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一般人がチートスキルで最強に⁉︎  作者: てるのー
第1章 始まりの慟哭
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8話 魔人と謎の男

何とか更新できました


 魔人ハダー。ゴブリンの仲間で、頑丈な肌と強力なパワーを有する巨人だ。また、常にタバコに似た何かを吸っているらしい。それによって力を供給しているとか。

 なんにせよ、ストレートに戦えば一筋縄ではいかない相手という訳だ。俺も気を引き締めなければならないだろう。


 と、ナナシアと名乗る受付嬢から言われた。随分と世話焼きな受付嬢である。


 で、ハダーを討伐するため、俺は数時間前にやってきた森に再び足を踏み入れた。先ほどと違い、外は真っ暗。足場が悪い森の中では慎重に歩いていかなければ転んでしまう。

 そろりそろりとスローペースで森の中を進んでいく。今のところ、モンスターは一体も出ていない。モンスターは基本時に夜行性なのではないのか……? 勝手なイメージだが、夜の方が活発的になるのだと思っていた。


「まあ、楽だしいいけど」


 そう呟いた瞬間、影から巨体が飛び出してきた。が、何かを確認する前に俺は重力で吹き飛ばした。実に呆気ない。


 それにしても、森の中は肌寒いな。夏といえど大木に囲まれたこの地ならば気温も比較的低い。半袖半ズボンに身を固めているからこそ余計寒かったりする。時折身震いをしてしまうほど。


 依頼書によると、ここをもう少し進んだところにハダーの巣があるらしい。ハダーは薄明薄暮性の明け方のみ活発的に活動するタイプ。つまり、今の時間は間違いなく寝ている。そこをワンパンで吹き飛ばせば楽に終わるだろう。適当な依頼を選んだのだが、意外と楽に終わってしまうかもしれない。

 また、ハダーは普段温厚で滅多に人を襲ったり暴れたりしないので、今回依頼として出されるのは非常に珍しい、との事。


「何でもいいが早く終わらせよう」


 ハダーの巣はもう目と鼻の先だ。もうすぐ見えてくるはずなのだが……。


 と、俺が辺りを捜索していると、不意に正面から足音と何かを引きずっている音が聞こえてきた。暗くてよく見えないが、足音から察するところ随分な巨漢。十中八九、ハダーで間違いない。


 何が薄明薄暮性の明け方タイプだ。思いっきり夜にも活動しているじゃないか。しかもタバコみたいなのを吸っている様子もない。誤った情報だらけだ。

 こうなってくると、俺が先ほど考えていた作戦は使い物にならない。ならば、先手必勝。相手が何かをする前にこちらが叩く。俺の射程にヤツはもう入っている。


「食らえ! インパクト‼︎」


 空間を重力で固め、相手の目の前で解放する。それは見えない爆弾であり、不可避な一撃である。しかも強力。不意打ちにはもってこいの技である。


 ヤツは弾けとばされ、数メートルは飛んでいった。が、さすがはA級。ゆっくりと起き上がってきた。


「よし、行くぜオラァ!」


「ちょっと待てぇ‼︎」


 真っ暗な森の中、唐突に俺以外の人間の声が響いた。何事かと声の聞こえた方に顔を向けると、そこには7.80ほどのお爺さんがいた。かなり怒っている様子。そして、辺りを照らす魔法を使っているのか、お爺さんの周りはすごく明るい。

 もちろん、俺の顔見知りではない。見たこともない顔だ。


「何ですかね……?」


 俺は、討伐を邪魔され少し不機嫌になっていた。口調も少し荒々しかった。


「お前さん、何をやっているんだ! やめろ!」

「は……? やめろって、何を?」

「だから、そこのハダーを殺すのをやめろと言っている! 大変なことになるぞ!」

「はぁ……」


 このお爺さんは何を言っているのだろうか……? お爺さんの言葉を聞き、俺は怒りよりも呆れの感情が強くなった。このハダーを倒さなければ俺の依頼は達成されない。達成されないと、失敗金をギルドに払わなければならないのだ。つまり、俺にハダーを倒さないという選択肢はない。


「大変な事って、何です?」

「そのままの意味だ! そこのハダーは危険じゃ! 早く立ち去れ!」

「危険って……。俺は冒険者。そんな事は百も承知だ」

「黙れ! いいからここか……!」


 お爺さんは全てを言い切る前に、言葉を途切れさせてしまった。お爺さんを包む影。背後からハダーが棍棒を持ち、お爺さんの後ろまで迫ってきていたのだ。お爺さんはその事に気がつき、咄嗟に頭を腕で抑える。


「危ねぇ‼︎」


 ハダーの棍棒が振り下ろされるより一瞬速く、俺は再び重力でハダーを吹き飛ばした。もちろんお爺さんに配慮し、威力は控えめ。


「大丈夫か⁉︎」

「ッ! だから、そこのハダーを討伐しようとするんじゃない! 危険だ!」

「いやいや、お爺さん。今、あのハダーに殺されそうだったんだぞ。ハダーを討伐しないほうが危険じゃないか」


 俺が何とか説得しようとするが、お爺さんは聞く耳も持たない。こうなったら、申し訳ないが無視してハダーを倒すしかないようだ。

 俺はお爺さんを振り切り、ハダーの元まで駆け寄った。そして、手のひらでハダーの腹を触り……。


「インパクト‼︎」


 三度吹き飛ばした。俺の能力は近距離になればなるほど強力になっていく。ゼロ距離ならハダーといえど耐えられないだろう。お爺さんに危害が与えられないよう、威力自体はかなり抑えている。

 ハダーは弾け飛び、肉塊が辺り一面に飛び散らかった。汚い。肉塊の一部には寄生虫のような生き物までいる。


「気持ちわりぃ……」


 服についた肉塊を叩いて落としていると、お爺さんが近づいてきた。顔は青ざめ、体調が悪そうだ。


「お、お、お前! なんて事をしてくれたんだ! ……嗚呼、この世界は滅ぶんだ! 滅ぶんだあああああああぁぁ‼︎」


 俺の肩を掴み、そんな事をのたまい出したお爺さん。手はガタガタと震え、目には涙を浮かべている。そしてそのまま気絶してしまった。とても正常とは思えない。

 何か俺が悪い事をしたように思えて非常に後味が悪い。


「はぁ、このお爺さん。どうしようか……?」


 このままここに放置という訳にもいかないだろう。俺は地面に伸びているお爺さんを持ち上げると背中に乗せ、歩きだした。

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