16話 朱色の恐怖
実は前回、予約投稿のつもりで投稿したら普通に更新してしまっていたという...
「ああああああああああぁぁぁぁああ‼︎」
叫びながら、俺はハイド町へ向かう。その腹の底からの叫びには俺の中に据える全ての感情が篭っていた。だが、それでも俺の感情は収まらない。それどころかより一層増すばかり。
俺が全力を出せば、すぐにハイド町に着く。馬車から飛び出て行くこと数十秒。ハイド町が見えてきた。そこには、ヤツの姿もある。
「アイツ、許さねぇ! 絶対殺す!」
俺は今まで出したこともないような言葉を口にし、ヤツに接近していく。ハイド町の門へ入り、そこからは走ってヤツの元へと向かった。
が、そこで俺の足は止まってしまった。そこにあるモノに気がついたのだ。
「こ、これ…………。あ、あ……」
そこにあったのは、無数の……、死体。腹を貫かれている者もいれば、原型すら残っていない者もいる。肩がないヤツ、首がないヤツ、手足がおかしな方向に曲がっているヤツ。おびただしいほどの血、血、血、赤、紅、朱。
俺は、先ほど世界の認識を正したものだと思っていた。だが、この死体の山を見て、俺は改めて思った。この世界は現実だ。
そして、それと同時に俺の中で一抹の思いがくすぶった。
怖い。
ゲームじゃない現実だ。一度失敗すれば全て終わりなんだ……。
怖い。
しかし、そんな程度で逃げるわけにはいかない。あいつらは逃げずに戦ったんだ。逃げてはいけない……!
「はぁ、はぁ。戦え、戦え」
自己暗示をかけるように自分に言い聞かせる。どんどんと息が荒げてきた。これも恐怖からくるモノなのだろうか……?
それでも俺は戦う。戦はなければならない。仇を討つのだ。そう、心に決め再び一歩を踏み出そうとした、その時。
見えた。彼らが見えたのだ。彼らの死体、それが他の死体に紛れながらも際立って見えた。
俺がこの時、どんな表情をしていたのだろうか? 自分の顔が分からない。だが、そんな事はどうでもいい。
「エアロン! アデラ!」
その時の俺は今までの中で最高に声を出していたと思う。喉が震える。俺は彼らの死体に近づいた。彼らの近くにもたくさんの死体が転がっている。一般市民を助けようとして死んだのだろう。
何の幸いか、原型は残っている。が、持ち上げるとだらりと四肢が垂れた。共に垂れる血。俺の手に付く血。
「クソ! クソォォォ!」
俺がいながら、こうなってしまった。俺が能力の出し惜しみをしていたから、こうなった。俺が悪いのだ。
とにかく悔しい。だが、もう1つ膨らんだ感情があった。それは恐怖。仲間が殺されたことによる恐怖だ。
と、その時足音が聞こえた。上を向くと、そこには例の怪物が、おそらくこちらを向いていた。ずっとドタバタとやっていた俺に感づいたのだろう。
俺は力を使い──
…………使えなかった。
何故か、理由は大体分かっている。
怖いのだ。血が怖い。赤が怖い。
怪物が、足を振り下ろしてきた。俺はそれを紙一重で避ける。足が地面に接触し、音と爆風が巻き起こった。それに俺は軽く転ばされる。
尻餅をついた状態で上を見上げた。当たり前だが、ヤツがいた。サイズは変わらない。だが、何故か俺にはそいつがひどく強大に見えた。
怖い。
怖い怖い。
怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い
「うわあああああああぁぁぁぁぁぁああ‼︎」
俺は能力を使って逃げ出した。皮肉なことに、逃げる時は能力を使えた。
あまりなろうでは見かけない表現