第5話:王城到着!
日もすっかり暮れ、満月と無数の星が空に浮かんでいる。
その空の下、コッソリと城壁の壁から城壁内に侵入した2つの人影があった。
その正体はダイキとソフィア。ダイキがソフィアを城まで送り届けるということになっていた。
「なんで、そんなにコソコソして秘密の抜け口から城壁内に入らなきゃいけないんだよ。ソフィアって王女だろ。堂々と門を通っていけばいいじゃん。」
「私がこんな時間に現れたら、大騒ぎになるでしょ!そんなことになったら、ダイキ君とゆっくり話しながら城に向かうことができなくなるじゃない。」
「そんなに俺と話してるのって楽しい?」
「うん、すっごく楽しいよ。今まで私と友達感覚で親しげに話せる人っていなかったから…」
楽しいと言ってくれるのは嬉しいのだが、後半の寂しげな発言が気になる。きっと、王女の彼女はこれまで友達と呼べるような子とも遊べず、周りには大人ばっかりで寂しい日々を送っていたのだろう。
「楽しいって言ってもらえると嘘でも嬉しいよ。ところで、俺の国になんでそんなに興味があるんだ?」
ソフィアは目を輝かせながらダイキに日本のことを聞いてくるのだ。ダイキにとってはなぜそんなにダイキの母国に興味が出るのかさっぱりわからない。
「私ね、海の向こう側に憧れてるの。私が10歳の頃から、この国の港にたくさんの外国船が貿易しにやってきたんだ。そして、変わった形の船や、見たことのない品物を見て、海の向こうにはどんな国があるんだろう、いつか行ってみたいなぁってずっと思ってるの。そしていつか、世界中を見てきたことを生かしてこの国を豊かにしたい。」
「なるほどね。でも王女様だったら、外国とか行けたりするんじゃないのか?」
ダイキの問いかけにソフィアの表情は少し暗くなった。
「お父様が危険だからって言って、連れて行ってもらえないの。ましては、つい最近まで城の外には一歩も出られなかった。」
お父様が言うのもご最もだろう。ダイキがいた元の世界の大航海時代は世界の結びつきは少しづつできるものの、まだまだ危険な旅路には変わりない。まだ誰も到達のしたことのない未開の地もあり、そこには怪物が住んでいる。と思われていたそうだ。
この異世界の大航海時代も似たようなものだとすると、王様が心配する気持ちもよくわかってもんだ。
とはいえ、この国の中にも出られなかったというのはいささか不思議だが。
でも………
「俺が金をいっぱい溜めて、いつか連れてってやるよ。世界中を!」
俺は彼女に救われた。だから、彼女にどうにかして恩返しがしたい。
ソフィアの気持ちも分かる。そりゃ、誰だって狭い世界に閉じこもってないで、まだ見ぬ新しい世界に飛び出したいと思ったりもするだろう。学校と牛丼屋以外は外に出ない、引きこもりと紙一重の俺が言えることでもないが…。
それに、彼女がただ外の世界に出たいということだけではなく、他の国々の技術や知識などを持ち帰って自国をもっと豊かにしたいということも分かった。
「ありがとう。それまで私待ってるから。」
ソフィアは嬉しそうに微笑んだ。
「綺麗だ。」
彼女の微笑んだ顔を見てつい、口に出してしまった。はずい//
「えっ!そ…そんないきなり言われても…//」
突然のダイキの一言にソフィアは顔を真っ赤にして動揺する。
「そ、そりゃソフィアも綺麗だけど、俺が言ってるのはあの城のことだよ。」
同じく顔を真っ赤に恥ずかしがっているダイキはどうにかごまかし、夜の暗い中、一際光で輝いてる王城の方を指差した。
「なんだぁ…」とどこかホッとしたようなしゅんとしたようなソフィアはダイキの指さした方を向いた。
「たしかに綺麗ね。あっ!それはそうと早くしろに戻らないと。」
「そうだな。よし!行くか‼︎」
2人は再び、城に向かって歩き始めた。
◆◇◆
「やっと着いたな。」
「うん。」
2人の目の前には大きな城門。そして、その奥には巨大な城が建っている。
お互い、城に着いたことを喜び合っていた。しかし、時刻は深夜だ。こんな真夜中に城門の前ではしゃいでいる者がいるならば、見張りの衛兵が放っておくはずが無い。
案の定、2人のもとにも衛兵が1人近寄ってきた。
「君たち、こんな夜遅くに何をしているんだ。早く家に帰りなさぁイイイイイイ‼︎」
衛兵は驚きのあまり、叫び声をあげてしまった。それもそのはず、目の前には行方不明の王女が立っているのだから。
たちまち城内は大騒ぎになった。
城のそこらじゅうから、「ソフィア様が無事帰ってこられたそうだぞ!」などの喜びの声が響き渡っている。
そして、ダイキとソフィアが今いるのは食堂のような場所だ。衛兵に案内された。といっても食堂は食堂でもよくテレビで見る貴族が食事をとるような白い長机がある食堂だ。流石、王の住む城のことだけはある。
ダイキはこの場所に落ち着かない様子で、ずっとモジモジしていた。
それから数分後…
扉が開いた。
中に入ってきたのは、ソフィアの父(王)、母(女王)、姉(王女)の3人だった。
3人とも、王族の雰囲気が漂う品のある身なりに、さすがソフィアの家族!と思うほど、みんな美男美女だった。