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第23話:夢のなかのソフィア

なかなかいい意味でくだらない話になってしまいました。

 

  ある日の昼下がり。

 ダイキとソフィアは王都の洒落たカフェのテラス席にいた。


「ダイキくん、この前は怒っちゃってごめんね」


「えっ、いやソフィアが謝ることないよ。勘違いさせちゃった俺が悪いし」


 というのも、ソフィアにリリィから抱きつかれた場面を目撃されてから1週間ほど連絡も何もなく、今日やっと連絡である『今日会えますか?』と書かれた手紙がきたのだった。

 ダイキは内心ではソフィアからボロボロに言われるのだろうと覚悟していた。


「はぁ……ソフィアになんて言われるんだろ。『この変態! 二股男! ゴミ人間! 引きニート!』こんなこと言われたら俺のメンタルが持ちそうにない」


 不安すぎてか、顔が真っ青になっていたところへ、ソフィアが到着した。


「ごめんね、待たせちゃったよね」


「いや、俺も今来たところだから」


 ダイキはソフィアの顔を恐る恐る覗いてみたが、怒っている様子はない。


「ダイキくん、この前は怒っちゃってごめんね」


「えっ、いやソフィアが謝ることないよ。勘違いさせちゃった俺が悪いし」


 どう話を切り出せばいいか迷っていたダイキへまさかのソフィアの口から謝罪の言葉が出てきた。これにはダイキも驚く。


「私、あの時、ヤキモチ妬いたのかも………」


「そ、そそそうなの⁉︎」


「うん、だから今日はダイキくんを私が独り占めしてもいいよね?」


「も、もちろん!」

(なんだこのラブファンタジーは‼︎)


 ダイキが頷くと、ソフィアの頬をピンク色に染めた顔がだんだんと近くなってくる。


「こっ、こんなとこでキスは恥ずかしいんじゃないかな⁉︎」


「私はどこでだって平気だよ」


 そして、唇と唇が触れそうになった時ーー



「はっっ! なんだ、夢か……」

 ダイキは夢から覚めた。

 ソフィアが出て行ったあの日からもう2週間が経過していた。

 あの日以降、ソフィアは一度もこの店に顔を出してこない。


「はぁ…………」


 ダイキは気付かぬうちに溜め息を漏らしていた。


「どうしたんだ、溜め息なんかついてよ」


「元気がない時は酒だ酒!」


 今日もダンジョンに潜り、早めに切り上げてうちで飲んでいるロムとギールはほろ酔い気分でダイキに絡んでくる。


「ほら、酒飲めよ!」


「いいよ、俺まだ未成年だし」


「何言ってるんだよ? お前15歳は越してるだろ?」

「立派な成人だな!」


「だから、俺は飲まないってば‼︎」


 親戚のおじちゃん的なノリで酒を勧めてくる2人。


「んだよ、飲まねーのかよ」

「つまんねぇな」


「つまんなくて悪うござんした」


「なんだそれ?」

「それよりよ、お前のその溜め息の理由を教えてくれよ」


 ギールからの溜め息の理由についての問いかけに答えようかと迷ったダイキ。

 2人を気のいい奴らだとは思っているが、やはり相談はできない。


「なんだよ、相談しないのかよ」

「でも、まぁだいたいの予想はつくぜ。どうせあの青髪の娘のことだろ」

「ソフィアっていう子だろ?」


「な、なんで分かったんだ⁉︎」


「図星かよ」

「その子とうまくいってないんだろ?」


「ぐはぁっ」


 完全に心を読まれ、さらにはソフィアとの別れのショックを思い出してしまい、ダイキは血反吐を吐いた。


「おい、汚ねぇな。ギュウドンにかかったらどうすんだよ」

「かなりのショックらしいな……」

「でも良かったんじゃないのか?お前とソフィアちゃんは釣り合わないしよ」


「ぐはぁっっ」


「確かにあんな美少女は滅多に見ないしなぁ。それにひきかえダイキは普通すぎるぜ」

「おう! お前も俺たちと一緒で彼女無し組の一員だな‼︎」


「ぐはぁっっっ」


「そういえば、この前ソフィアちゃんが泣きながら歩いてるとこみたよな」

「そういや見たな。たしかこの店につながる道から出てきたな」


「ぐはぁっっっっ」


「なんかこいつ面倒くさいな」

「吐血の量も増えていってるぞ」




 二人が心配するなか、ダイキはとうとう倒れてしまった。

 ダイキが倒れた拍子に皿も数枚落ちてしまい、食器の割れる音が店内に響いた。


「大丈夫ですか⁉︎ ダイキさん‼︎」


 皿の割れる音が聞こえたのか、二階へとつながる階段から駆け下りてきた猫耳少女がダイキに駆け寄る。


「もしかして、ソフィアちゃんとダイキが別れてしまった原因って」

「ダイキがソフィアちゃんと別れてからずっと溜め息だらけだった原因って」

「「不倫?」」

 その様子を見て、ロムとギールは目を見合わせながらそう言ったのだった。


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