ないわ!」


悲鳴ににた巫女さんたちやミカさんたちの声が聞こえる。

取り囲んでいる騎士の人たちも困惑したようにカイト様と私を交互に見ている。

斬りこみたいが私がユミナに抱きついているせいで手が出せないで困惑している様子だ。


「黒いモノとはなんだ?何がみえているんだ?」

「アイリ様!離れてください。攻撃が出来ない」

剣を構えながら騎士達が言うが私は離れるつもりは無い。

ユミナから離れたら斬るつもりだろう。

そんな事はさせない。多分、今の私ならできる。

何故か理解している。黒いものを私に入れればいい。

ユミナの心はまだそこまで黒いものに支配されていないから。やり直しがきくはず。

ユミナに抱きついた手に力を入れて、全身を使い彼女を抱きしめた。


「もう、大丈夫よ。貴方はまだ支配されていないから」


なぜか私はそう思った。

大きく息を吸い込んで彼女の頭を抱きしめた。

黒いモヤが私の中に入ってくる。

嫌な感じに大きく息を吐いた。


「ダメだ、アイリ。君が壊れてしまう」


悲しそうなカイト様の声が聞こえるが仕方ない、これは私の仕事だ。


「大丈夫、もう大丈夫・・よ・・」


ユミナを覆っていた黒い霧のようなものはすべて私の体の中に入っていった。

太陽の神官として選ばれた理由はこれができるからなのだろうか。

ぼんやりとした頭で考えていると、足に力が入らなくなり床に倒れる寸前、抱きとめられた。

顔を見なくても解る。カイト様だ。


「やめてくれ。もう、黒いものを体に入れるのは・・・頼む」


今にも泣き出しそうな声で懇願するカイト様があまりにも悲しそうで私まで悲しくなる。

でもこれでユミナは斬られなくてすむ。

一人の命が救えたことに満足し、自然と微笑んでいた私をカイト様が力強く抱きしめた。


時が止まったように静かになった廊下で誰も動かず、じっと私たちを見つめている。

なんでカイト様がこんなに悲しんでいるのかしら。

そうか、アイリ様と私を重ねているのね。顔が似ているから。


体に力が入らないが必死に手を動かしてカイト様の上着を掴んだ。


「これが私の役目なのでしょう。アイリーン様と私は違うけれど、きっと・・・・」


私は役目が果たせるはず。みんなの悲しむ顔は見たくないから。

その言葉は重くなる瞼のせいで言えなかった。

薄れる意識の中で、カイト様が悲しそうに呟く声が聞こえた。


「役目なんてどうでもいいんだ。アイリがただ生きていればそれでいいんだ。他の人がどうなろうとどうでもいいんだ。だからやめてくれ」


お願いだから。


私の耳元で呟いた彼の声は少し掠れていた。。

懐かしい。どこかでこの声聞いたわ。全く同じことを貴方は言っていた。



なんで私はそんな事を知っているのだろうか。

ゆらゆらと揺れる意識の中で、私と同じ声が頭に響いた。


だって私は貴方だもの。


また、同じ人を愛して。

同じ事をするわ。

だって、私は貴方だもの。


誰?

誰なの?


私の問いにその声はもう答えることは無かった。

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