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第1話:牛丼片手に異世界へ

ここは日本のある街にある牛丼屋だ。

この牛丼屋で毎週金曜日に決まって牛丼大盛りをお持ち帰りで頼む少年がいた。


「ご注文は、いかがいたしましょうか?」


「牛丼大盛りのお持ち帰りで!」

少年はいつもの通りのメニューを注文した。彼の親は共働きで、月曜から木曜までは食事は一緒にとれるが、特に金曜日は夜遅くに帰ってくる。そのため、彼は金曜日には学校帰りに大好物の牛丼を買って帰り、1人で晩御飯として食べているのだ。

とはいえ、彼としては大好きな牛丼が食べられる日なので、大して悲しんでいない。


学校の制服を着、リュックと背中の間に制鞄を挟み、そのおかげで空いた手で牛丼の入ったビニール袋をさげている少年がこの物語の主人公となる。



「よっしゃー、牛丼も買ったことだしあとはジュースでも買って録画してたテレビでも見てくつろぐとするか〜。」


俺の名前は飯田大輝。高校2年生の17歳だ。中学高校では友達もできず、ましては女子と話したことは小学生以来ない。

学校は大して楽しくないので、金曜日は俺にとって最高の日なのだ。学校は明日から休みだし、牛丼だって食べられる。

サイコーだ!


家の向かい側に設置してある自動販売機でジュースを買い、家のドアの鍵を開けるため鍵をズボンの左ポケットから取り出そうとした。鍵はいつも左ポケットにしまってあるのだ。

しかし、ポケットの中にはハンカチしか見当たらなかった。

「ヤバい、鍵どこやったっけ?」

しばらく焦っていたダイキだったがすぐに思い出した。

「そういえば、リュックの中に入れてたっけ。」

ダイキは背負っていたリュックを地面に置き、中から鍵を取り出し、玄関の鍵を開けた。


普通ならこれで、普通に家に入り、牛丼を食いながらくつろぐはずだった……





◆◇◆

「ここは?」

ダイキは目を覚ました。どうやら意識を失っていたらしい。

ぼんやりだが、目の前に犬のような顔が見える…いや、犬よりもっと怖そうな顔だ。オオカミだろうか?あれっ、今顔にベトベトした液体が落ちてきたような…ぼんやりとしか見えなくてよく分からない。

目をこすり、目の前をもう一度見てみる。

だんだんハッキリしてくる視界と意識でダイキは自分がとんでもない状況にひんしていることが分かった。


起き上がったダイキの頭上には巨大なオオカミが口を大きく開け、今まさにダイキを飲み込もうとしていた。

「な、ななななんなんだよー‼︎」

必死に逃げるダイキの後をオオカミが追いかけてくる。

ダイキにとっては何がなんなのか全くわからない、理解不能である。

「たしか、玄関の鍵を開けて…それからどうなったんだっけ?っていうか、なんで俺はオオカミに襲われてんだよ。オオカミってとっくに絶滅したはずじゃなかったのか?」

必死に逃げるダイキだったが、彼は高校に入ってからは部活に入っていない。いわゆる帰宅部ってやつだ。

「ダメだ、はぁ、はぁ、もうギブ。やっぱ運動部に入っとくべきだったかな。」

ダイキの体力はもう限界に近かった。

「ホントにもうダメだ…」

倒れこむダイキにすぐに追いついたオオカミは容赦なく口を大きく開け、ダイキを今にも飲み込もうとしている。

「もうダメだ…」

ダイキが諦めかけ、死を悟ったその時だった。

青い光にダイキは眩しく感じ、目を瞑った。

そして、目を開けると目の前のオオカミは消えていた。

「何が起こったんだ?」

何が起こったのか全くわからないダイキは背後の気配を感じ、振り返って身構える。


しかし、そこに立っていたのはオオカミではなく、青髪の少女だった。見た感じ、ダイキと同じくらいの年齢だろう。しかもかなり可愛い。

「ケガはない?大丈夫だった?」

少女は心配そうにダイキに尋ねた。


「だっ、だだ大丈夫だよ。あ、あの、今のって君が助けてくれたの?」

女子と関わってこなかったダイキは女子に話しかけられ、テンパる。


少女はダイキのそばに歩み寄り、ダイキに手を伸ばすと、ダイキが立ち上がるのを手伝ってくれた。

「大丈夫なら良かった。でも、あなた魔法も使えないようだし、武器も持ってないようだし…森に入っては危険よ。」


ダイキは彼女の言葉に押されてしまい、思わず謝ってしまった。

「すみません。」

そして、ダイキは彼女の言葉で今更ながら自分が森にいることに気づいた。

オオカミに襲われ、逃げるのに一生懸命だったダイキは今までここが森だということに気づかなかったのだ。


「それに、モンスターがたくさんいる森で、そんな美味しそうな匂いを漂わせてればモンスターが近寄ってくるのは当たり前よ。ホントに危なかったんだから。」


彼女の言葉にまたダイキは謝ってしまった。

「すみません。」

そして、ダイキはまた気づいた。ダイキは左手に牛丼が入ったビニール袋を掛けていた。

「そうか、この牛丼の香りでモンスターが!」

1人で納得しているダイキの手を握り、少女は言った。

「とにかく、今はこの森から逃げ出しましょう。どんどんモンスターが集まってきちゃう。」

手を少女に引っ張られ、少女と並んで走り出したダイキは改めて少女の横顔を見た。

美しい顔立ちに少し幼さを残し、サファイアのように青く澄んだ美しい瞳、髪は青髪でその綺麗な髪は腰までのばしてある。服装は彼女の美しさを際立たせる上品で高貴な雰囲気。


「スゲェ可愛い…」

今のが彼女に聞こえてないか、ダイキは急いで口を押さえた。



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