第17話:金髪の少女
遅くなってしまい、申し訳ありません。
しまった、セレナと遭遇してしまった。
「なぜ、無視するんですか⁉︎ ヒドイです‼︎」
「いやー、だっていろいろと面倒だし…」
「それよりも、今日は何してるんですか?」
「別に… 」
「分かりました! ソフィアさんとデートしに来たんですね‼︎」
セレナはダイキの横にソフィアがいることでそう思ったらしい。確かに、はたから見れば付き合っている男女に見えるかもしれない。
言い当てられて、ダイキは顔を赤くした。
やはり! という表情で、セレナはソフィアにも「ですよね‼︎」と聞いている。
それに対してソフィアはこくんと頷いた。ソフィアはデートの詳しい意味を知らないので、照れたり恥ずかしがったりしないのだろう。
「チキンダイキ様、ソフィア様に告白なされたんですか?」
「チキンは余計だよ!」
「失礼しました、もう付き合っているのならチキンではないですね。でも、まだソフィア様とはそこまでの関係ではないはず。ですから、どうしましょう? これからはどうて…」
「言わせねぇよ‼︎」
ソフィアがいる前だ。純粋なソフィアの心を汚すわけにはいかない。
それからしばらくセレナとの立ち話が続いたが、セレナは急に用事を思い出したように話を途切らせて、走って行った。
気を取り直して、ダイキとソフィアは商人ギルドに向かった。
商人ギルドは以前来た時よりも人は少なく、ガラーンとしていた。
「あの〜、すみません。」
受付カウンターにも誰もいないので、ダイキは大きな声で呼んでみた。しかし、誰も出てこない。そんなはずはないだろうと、ダイキは身を乗り出して、受付カウンターの奥の方を覗いてみる。
受付カウンターの奥はギルドに勤める人の休憩所兼、資料や金庫を置く場所にもなっていた。
そして、その金庫の前にガサゴソと動いている少女がいる。
ダイキはその少女が受付のお姉さんだと思い、声をかけた。
「あの〜、そこの方。呼んでるんですけど…」
ダイキが少女に向かって話しかけると、少女はダイキたちの方に振り向き、一瞬驚きの表情を浮かべたが、すぐに冷静な表情に戻る。
「すいません。集中していて聞こえていなかったもので…」
「いや、別に大丈夫ですよ。それより、どこかでお会いしませんでしたか?」
ダイキがこのような発言をしたのには理由があった。
目の前に立っている少女に、どうも見覚えがあるのだ。
十四・五歳であろうと思われる身長に金髪のセミロングの髪型に可愛い猫耳。オレンジサファイアのように美しい瞳。
そう、それはダイキが異世界ヤンキーに絡まれたあの日、出会ったフードの少女だったのだ。あの時はフードをかぶっており、髪型まではわからなかったが、おそらく同一人物だ。
少女は少しの間、黙っていたが、ようやく口を開いた。
「…どうも、あの時は助けていただきありがとうございます。」
やはり、あの時の少女で間違いないようだ。
「ここで働いてたんだね。」
「えぇ、まぁ…」
どこか気の無い返事にダイキは疑問を感じたが、あまり気にせず、本件の方に移ることにした。なにしろ、会費を出すだけで、かなりの時間が経っている。一刻も早く終わらせて、ソフィアとのデートを楽しみたいのだ。
「それで、今日はこれを支払いに来たんですが。」
ダイキは会費である3000ペルを入れた封筒を少女に渡した。
「は、はい。クミアイカイヒですね。確かにお預かりしました。」
やはり何かおかしいと思いながらも、ダイキは商人ギルドを後にした。
「よし、まずはどこに行く?」
「え、私が決めていいの?」
「もちろんだよ。」
「うん、でも私、ダイキくんと一緒に行けるならどこでも楽しいよ!」
この一言は響いた。ダイキは心の中でガッツポーズを決めると、ソフィアに提案した。
「一応、案はあるんだけど。」
「え、なに?」
「まずは昼飯でもどうかな?」
「うん、いいね♪」
ということで、2人は王都で最近話題のラーメンを食べに行くことにした。
店は王都の中心街にドンと構えるくらいの立派な建物だ。おそらくかなり儲かっているのだろう。
店内に入ると、日本のラーメン屋とは違い、かなりオシャレな雰囲気だった。
早速、注文をする。
ダイキは味噌、ソフィアはラーメン初体験のため、しょうゆ味にさせた。
しばらく待つと、味噌ラーメンとしょうゆラーメンが運ばれてきた。
ダイキはもしかすると、異世界のラーメンは日本のとは少しばかり違うものなんじゃないかと期待していたのだが、味も何もかも日本で食べていたラーメンと大して変わらなかった。
だが、逆に変わらなかった方が良かったかもしれない。日本で慣れ親しんだ食べ物を食べれるというのはなかなかいいもんだ。
ソフィアもラーメンをとても気に入ったようで、スープも最後まで飲み干してしまった。
次回は、夜10時投稿予定。




