第12話:商人ギルド
久しぶりの投稿になります。
少女の手を引き、ダイキは必死で逃げた。
初めは路地を奥へ奥へと行き、相手を巻こうとしたが、この町に詳しくないダイキにとっては全くの逆効果だった。奥へ行くたびに、日の光は遮られ暗くじめじめしており、怪しげな店やヤンキー3人組よりももっとガラの悪そうな奴らが増えてきた。
「なんか、逆に危険なとこに来てしまったな。」
「あの~、逃げるなら大通りに出た方が良いかと思うのですが…」
「確かに!大通りに出た方が奴らも周りの目を気にして、遅いにくいかもな。」
というわけで、2人は来た道をもどりはじめた。幸いその道中でヤンキー3人組にも遭遇せずにすみ、大通りに出ることが出来た。
顔に照りつける太陽の光がダイキの心に安堵感を生んだ。
「やっと出れましたね。」
「うん、ありがとな。助けたつもりが結局は君のアドバイスで助かった。」
少女がダイキよりもだいぶ背が低いからだろうか、可愛げな少女の頭をなでなでしたい衝動をダイキは必死で抑えた。いきなりそんなことをしては少女から変態ロリ呼ばわりされてしまう。
「で、君…えーっと、名前は?」
「リリィ……リリィ・コウリです。」
「リリィ・コウリか。良い名前だ。」
「えっ⁉︎」
「ん、どうした?」
「いえ、なんでもありません。」
リリィ・コウリ 。それが少女の名前だった。
リリィという響きは可愛さはあるものの、どこか寂しそうな雰囲気がある。
彼女自体も何か悲しそうな表情をしている。何らかの事情を抱えているのは見て明らかだった。
とはいえ、詮索しすぎると警戒心を生んでしまう。深くは聞かないほうがいいだろう。
ダイキはとりあえず、リリィを家まで送ることにした。
「家まで送ろうか?」
「大丈夫です。」
「でも、さっきのやつらに追われてるんだろ?」
「本当に大丈夫ですから。」
「でも…」
「助けていただいたことは感謝します。でも、これ以上は迷惑をおかけするわけにはいきません。」
リリィは断固拒否すると、走って行ってしまい、ダイキは後を追おうとしたが人混みの中にリリィは消えてしまった。
ダイキは仕方なく諦め、本来の目的であるソフィア捜索をし始めた。
だが、1人の人物を捜すには、この王都はあまりにも広すぎた。
「それにしても、疲れた。」
今日1日中歩き続けたためか、ダイキの足はもう限界だった。仕方なく、先に商人ギルドに向かい、そこでソフィアに会えることに期待することにした。
町の人々に話しかけ、商人ギルドの道順を教えてもらい、ダイキがようやく商人ギルドに着いた頃には、街全体がオレンジに染められていた。
「夜前にはなんとかついたな。」
ギルドは、メインストリートの突き当たりに位置し、王都のギルドだけあって、大きく立派な建物だった。
あとは、商人ギルドの受付が開いているかどうかである。夕方5時で受付を終了するようならば、間に合わないが…
中に入り、まず目に入ってきたのは5メートルくらいの長机がいくつも設置され、そこでコーヒーを飲みながら商談をしている商人たちであった。
ギルドの中を見回すと、入り口の右手に受付カウンターが。そして、そこにはソフィアの姿もあった。ダイキはソフィアの元にくると、頭を下げた。
「ごめん、迷子になるなって言われたのに早速なってしまって…」
頭をさげるダイキに向かって、ソフィアは優しく言った。
「謝らなくて大丈夫よ。私こそ、一瞬でもダイキくんから目を離してしまったのがいけないし。」
「やっぱり子ども扱い⁉︎」
どうやら、ソフィアもギルドで待っていた方がいいと思っていたらしく、ダイキと離れてしまってからずっとここで待っていてくれたようだった。
「もう、受付のお姉さんに待ってもらうのに苦労したんだからね!」
「やっぱり、登録受付は夕方でしまってしまうのか。」
ソフィアは冗談のように言ったが、もしかすると受付のお姉さんからは文句を言われまくったのかもしれない。それでもダイキには愚痴ひとつ言わずに、待っていてくれたと思うと、ソフィアには後でしっかりお礼をしないといけないと感じた。
受付カウンターにくると、受付には美女が立っていた。ソフィアやリリィとはまた違い、眼鏡をかけ、大人な印象を持つ女性だ。
「ソフィア様から要件は聞いております。」
「あ、そうっすか。」
「では、こちらの書類に記入をお願いします。」
「あっ、書類ですか…」
ダイキは異世界の登録なんて、水晶やなんやらに手をかざせば一発で登録完了。そんな楽ちんなものを想像していた。
「冒険者ギルドでは最新式を使っているのですが、商人ギルドにはあまり必要のない機能も多いので、書類だけになってるんですよ。」
ダイキの少しがっかりした表情を見て、何を考えているのかわかったのだろう。女性は説明した。
「具体的に言うとですね、最新式だと冒険者がモンスターを倒すと同時に自動で記録が刻まれたりと、自動でなんでも記録してくれて便利なんですよ。ですけど、商売にはそんなのは必要ないので…」
「確かに。」
ダイキは納得し、書類に必要事項を書き始めた。
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