7話 高難易度依頼と低ランク冒険者
今回は少し短いです
町に戻った俺は依頼達成の報告を終え、ギルドの酒屋でのんびりと休憩していた。ここのギルドの飯は非常に美味い。何度でも食べたくなるような味だ。
それにしても、達成報告を終えた際に受け取った達成金には驚かされた。その少なさに。依頼を受けた時、達成金を見ていなかったのだが、思っていた以上に少なかった。なんと2000アシリス。ちなみに、1アシリスで1円だと思ってくれればいい。
割に合わなさすぎるではないか。こちとら死ぬ可能性も十分にあったんだ。それでもたった2000アシリス。依頼書に書いてあったのだから、ケチをつけるつもりはさらさらないが、文句ぐらいは言わせてほしい。
そういえば、依頼場所に行く前に誰かがこんな事を言っていたのを盗み聞きした。
「冒険者ってのは働く時間を自由に決められるブラック企業に勤めてるヤツの事を言うんだ」
と。
いやはや、その時は聞き流していたのだが、全くその通りだと思う。まあ、だからと言って冒険者をやめるつもりは一切ないのだが。
時間はもう夜。外は真っ暗。だが、2000アシリスでは泊まる宿すら見つからない。
仕方がない、もう少し高難易度の依頼に行くことにしよう。
ゴブリンの依頼はFランク。そこから左へスライドし、さらに高いランクの依頼板へと向かう。目標は大体Aランクぐらい。ちなみに、最高はSSランクだ。
Aランクの依頼は達成金が高いものが多い。だがその代わり、難易度が高く時間がかかるモノばかりだ。手頃に稼げるものはないかと適当に見てまわる。そして、とある依頼書の前で俺の足は止まった。
ハダー一頭の討伐。
A級といえど、所詮は一頭の討伐だ。そう時間はかからないだろう。
俺は依頼書をちぎり取り、受付へと持っていった。今回もスムーズに終わるだろう。そう思っていたのだが、受付のお姉さんは依頼書と共に提示した俺のカードを見て固まった。
「えー……、申し訳ございません。タカヒト様は先日冒険者登録を済ませたF級冒険者ですよね。なのでしたら、こちらの依頼をお受けする事はできません」
「え? マジですか。なぜですか?」
それは困る。俺は今とてつもなく金に困っているんだ。しかし、そんなこちらの事情を知る訳もなく、受付のお姉さんは困惑したように言った。
「タカヒト様はFランクです。冒険者は自らのランクより2つ以上、上のランクを受けることはできません。規定でそう決まっています。つまり、タカヒト様が受けることのできる最高ランクはEランク、という事になります」
オウマイガ! ということはしばらく俺は超貧乏生活を送らなければならないということか。
……規定と言うのであれば仕方あるまい。しばらくは我慢するしかないだろう。
と諦めかけたその時、突然後ろから声をかけられた。どこかで聞いたことがある声。
「失礼。申し訳ないんだけど、この依頼、受諾してあげてくれないかしら?」
後ろを向くと、そこには俺が冒険者として登録した時の受付嬢がいた。プライベートなのか、服装は私服だ。
「あ、ナナシアさん。っていうか、大丈夫なんですか……?」
「ええ、ここは私に免じて。お願い。責任は私が負うから」
どういう風の吹きまわしだろうか。俺が冒険者として登録した時はあんなにもやめておけと言っていたのに、今になってコレだ。俺としてはありがたいのだが、どこか裏を感じざるを得ない。
「……分かりました。特例ですよ」
「ありがとう!」
だが、今はこの好意に甘えておくとしよう。
「タカヒト様、先ほどは申し訳ございませんでした。ハダーの討伐、受諾いたしました」
そう言って受付嬢は依頼書にハンコを押した。
2日に1話のペースって言ってたのに、1日に2話ぐらいのペースで投稿しちゃってる…
明日はおそらく投稿しないです