表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一般人がチートスキルで最強に⁉︎  作者: てるのー
第1章 始まりの慟哭
20/26

20話 責任の拳

 俺は目の前の巨体を見据え、立ち上がった。


「タカヒト……」


 ちょうどそのタイミングでクーゼが近づいてきた。ナナシアは避難したのだろう。

 クーゼは俺の方を見、「戦えるの?」と聞いてきた。先ほどまで怖いと言っていたヤツが戦うと言いだしたんだ。心配になるのは当たり前だろう。


「ああ、大丈夫だ」


 力強く、先ほどとは段違いの声で、俺は言った。もう、俺の中に恐怖はなかった。

 そんな俺にクーゼは安心したように大きく息を吐くと、あの時と同じ微笑を顔に浮かべた。


「そう、良かった。じゃあ私は住民の避難を済ませておく。あのデカブツは任せた」

「ああ、任された!」


 クーゼは頷くと、人々の誘導のために走っていった。

 俺は大きく息を吐き、バケモノを見据える。


「2戦目だ、バケモノ‼︎ かかって来いや!」


 俺の激昂が耳に入ったのか、セイドーはこちらに気づき、あの時のように足を振り下ろしてきた。だが、俺はもう避けない。


 死ぬ前に誓った事を思い出していた。俺は昔、人のことなど2の次、自分中心だった。ダメだと思いつつも自分を変えることができなかった。そんな時に俺はトラックに跳ねられた。その時をちょうど良いキッカケだと思ったんだ。変われる良いチャンスだと。俺は変わるんだ、と。

 俺は本当に後悔のしない生き方をしよう。そう誓ったんだ。

 だが、それは叶わなかった。俺はもうすでに後悔してしまっている。だからこそ、俺はこれ以上の後悔をしたくない。これ以上、誰も死なせない!


 振り下ろされた足を重力で吹き飛ばすと、俺はそのまま飛び上がる。そして、握りこぶしを作り……。


「おらああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!」


 思い切りセイドーの体を殴り飛ばした。重力の力がのったそのパンチはセイドーの体に巨大なひずみを作り、大きく後退させた。いや、それどころでない。セイドーの体は四散し、その肉体は様々な場所に降り注いだ。黄緑色の血が雨のように降り注ぐ。

 そんな雨を重力で弾きながら、俺はゆっくりと地面に降りた。空を見上げると綺麗な青空に、陽光の反射したセイドーの血がキラキラと光っていた。


「ごめんな……、エアロン、アデラ、ジーク」


 俺は小声で呟いた。もちろん返事はない。俺は無念に押しつぶされそうだった。俺が能力を出し渋ったせいでこんな事になったんだ。


 セイドーを倒す一部始終をまだそこまで離れていなかったクーゼは見ていた。そして、信じられないモノを見たといった風に目を丸くしている。

 ……? 何故それほどまで驚いているのだろうか? 彼女は俺の力を知っているはずだが……。


「どうした? クーゼ」

「……私、避難誘導させる必要、なかった。あなた、強いとは思っていたけどそこまで強いの? 一応それ、SSランクの依頼モンスターなんだけど」

「え、マジで?」


 クーゼが拗ねたように口を尖らせた。


「どうやってそれほどまで強くなったの? あなたの強さの秘密を知りたい」


 そうクーゼに言われた時、心が痛んだ。俺がどうやって強くなったか。そこに努力など微塵もない。たまたまラッキーで強くなっただけだ。

 だが、そんな事正直に言えるはずもない。


「悪いが、言いたくない」

「そう」


 やはり、クーゼは深くまで聞いてこない。本当にありがたい。


 俺は体を洗うために宿へと戻った。背中に感じるクーゼの羨望とも取れる眼差しが俺には痛かった。

伏線回収も含めて1章全て終わったー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ