表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

帰り道で、私は思った。

作者:

高校の、卒業式が終わってしまった。

友人たちは、就職し進学し浪人し、各々に忙しく、この土地を離れ生きていく。そのためなのかどうなのか、皆が皆、泣いていた。私は特別、悲しくなどは無かったけれど、空気に流され泣いてしまった。

さて、私の進路はと言えば、家の近くの短大へ進学が決まっている。中々に行きたかった学校であり、おまけにさほどの学費はかかりはしないのだ。

家を出る気は到底なく、母と父と弟と、四人仲良くつむまじくと、そうやって、しばらくは生きていきたい。

友人たちと帰路を離れ、私は一人歩いている。幾度も幾度も通っていた、通いなれたこの道を。大して、楽しい高校生活というワケではなかった。つまらなくも無かったけれど、さして楽しくもありはしない。

けれど今だけは、最高の三年間だったのだと偽ってしまえ。そうして紛い物でも感慨に溺れ、今日の日の空気を青春としよう。

一人で歩き、気持ちが良い、少しの寒さを肌に感じる。空は青い。晴れているのだ。なんておあつらえ向きな、まるで狙ったかのような。

ああ、今日は卒業日和だったらしい。

私はひとり笑いながら、ふいに足取りを軽くする。

そうして浮き足立った気分で、これからの事を考えてみた。

春休みには、人生初のバイトというのをしてみようか。今までもやりたくあったのだけど、部活部活で出来なかった。私の好きなあのお店が、アルバイト募集の張り紙をしていた。ダメもとだろうと行ってみよう。そして店員になれればいい。

進学したらどうなるだろう。メンバーは今までと変わるだろうが、土地が同じなら変化は大きくないのだろうか。

何をしよう、私は何がしたいだろう。

私は、幼い子どものように考えていた。今の私は無邪気なようで、純粋な願いが頭をよぎる。

恋がしたいな、と私は思った。

まるで可憐な少女のように、唐突に、けれど純粋にそう思った。

今まで生まれて18年、そんな事は、考えたことも無かったのに。

浮き足立った話なんて、私には到底ありはしない。あった事など一度も無い。

けれど私は今満たされて、更なる満たしを望んでいて。癒して欲しいと確かに思う。甘えさせてはくれないものかと。そして二人で楽しく過ごし、色んな事を語り合いたい。

まだ見ぬ誰かに胸を焦がして、私はふふふと一人笑った。

それに私はもう18になっていたのだ。恋する権利くらいはあるはず。

恋がしたい。

周りの華やかな女の子達は、きっともう、とっくの昔に幾度もしている。なかには、恋に恋をしていた子だっていたけれど、それにしたところで、無いよりはずっとマシなのだ。

キスなら皆しているだろうか。処女を失った子もいるのか。

溜息を付いた。浅く深く、溜息をついた。それから少し、鼻歌を歌う。折角の心地よい気分を、台無しにしたくは無かったのだ。

誤魔化すように鼻歌を歌い、けれどそれはラブソングで。

私は、自分の失態に呆れてしまった。なんてことだ、こんな曲を、選ぶつもりはなかったのに。

私は一人笑いながら、恋がしたいなと、確かに確かにそう思った。

後半の「恋がしたいな」系の所だけが先にあって、他は後からつけたしました。

何かこっぱずかしいような、純粋っぽいのが書きたくて仕方なかったんです。

しかしなんて季節はずれな(笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 書いていて『こっぱずかしい』って気持ち分かりますよ。 だけど、郎さん、その感じがいいんです。 さて、この小説、先にあった“後半”に、うまくつなげられた“前半”。 “小説”って、日常の生活の中…
[一言] どうも、通りすがりの山名と申します。 春ってこういう季節ですよね。春めいた小説で、楽しめました。 これからもがんばってください。
2008/07/19 23:58 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ