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一般人がチートスキルで最強に⁉︎  作者: てるのー
第1章 始まりの慟哭
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4話 助けた少女

 冒険者になった。といっても具体的に何をすれば良いのかイマイチよく分かっていない。取り敢えず依頼でもこなしていけば良いのだろうか?

 だが、その前にこの町を探索してみたかった。それは好奇心が強い子供のような気分だ。この町をもっと見てみたい。この町をもっと知りたい。


 俺はギルドから出て、まずは適当に町を歩き回ってみる。


「すごいな。本当に異世界なんだな」


 俺は思わずそう呟いてしまう。というのも、行き交う馬車や小さな店や町並み。全てが俺の想像していた町の通りなのだから。

 異世界に転移した驚きもあるが、それよりも、こんな世界が存在していた事に俺は驚いている。

 不謹慎ではあるが、死んで良かったとも思えてしまう。


「さて、どうするかな。金がないから飯は食べられない。少し腹が減ったんだがな」


 そういえば、異世界に来た興奮で忘れていたが、現在はもう夕方。正確な時間は分からないが、おそらく本来ならもう既に夕飯を食べ始めている頃だろう。

 そうなると、当然俺の腹も減ってくる。どこかで無料で食べられる所がないか……?


「……ある訳ないんだよな。はぁ」


 ため息をつきながらも一応辺りをキョロキョロと見渡す。レストランはすぐに見つかるのだが、無料はどこにもなさそうだ。


 そんな事をしていると、急にどこかから声が聞こえてきた。それも何やら不穏そうな声色。


「いいだろ、ねーちゃん。ちょっと遊ぼうよ」

「やめてください。私、忙しいんです」

「そんな事ねーだろ。良いから来いよ」

「や、やめてください!」

「ヒャハハハ、良い体してるねぇ。今夜は楽しめそうだぜ!」


 いくら時間が遅くなってきたといえど、それでもまだ通行人はいる。そんな中、周りにも聞こえるほどの声量でこんな事を騒ぐのは本当に馬鹿なんじゃないかと思う。

 だが、通りがかる人々は恐れて知らないフリを決め込んでいる。そんな通行人にも若干腹がたつが、それよりも今はナンパされている子を助けないといけない。俺は助けに行こうと歩を進めようとした。


 その時、俺の脳内に一抹の不安がよぎった。俺は受付のお姉さんに弱いと言われてしまったのだ。そんな雑魚が助けにいったところで何になるというのか。俺が怪我するだけならまだ良い方だ。最悪、火に油を注いでしまう事になりかねない。


「ッ!」


 行きたい。だが怖い。だが、


「やめてください、本当に忙しんです!」


 この声を聞き、俺から恐怖という感情が消え失せた。俺なんかでは助けにならないかもしれない。だからと言って行かない訳にはいかない。俺はもう悔いのない生き方をするんだ。

 俺は駆け出し、声の元へと近づいていった。


 ナンパしているヤツらは3人。俺は不意打ちで1人の頭を下向きにぶん殴った。初めて人を殴ったが思っていたよりも軽い。というより、重みが全くない。不自然なほどに。

 さらに、殴られた男はそのまま地面に突き刺さり、ヒビを作った。


 もしかしたら、俺めちゃくちゃ強くなってるのか? ともかく、これならば助けられる。


「な! 誰だお前⁉︎」

「俺? そんな事どうでもいいだろ……? 俺はお前らの調子に乗った態度が気に食わないんだよ」


 言いながら男たちを睨みつけてやると、男たちは怯み少しずつ後ずさっていく。


「チッ! ふざけるなああぁ!」


このまま逃げていってくれるのかと思ったが、男たちは2人で一気に距離を詰めてきた。が、遅い。俺は2人同時に腹を殴ると、すぐに気を失ってしまった。

 意外なほど呆気ない幕切れであった。


「大丈夫か? 何かあいつらにされてない?」


 俺はナンパされていた女の子に声をかける。女の子は俺と同い年程度で、金髪のショートヘアーで青色の目。整った顔。ものすごく美人だ。残念ながら胸はまだ発展途上といったところか。


「おーい、大丈夫か?」


 声をかけるが女の子は一向に返事をしない。ただ顔を赤くし、俺の方を見るのみ。だが、すぐに我に返ったように頭を振ると、未だ火照った顔で再び俺の方を見てきた。


「ありがとうございます! ナンパどもから助けていただいた時のあなた様の勇士、ものすごくかっこよかったです! 宜しければお名前をお教えしていただけないでしょうか?」

「あ、ああ。タカヒトだけど」


 突然来た女の子の怒涛の言葉に俺はただたじろいでしまう。なんとか返事はできたが。


「タカヒト様ですね! 私はアミラ・アンドレです。本当に助けていただいてありがとうございました。何か礼がしたいのですが……」

「いや、いいよ別に。特に欲しい物とかもないし」


 今の異世界転移だけで俺は大満足だ。これ以上欲するのは傲慢というものだろう。だが、アミラは納得していないといった風に口を膨らませた。


「むぅ、タカヒト様は無欲なのですね」


 と、アムラが呟いたその時、俺の腹が鳴りだした。焦って忘れていたが、俺は腹が減っていたんだ。

 それを好機ととったのか、アミラはキランと目を光らせた。そして、


「お腹が減っているようですね。どうでしょう、何かレストランでご飯でも食べましょうか?」


 ……そうなると必然的に女の子に食事を奢らせてしまう事となる。何せ俺は無一文なのだから。本音を言うと何か食べたいのだが、だからと言って女の子に奢らせるのは男としてどうかと思う。

 ここは、断っておくべきだろう。


「いや、気持ちだけ受け取っておくよ」

「そうはいきません! ついて来てもらいますよ!」

「あ、ちょっと待って!」


 俺はアミラに腕をガッチリとホールドされ、そのままレストランに連れていかれてしまった。

 レストランの食事はとても美味しかった。


……………………………………………………


 時は過ぎ、夜。月が見えてきた頃。レストランでのアミラとの食事も終わり、アミラと別れた俺はギルドにやってきていた。もちろん寝床確保のための依頼達成金狙いだ。簡単な依頼ならこなせるだろう。当然といえば当然だが、ギルドが24時間営業なのは非常にありがたい。


「このゴブリンとか良さげだな」


 そう言いつつ、掲示板からゴブリンの依頼書をちぎり取った。

 ゴブリンといえば、冒険者になって1番最初に倒す雑魚キャラのようなイメージがある。この世界でもそうらしく、ゴブリンの依頼は最低ランクであるFランクだ。


「よしこれにするか」


 カウンターへ依頼書を持っていき、他の冒険者たちがしていたように依頼書と共にカードを受付嬢へ差し出した。俺が冒険者登録した際のお姉さんとは別のお姉さんだ。


「はい、こちらですね。行ってらっしゃいませ!」


 こちらのお姉さんも満面の営業スマイルで俺に対応する。

 手続きが面倒くさいと思っていたが意外とそうでもなかった。パッパと手早く終わってしまった。


「行くぜ、初依頼!」


 俺はギルドの扉を開けた。

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