2話 ネクストライフ
できるだけ早く更新していきたいと思います。だいたい2日に1話くらい。
目が醒めると、そこは真っ白な空間だった。何もない、何も見えない。一言で表すなら空虚。どこまでも続き、引き込まれそうなほど白い空間である。
「こ、ここは……? 俺は一体……?」
つい先ほど何をしていたのか思い出せない。俺は何をしていたのか。どうしてこんな所にいるのか。
俺は訝しげにあたりを見渡し、ため息を1つ漏らした。これからどうしようか。どうすれば良いのか。
「はい、お待たせしました! 山里崇仁様! 私は女神。崇仁様の死後のナビゲートを担当させていただきます」
「うわ!」
辺りを慎重に歩いていると、不意に後ろからそんな言葉をかけられた。慌てて振り返るとそこには女性がいた。長い金色の綺麗な髪に整った顔。一瞬にして俺は目を奪われてしまった。が、すぐに気持ちを切り替え、気持ちを落ち着かせる。
女性の存在に俺はいくらかの安心感を得られた。やはり一人というのは心細いものだ。
「えーっと、女神? 死後? 俺は死んだのですか……?」
「はい。トラックに轢かれて即死ですね」
……そうか、思い出した。俺は少女を助け、トラックに轢かれて死んだんだ。そう思うと、俺は少し安堵した。
最期の最期ではあったが、悔いのない行動ができた。ニート気味の、人に迷惑しかかけてこなかった自分に人助けができたのだ。
だが最後に気になることがあった。これを聞かなければ安心することができない。
「少女は……俺が最期に助けた少女は無事ですか……?」
と、尋ねると自称女神はにこやかに笑った。
「ええ、無事です。あなたの勇敢な行動のおかげで少女は軽傷ですみました」
「そうですか……!」
俺はこの上ないほどの喜びを感じた。これが人助けというものなのだろう。と、俺が感慨に耽っていると、突然自称女神がパチンと手を叩いた。その音に俺は我に帰る。
「つきましては崇仁様。あなたのその善行が功を奏し、あなたの地獄送りは再審議という形にさせていただきます」
「再審議?」
「ええそうです。あなたにはこれから異世界に向かってもらいます。異世界でのあなたの行動によりあなたの天国行きか地獄行きか、審議させていただきます」
自称女神の言う言葉の重み。それが俺には感じられた。そして、それと同時に異世界へ行けるという高揚感を俺は感じた。
何を隠そう、俺は異世界モノの作品が大好きなのだ。これには期待もしてしまう。
「異世界ですかぁ! いいですね!」
「ですよね! という事で、異世界転生に際して、1つ特別な力が付与されます。それは強力な能力かもしれません、はたまた弱小な能力かもしれません。運任せですね」
俺はその言葉に少し落胆した。俺は昔から運が悪い。ジャンケンで10回連続で負けたのは良い思い出だ。
強力な力が得られないのはほぼ確実だが、しかしそれでも異世界へ行けることは嬉しい。それだけでも十分満足だ。
「それでは準備はいいですか、崇仁様!」
「よし、OKだ」
「それでは、行ってらっしゃいませ!」
そう言い笑った女神の顔は特別可愛いモノであった。そんな事を考えていると、不意に俺の意識が飛んでしまった。