第22話:修羅場
短いです。
リリィの許可もあり、それからしばらくの間、ずっとリリィの耳をモフモフしていた。
「さてと、リリィのおかげでずいぶんと癒されたし、仕事始めますか!」
ダイキは立ち上がり、一階の店舗へ降りていく。その後をついていく。
「私もなにか手伝わせてください!」
「うーん……じゃあ、掃除を頼んでも良いかな? その間に買い出しに行ってくるから」
「任せてください‼︎」
ダイキは買い出しに出かけ、店にはリリィただ1人になっていた。
「ダイキさんに褒めて貰えるように掃除頑張らないと!」
リリィははりきって、店だけではなく、二階の生活スペースも全て掃除をする。
その頃ダイキはというと、王都の商人ギルドでセレナに絡まれていた。
「チキンダイキ様、こんにちは!」
「げっ……セレナ」
「なんで嫌な顔するんですか!」
セレナがプンスカ起こっているが、ダイキは無視して、市場へ向かおうとする。しかし、セレナが行く手を阻んだ。
「ダ……チキンダイキ様。」
「お前、またわざわざチキンっていい直しただろ!」
「そんなことよりも、昨日の泥棒はどうなったんですか?」
「昨日のって?」
ダイキは完全に忘れていた。
「忘れたんですか、リリィとかいう子のこと」
「ああ、そのことか」
「で、どうなんです?」
「あの子は悪くないよ。誰かがあの子に脅して盗らせたんだ」
これはなんの根拠もない。ただ、ダイキがそう感じただけだった。
「へ?」
「待っててくれないか。あの子もなにか心に重いものを背負って生きてると思うんだ。だから、その重みがなくなって、俺に話しやすくなった時にちゃんと聞くから。それまで、待っててくれ‼︎」
ダイキの切なる願い。ダイキが言い終わった後に、セレナの無言の時間が続く。
そして、ようやく口を開いたセレナは……
「うーーーん………、仕方ないですね。この件はダイキさんに任せます」
ダイキの必死の頼みが通じたのか、しぶしぶだが、セレナはダイキに全てを任せることにしたのだった。
□ダイキの店□
ダイキがセレナと話し合っている間、リリィは部屋の隅々まで掃除をし、もうすぐで終わるという頃だった。
「ダイキくん、いる?」
1人の青髪の美少女が店に現れたのだ。
「あの、あなたはどなた様でしょうか?」
リリィは突然現れた青髪少女に尋ねる。
「私? 私はソフィアっていうの」
青髪少女の口からソフィアと聞いた瞬間にリリィの顔は驚きの表情に変わった。
「ま、まさか、王女様⁉︎」
「あ、つい言っちゃった」
普段は本当の名前を教えないように細心の注意を払っているソフィアだったが、つい口を滑らせてしまった。
リリィは未だに驚きの表情を浮かべているが、ひとつ深呼吸をし、冷静さを取り戻した。
「あの、王女様がこちらに何の用でしょうか?」
「私はダイキくんに会いに来たんだけど………留守かな?」
「はい。今、買い出しに行ってます」
2人の間に、目には見えないバチバチとした緊張感が漂い始めた。
「あの〜、あなたはどなた様なの?」
今度はソフィアがリリィへ尋ねた。
「私はダイキさんの…………」
「ただいまー!」
リリィの話の途中で、ダイキが帰ってきた。
「ダイキくん!」 「ダイキさん!」
「ああ、2人……とも。」
ダイキは2人の圧に押され、シドロモドロに言った。
と、そこへ、リリィがダイキの元に駆け寄り、ダイキへ抱きついてきたのだ。
「ダイキさん、お帰りなさい! 私の耳、モフモフしてくださっても構いませんよ♪」
そして、ソフィアへと、『どうだ!』という感じの目線を、ソフィアへ向ける。
すると、その目線を受けたソフィアは顔を俯けた。
「そ、そ、ソフィア! これはだな、誤解なんだ!俺とリリィはそんな関係じゃないし‼︎」
ソフィアのテンションが下がったのはリリィが原因だということは明らかだった。どうにか誤解を解こうと頑張る。
「ソフィア、話せばわかる!」
ダイキはソフィアの手を握ろうと手を伸ばす。しかし………
「触らないで! あんまりだよ、こんな娘と私がいない間にイチャイチャしてたんだね……」
ソフィアはダイキの手を振りほどくと、そのまま店を後にした。
ダイキはすぐさま追いかけようとしたが、その足が止まってしまう。
今、ソフィアに何を言おうとも彼女は請け合ってくれないだろう。
彼女の後ろ姿は切なげで、ダイキは彼女が見えなくなるまで、ただただ見ているしかなかった。
この作品を読んでくださっている方々にご報告があります。
私のもう一方の投稿作品を進めるため、この『チート無しの異世界商人ライフ⁉︎』はひとまず休憩したいと思います。
もう一方の方が終わり次第、こちらの更新を復活したいと思うので、それまでお待ちください。




