13話 B級冒険者とAランク依頼
ここからが本編
オーダ。ハダーの仲間で、大きな巨体が特徴的なモンスターだ。攻撃がどれもこれも強力で、熟練の冒険者ですら一撃で気絶させてしまうほど。とは言いつつも、A級以来の中では比較的弱い方。B級冒険者である彼らにはうってつけの依頼という訳だ。
エアロンの位置はそう遠くなかった。走れば数分と経たずに着いてしまった。そこにはエアロンと先に着いていたアデラ、そして2メートルを優に超える巨人、オーダの姿があった。
「おい! 状況は⁉︎」
「俺が少しちょっかいかけてみたけど、あまり効いてる様子はないな!」
「よし分かった。いつも通り俺がヤツの気をひく! エアロンは後方から攻撃、アデラは支援を頼む! タカヒトは荷物を持って隅に隠れておいてくれ!」
俺も戦いたいのだが……。だが、今日は荷物持ちとして来ているんだ。それ以上の行動は返って味方に迷惑をかけてしまうだろう。と、自身を納得させ皆の荷物を持って岩の陰に隠れておいた。
彼らの戦い方は人数と彼らのコミニュケーションを最大限活かした、とても理想的なものだった。ジークが短剣を持ってオーダの注意を引き、ジークが危険になるとエアロンが攻撃魔法で敵を怯ませる。それらを可能とするアデラの支援魔法。そして阿吽の呼吸。長年、3人共に戦ってきているのだろう。
決定打には大きく欠けるが、ジワジワと相手の体力を減らしていっている。
「よし! 順調だ! 勝てるぞ!」
ジークのかけ声と共にさらに激しくなる彼らの攻撃。少しずつ削られていき、もうオーダは虫の息。このまま、彼らが勝つのだろうと思われた。
が、そうは問屋が卸さない。オーダは最後の力を振り絞って、なんとアデラの方へ猛突進を始めた。突然のことに、ジークとエアロンは対応が遅れてしまっている。
俺が行くしかないか……? 目立つなと言われたが、状況的に仕方がないだろう。
俺は力を使い、アデラの方へ一気に詰め寄ろうとした。が、それより先にジークとエアロンが前に立ちふさがっていた。対応が遅れていると思ったのだが、これすらも想定していたようだ。
「甘いぜ!」
エアロンがそう叫び、ジークの短剣めがけて火属性の魔法を放つ。短剣は火を纏い、殺傷能力を増した。その短剣で、ジークはオーダを切りつけた。
飛び散る血。オーダの切り傷から燃え盛る炎。不謹慎、というより残酷かもしれないが、綺麗だと感じた。
「終わったぜ」
ジークが言い、アデラはため息と共に支援魔法を解いた。
美しい狩り。彼らの狩りを一言で表すとそれだった。素晴らしい連携に戦い方。素人が見ても彼らが良い連携をしていると分かるほどだ。
俺は拍手をしながらジーク達に近づいた。
「すごいな。綺麗な戦い方だったよ」
「ははは、もう10年以上一緒にいる仲間だからな。これくらいできて当然だ」
当然とジークは言うが、俺はそうは思わない。連携だけを見ると、彼らはB級冒険者のレベルを大いに逸脱するものだった。
「さてと、依頼を達成したことだし、早速報酬の分配を考えようか。まず、荷物持ちのタカヒトには5万アシリス。残りの30万を俺とエアロンとアデラで分けあうのだが、どうする?」
「3等分で良いんじゃない? ちょうど3で割れる金額じゃない」
「賛成」
ということは1人10万アシリス。毎度思うが、やはり割りに合っていない。先ほどだって、一歩間違えればアデラは死んでいた訳だ。文字通り死に物狂いで頑張って1日10万。悲しいもんだ。
「よし、じゃあ帰ろうか」
エアロンのその声で、俺たちは近くの町へと足を向け、そして歩き出した。
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ハイド町と呼ばれる、俺が今いる町は、小説家が多く、有名な文豪も多数住んでいるらしい。この世界の文豪にはあまり興味がないが。
時間を確認すると、もう7時を回っていた。思っていたよりオーダとの戦闘が長引いてしまっていたらしい。なんとかアンマ町に戻れるかなと思っていたのだが、それは厳しそうだ。
ということでこの町で一泊することにしよう。
が、その前にギルドへの依頼達成報告を済ませなければならない。
ずっと不思議だったのだが、依頼達成報告の真偽はどのように判断しているのだろうか? 何か、調べる方法でもあるのだろうか?
気になったら聞いてみる。
「なあ、アデラ。報告する時、嘘つく人とかいるんじゃないか? どうやって見分けてるんだ?」
「あなた、冒険者なのにそんな事も知らないの?」
「悪いが冒険者なりたてのFランクなんだ。知らないよ」
「そういえばそうだったわね」
アデラは面倒臭げにため息を1つつくと、説明し始めた。なんだかんだで教えてくれる優しさ。
「受付嬢の上に何か見えない?」
そう言われ、じっと受付嬢の頭上を見てみるが特に何も見えない。何があると言うのか?
「いや、見えないぞ」
「ああ、魔力が少ない人には見えにくいかも。で、実は受付嬢の上に精霊が飛んでるの。それが真偽を確かめているの」
精霊? いくら凝視しても、そんなモノはうっすらとも見えない。やはり俺、魔力皆無なんだろうか……。見てみたいのだが。肩を落としてしまう俺。そんな様子を見てアデラは慌てた様子で俺の肩を叩いた。
「ま、まあ、魔力は修行でいくらでも伸びるんだから、気落ちすることはないわよ」
アデラが俺を励ましてくれる。が、それは少しでも魔力があるヤツの話であろう。全く魔力がない俺でも魔力が増えるのか、疑問が残ってしまう。
「ありがとう、アデラ」
「いいってことよ」
そんな会話をしつつ、報酬を受け取って俺はギルドから出ていった。