第11話:『五百天射』‼︎
今日も少々遅れてしまいました。
殴られ、蹴られ、鼻からはドバドバと豪快に血が流れている。
「テレビとかでこんなシーンを見たことがあるが、まさか俺がこんな目に会うなんてな……アハハ………」
自分の不幸を笑うしかなかった。
無力なダイキは立ち向えるわけもなく、逃げるしか道は残されていない。
となれば…
「あ、衛兵だ‼︎」
ダイキがヤンキーの後ろを指差した。
「なんだと⁉︎」
ヤンキーはビビってしまい、後ろを振り返る。
「今だっ!」
ダイキはその隙にその場から逃げ出した。体がボロボロだろうがなんだろうが、この場から逃げ切らなければ命が危ない。ダイキは路地を必死で走っていく。
しかし、ダイキの言ったことは所詮は嘘。ヤンキーもすぐに嘘ということに気づき、ダイキを追ってくる。
「まてコラー!」
「誰が待つかっ!こっちまで来てみろよ‼︎」
幸いヤンキーが気づくまでにだいぶ距離を稼げたし、路地は入り組んでおり、簡単には追いつかれないはずだ。
「まずはあそこの角を曲がって、あいつを巻かないと。」
ダイキが最初に見えてくる角を曲がろうとした時だった。
ドンッ
何かに勢いよくぶつかり、ダイキは尻もちをついた。
「いってーな。」
「いたたっ!」
可愛い声が聞こえた。
どうやらぶつかった相手も同じく尻もちをついたようだ。
声の主は少女だった。フードを被っており、顔までは見ることはできない。
「悪いな、ぶつかっちまって。だいじょうぶか?怪我はないか??」
「あ、はいっ、だいじょうぶです。あなたこそ怪我はないですか?」
「俺は大丈夫だよ。」
ダイキはこの少女に手を貸し、立ちあがらせた。少女が立ち上がり、フードの奥から顔がのぞく。
まだまだ幼さを残しているが、オレンジサファイアのように綺麗な瞳。フードから少しはみ出している髪は美しい金髪をしている。可憐な少女だ。
歳は身長から考えると十四、五歳くらいだろうか。
またもや異世界美少女発見だ‼︎……と思っていたダイキだったが、我に返った。そう、今のダイキには少女とぶつかってしまった間に追いついてきたヤンキーがすぐ後ろにいたのだ。それだけならまだマシだった。なんと、この少女もガラの悪い男連中を2人連れてきたのだ‼︎
「「あ!アニキ‼︎」」
少女が連れてきた方の男2人がヤンキーに向かってそう呼んだ。どうやらこの3人は仲間のようだ。
「おう、どうしたお前ら?」
「やっと見つけたんですぜ!こいつを騙して金を奪って行きやがった小娘を‼︎」
こいつと指をさされたもう1人の下っ端は恥ずかしそうに頭を掻いた。
ダイキが少女に「そんなことやったのか?」と聞いたが、少女は首を振って否定した。
「そうか…おい小僧、その小娘を俺に差し出せば、もうお前を狙わねぇぞ。」
「なに、この子をお前に差し出すだと?」
状況は最悪だ。ダイキの相手は先ほどまで1人だったのに、2人も増えてしまった。あのヤンキーの言葉通りに少女を差し出せばダイキは助かる。
ダイキの心が揺れる。
よく考えれば、このヤンキーたちはあの少女を見つけるために王都を探し回っていたのだ。ダイキはそれに巻き込まれていたに過ぎない。この少女にも、今出会ったばかりで他人同士だ。明らかに差し出した方が良い。そう、差し出せば、ダイキは何もされずに済むのだ。
だが……
(たしかに昔の俺は、こんな場面に遭遇したとしても、あっさり引き渡すだろう。しかし、この世界に来てから、人の温かさを感じることが出来た。日本ではもうずいぶん昔から感じていなかった人の温もりが…………………………………
心にソフィアの顔が浮かぶ。そうだ、ソフィアがダイキにこの心の温かさを知らせてくれたのだ。きっとソフィアならこの状況でも、少女を救うのだろう。きっとソフィアなら……)
ダイキの目に決意が浮かぶ。
「残念だけど、この子は渡せないな。」
「なんだと、ボコされたいのか?」
「誰が自分からボコされたいと言った?俺は、この子はやってないって言ってるだろ!」
「そんなのを信用するな。こいつは有名な盗賊女だぞ。」
「お前らだって、似たようなもんだろ!」
そう言って、ダイキは手にポケットに入れていた500円を再び取り出す。
「なんだ?またさっきの変な硬貨か?」
「ふっ、この平成28年の500円の輝き、なめんなよ!くらえ‼︎ 『五百天射』」
ダイキは500円玉を空高く掲げる。
キラーンッ!
500円玉、しかも平成28年なのだ‼︎
荒くれ3人組に向かって太陽の光が反射される。
「くっ!なんだこれは⁉︎」
「「まぶしーーーー」」
効果てき面。というか想像以上に効いている。
「よし、今のうちに逃げるぞ!」
「はい…」
その隙に、ダイキは少女の手を引いて逃げる。
この世界に来ての初めての活躍。そして、武器と必殺技を手に入れることに成功した!
ということで、ダイキはようやく武器と必殺技を手に入れました!




