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一般人がチートスキルで最強に⁉︎  作者: てるのー
第2章 痛哭の王誕祭
22/26

1話 良薬は……?

2章からはテイストがかなり変わります

「なかなか良いのがねーな……」


 俺とクーゼは今後の依頼に向けて買い物をしていた。アンマ町の大通りの近くにある商店街。なんでもかんでもある非常に揃いが良い商店街だ。武器や防具などはもちろんのこと、アイテムなどは冒険者として当たり前のように揃えなければならない物だ。そんなアイテムを求めて、俺たちは商店街に来ている。のだが……。


「これ、どうかな?」

「どうって、まあ良いんじゃねーの?」

「むぅ、適当すぎ。乙女心が分かってない」

「ええ……」


 俺たちはなぜか服を買っていた……。もちろん防具とかではなく、普通の服。クーゼは試着室で着替え直し、その度に俺に評価を聞いている。かれこれ30分はそうしているだろう。依頼用のアイテム購入はどこに行ったんですかね……。


「おーい、クーゼさん。もうそろそろ行きませんかね。俺たち服買いにきたんじゃないですよ」


 なんとなく敬語でクーゼに制止をかけてみる。クーゼは未練がましく服ジーッと見つめていたが、ため息を漏らして服屋から出てきた。まるで俺が悪者のようになってしまっているのは気のせいだろうか?

 だが、今は服を買う時間ではないのだ。それに、道具を揃えようと言ってきたのは向こうなのだ。と、考えてはいるものの、罪悪感は拭えない。


「なんかごめんな」

「別にいい。私が悪かった。ごめんなさい」


 お互いに頭を下げあうという変な構図。周りの目もあることから、少し羞恥の念が沸き起こり、サッと頭を上げた。そして急いで話題探し。


「それにしても、クーゼって服が好きなんだな。少し意外だったよ」


 と言うと、クーゼは嬉しそうに語った。


「服はいい。あまり可愛くない自分でもファッション1つで大きく変われる。冒険者はイカツイイメージだから、それを払拭したい」

「なるほど」


 確かに、冒険者といえば筋骨隆々のおっさんが汗流してモンスターを斬りつけているイメージはある。それでいて、クーゼのような人もいるのだから想像とは怖いものだ。


「まあ、なんでもいいけど。俺はクーゼの事、何もしなくても可愛いと思うけどな」

「なっ……⁉︎」


 ふと思ったことを何気なく口にしたのだが、クーゼは顔を真っ赤にし、のけ反った。が、すぐに落ち着きを取り戻すと大きく息を吐いた。そして、微笑を浮かべる。


「ありがとう、嬉しい」


 そう言うと、クーゼは小さく鼻歌を歌いながら早足で歩いていった。俺も後ろを追いかける。

 で、俺たちはそのまま武器屋の方へ向かっていった。防具も大事ではあるが、冒険者ならばまずは武器を揃えないといけないだろう。というか、個人的に剣を使ってみたい。やはり剣にはロマンがある。

 最近は、高額依頼である町に復興をしたことによって懐にもかなり余裕がある。武器一本ぐらい簡単に買えてしまう程度の金はある。


 武器屋に入り、とりあえず剣を使ってみたいとクーゼに言うと、クーゼは難しい顔を作った。


「剣っていってもたくさん種類がある。太刀、大剣、双剣、レイピア、短剣。まだまだたくさんある。どれを使いたいの?」

「そうだなぁ、太刀とかいいんじゃないか? こう、颯爽と斬っていく感じ。憧れだな。ダメか?」

「ダメってことはないけど、剣は素人にはオススメしない。種類が豊富だし、自分に合うのが見つけにくい」

「まあなんとかなるだろ」


 そう答えながら、剣を振るマネをしてみる。といっても、剣道の経験皆無の俺。ただ適当に振っているだけなのだが。クーゼにもそれが見てとれたのか、暗い顔でこちらを見てくる。


「……今度、剣を教えてあげる」

「ありがとうございます……」


 無駄に恥をかいてしまった気がする……。変に剣マネなんてするもんじゃないと反省。だが、少しは俺の剣に対する熱意が伝わっただろう。


「じゃあ、まずは剣探しから。武器のグリップを握って、持ちやすいのを選んで」

「持ちやすいやつ? なんか他にないの? 強度とか、切れ味とか」

「まずはグリップから。いくら強い剣でも持ちにくかったら宝の持ち腐れ」


 なるほど。納得である。ならばと適当に見た目の良い武器から握ってみる。クーゼの言う通り、握りにくい物はとことん握りにくかった。

 そして、しばらく剣のグリップを握った結果、赤い小さめの太刀が1番俺に合っていると分かった。


「クーゼ、俺はこれにするよ。いくら?」

「そこに書いてある」


 クーゼが値段表を指差した。そこに記載されている値段は……。


「げっ! 20万アシリス……。マジかぁ」


 予想より遥かに高い値段の剣に、俺は動揺してしまった。剣は一生の友になるかもしれない。高いものを買うに越したことはないのだが……。それでも、この値段にはさすがに躊躇してしまう。


「どうする? 買うの?」

「いや待て、今本当にどうするか考えているから。さすがにこの値段は想定外だ。……仕方がない、剣を振りたいが様子見ということにしておこう」


 貧乏冒険者の俺。さすがに20万アシリスには手が届かない。


「もう少し、安めの剣を売っているところに行こう。ここは高すぎる」

「了解」


 こんな物騒な世の中なんだ。武器屋なんて1つや2つ簡単に見つかるだろう。がその前に、俺の目にアイテム屋の文字が止まった。薬草だのポーションだの売っているのだろうか? 非常に気になる。


「クーゼ、先にアイテムを買おうぜ」

「了解」


 アイテム屋の小さな店内の棚には、瓶に入った謎の液体から瓶に入った謎の液体まで、幅狭く取り揃えてあった。というか正直、全て同じ物にしか見えない……。


「クーゼ、ここは外れなんじゃないか……? あんまり商品の揃いが悪いし」


 店員に失礼なので、小声でクーゼに耳打ちする。が、クーゼは「ちょっと気になる」といっても店内の奥に行ってしまった。まだ土地を全く覚えていない俺はクーゼに置いていかれてしまうと迷子になってしまう。仕方なしに俺も商品を見てまわる。


 一応、よくよく見ると1つ1つ商品は違うようだが、だからと言って怪しさは取り去りきれない。


「タニスギポーションメロン風味、XXXポーション、元気爆発ポーション。本当に何なんだこれ……」


 むしろ怪しさマックスである。ザッと見た感じそんなモノしかない。だが、クーゼは興味津々という様子で店内を回っている。もう、何が気になるのか訳がわからない。これで売れているのだろうか……?

 と、俺が商品より店の売り上げを気にしていると誰かが店に入ってきた様子。客がいるのかと少し驚く。そして、その客の正体にさらに驚愕した。


「ナナシア!」

「え? あ、タカヒトさん」


 何故ナナシアがこんな店に来るのだろうか……?


「ど、どうしたナナシア。何をしに来たんだ……?」

「か、顔が近いよ……。え、えっと、ここのポーションによくお世話になってるから」

「マジですか」


 タニスギポーションメロン風味とかXXXポーションとか、挙げ句の果てには元気爆発ポーションとかいう危ない薬にしか見えないモノにお世話になっているのか……! マジかよ……。


「ナナシア」


 俺がゴタゴタしていると、クーゼがこちらに寄ってきた。ポーションをいくつか持って。


「あ、クーゼもいるんだ」

「ここ、良い店」

「でしょ!」


 まさか、クーゼさんそのポーション買ったんですかね?


「本当にこれが良いポーションなのか……? 俺も1つ買っていってみるか……」


 試しにタニスギポーションメロン風味とかいう訳わからないポーションを買ってみよう。


「すみません、こいつください」

「はぁ〜い」


 タニスギポーションを指差し、店のおばちゃんに声をかける。店のおばちゃんはタニスギポーションを取ると、俺に渡してきた。


「1万アシリスだよぉ〜」


 高ぇ! タニスギポーション高すぎだろ! 嘘だろ、手のひらサイズの瓶に半分ぐらいしか入ってないのに1万アシリス……!

 だが、もう買うと言ってしまったからには仕方あるまい。俺は財布から1万アシリスを取り出し、おばちゃんに渡した。


「はぁ〜い」


 支払いが完了すると、俺はタニスギポーションを手に持ってすぐさま店から出ていった。すると、俺を追ってクーゼも店から出てきた。


「俺、ぼったくられた気分なんだけど……」

「なんで? それ、すごく良い回復のポーション。1万アシリスは安いほう」

「そうなんだ……」


 せっかく貯めた金が……。1万も消えてしまった。収穫はよく分からないポーション。泣ける……。


 しかしまあ、せっかく買った高級ポーションだ。ほん少し味見してみよう。クーゼは回復のポーションと言ったが、どこまで素晴らしいのか気にはなる。

 俺はタニスギポーションの瓶の蓋を開け、指の腹に少しだけポーションを付け、そして舌で舐めとった。


「あ、ちょ……!」


 クーゼが慌てたように何かを言いかけたが、その時にはもう舐めてしまっていた。


 その瞬間、不意に頭を揺さぶられるような感覚に襲われた。平衡感覚が失われ、まともに立ってられない。瞼が重くなり、次第に意識が暗転する。


 そして、俺は気を失った。

ポーションの強力さ

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