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1ている:お見送り

「兄さま、いってらっしゃいです」


いつものように駅の改札口まで兄さまと一緒に行く。

兄さまの姿が見えなくなるまで見送っていると、何度か兄さまが振り向いてくれるのが嬉しい。

照れる兄さま可愛いです、大好き。

少しすると兄さまからメールが来る。


『気をつけて家に帰るんだよ、行ってきます』


いつもくれる短いメール。

でも、月夜は凄く嬉しいのです。


「えへへ、わかりました兄さま」


携帯の画面に向かって思わず返事をしてしまう。

もう……月夜は兄さまのコト優しくて大好き。

兄さまの事を想うと、ふにゃ〜んてしてしまいます……

でも気をつけて帰りますね。


「月夜ちゃん、今日も見送りかい?」


「はい、兄さまのお見送りです」


「いつもいつも健気だねぇ……ウチに嫁においでよ」


「ダメです、月夜は全部兄さまのモノです」


兄さまと月夜が住んでいる所から駅前までのこの商店街の人達は、

月夜が【娘ねこ】ということを知っていても全然気にしないで接してくれる。

だから月夜はこの商店街がお気に入り。

兄さまとの約束なので例え商店街にしか用事が無くても、ちゃんとみみとしっぽは隠している。


「また後で買い物に来てね。 今日の晩ごはんはお肉がいいよ」


「おいおい、今日は魚の日だろ」


「えへへ、ありがとうございます。 また後で買い物に来ます♪」


「「まってるよー、月夜ちゃん」」


「はい」


「月ちゃん、月ちゃん」


……!

この呼び方は……。


「これ、持って帰っておやつに食べなー」


「え、いいのです? おばあちゃん」


色々な物を売っているお店のおばあちゃんが、クッキーの袋を持ってきてくれた。

おばあちゃんは商店街の中でも特に可愛がってくれる。


「いいのいいの、残り物だから」


「ふぁぅ……ありがとうございます。 クッキー大好きです♪」


「月夜ちゃんは最近コロコロ笑顔になるようになって、本当に良い子だね」


「えへへ……それはですね、兄さまが……」


「(婆さん上手くやりやがったな)」


「(くそ、何で魚屋だけどクッキーも扱うか)」


「ちょっと前までの大人しい月夜ちゃんも可愛かったけど、今のほうがいいね」


兄さまにワガママを言って、本当の事を言って、兄さまに許してもらって、ぎゅってしてもらって……

「外でもそのままの月夜でいいんだよ」って言ってくれた。


「にゃふ、ありがとうございます」


商店街の人達は初めて知った時はみみもしっぽも凄く驚いていたけれど、直ぐに月夜の事を可愛がってくれるようになった。

兄さまが言うには「猫っぽいからじゃないかな」と言っていた。

そうなのかな……月夜は猫じゃなくて【娘ねこ】なのに。


携帯電話も兄さまからの連絡と何かあった時にと兄さまが買ってくれたけれど、

今のところ兄さまとカリンちゃんとのメール専用になっている。

時々なぜか声をかけてくる人がいるのでその対策だよと兄さまが言っていた。

でも、商店街の中でそんな事になると、お店の人達がワイワイ出てきて……すぐに追っ払ってくれる。

だから商店街は安心して月夜だけで出歩ける数少ない場所。


仲良しのカリンちゃんは月夜と同じ【娘ねこ】のお友達。

兄さまとカリンちゃんのご主人様がお友達で、一緒に会いに行った時にカリンちゃんにはじめて会った。

本当に偶然【娘ねこ】どうしで二人でびっくりした。

カリンちゃんのご主人様を兄さまは驚かせようと思っていたけれど、それどころじゃ無かったって言っていた。

まさかの【娘ねこ】どうしってすごい……!

同じ街ではないので、時々しか会えないけれど、凄く可愛くて綺麗な【娘ねこ】さん。

月夜は羨ましいのです……。


そんな事を思っていると、直ぐに家に着く。

兄さまと住んでいる家は駅から商店街を通り抜けたすぐ先、ほとんど隣位の感じ。

おばあちゃんからもらったクッキーを手に、家にはいり……


「ただいまです」


兄さまを送った後なので誰もいないけれど、挨拶は大切と兄さまが教えてくれたのでしっかり守る。

そして、月夜のお仕事はここからが本番。

お片づけとかお掃除とかしっかりやらないと。

それに家事楽しいし、なにより兄さまのお役に立ててるというのが本当に嬉しい。

兄さま大好き。


まずは……えへへ、兄さまのお洗濯物にくるまりたいけれど、我慢して……

朝ごはんのお片づけからです。

月夜やりますよー!



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