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一般人がチートスキルで最強に⁉︎  作者: てるのー
第1章 始まりの慟哭
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15話 始まりの慟哭

難しいな...

 目が覚めると、硬い木の床の上に転がされていた。がたがたと大きく揺れる感覚から、ここが乗り物の中であると感じた。

 どうなってんだ……?

 体を起こそうと思ったが、指先ぐらいしか動かない。首を動かして状況確認をしてみる。そしてすぐ気がついた。俺は縄でぐるぐる巻きにされていた。


「なんだこれ?」

「起きたか……」


 ジークの声。普段のテンションからは考えられないような圧倒的に静な声だ。震えるような底冷えした響き。

 ジークの方を向くが、ジークは俺に背を向けていた。その背中には哀愁が漂っているように感じた。

 どうやら、今は馬車の中。乗っているのは俺とジークのみ。状況が分からない。


「俺はどうなって……」


 とその時、思い出した。町が謎のモンスターに襲われていた事。エアロンとジークに気を失わされた事。


「町はどうなったんだ……? エアロンは? アデラは?」


 ジークに聞くが、返事が返ってこない。ジークの体はどこか震えているようにも見える。一体どうしたのか……?


「おい、大丈夫か? 状況を教えてくれ」

「……逃げたんだよ、町から」


 静かに、ジークが言った。俺が何か言う前にさらにジークが続けた。


「俺たちは今、アンマ町に向かっている。……残念ながら、ハイド町は滅んだ」


 滅んだ……⁉︎ 滅んだと言ったのか? あのモンスターは1つの町を滅ぼすレベルだったのか? Aランクの依頼を攻略してしまうほどのB級冒険者がいた町を……? そんなバカな。


「お前らがいたのに滅んだのか……! エアロンは、アデラはどこにいる⁉︎ お前ら、逃げたのか……⁉︎」

「あいつらが逃げるはずないだろ‼︎」


 ジークが勢いよくこちらを振り向き叫んだ。ジークは泣いていた。空気が凍りついたように感じた。


「あいつらは! 最後まで戦ったんだよ! あいつらは! 最期まで戦ったんだよ! 逃げる? ふざけるな! 逃げるわけないだろ! あいつらはなぁ! 住民を逃がすために最期まで戦ったんだよ! 死んだんだよ‼︎ お前を馬車に送って戻ったらもう殺されていた……。ダメだった。俺は殺されたあいつらを見て。ダメだった、怖かった、逃げちまった。逃げちまったんだよおおおぉぉ!」


 ジークの顔は、涙とその表情で、ぐちゃぐちゃだった。


「お前が初めから逃げていたら……‼︎ 俺らが3人で戦ってたら死んでなかったかもしれないんだよ! 俺も参戦していたら……、こんなことには……」


 彼の口調は俺を責めているようで、己を責めていた。怖がった自分を、逃げた自分を、仲間を見捨てた自分を、批難していた。

 ジークは言ってから自分の失言に気がついたのか、「すまない」と一言言い、黙ってしまった。


 そこで俺は理解した。俺は、この世界の認識に対する過誤を感じていた。ゲームのように仲間ができ、ゲームのように敵が現れ、ゲームのように敵を倒す。だが、この世界はゲームじゃない、現実(リアル)だ……。


 俺は……、戸惑いを感じた。愁傷を感じた。苦楚を感じた。動揺を感じた。そして何より、怒りを感じた。

 やるせない思い。彼らとは付き合いは短い。冒険者ギルドで知り合い、F級冒険者である俺のために荷物持ちという名目で依頼に連れていってくれた程度だ。だが、俺は長年ずっと一緒にいた仲間のように感じていた。


「うおおおおおおおおあああああぁぁぁぁ‼︎」


 気づけば俺は怒号をあげていた。とにかく腹がたつ。あのモンスターが許せない。

 そして、俺は重力を使い、ハイド町へ飛んでいった。ジークの制止させる声が聞こえたが、気にしていられる余裕はなかった。

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