ようせいのくに
初投稿作。だいぶむかしに書いていたものに加筆修正してみました。
題名にあるようにようせいのおはなしなのですが、色々書き加えてゆくうちになにが書きたかったのかよくわからなくなりました。
ですが、一応話にはなっているかと思いますのでご自由にお読み下さいませ。
ある美しい国のはずれの美しい森の奥深くにようせいがおりました。
ひとと同じように、感情豊かで性格も皆それぞれちがっています。明るく活発なようせいがいれば、けだるそうにしているようせいだっています。すぐかんしゃくを起こす子がいれば、おっとりとした子がいます。いじめっ子がいれば、いじめられる子。泣き虫な子、寂しがりやな子、やさしい子……。
それでもかれらはひととは区別されてくらしておりました。
その背中にはとってもうすい、ぬののようなちょうちょやとんぼのはねがくっついていて、ようせいたちはこのはねをこきざみに動かして森中をとびまわっているのです。
ひとのように言語を生み出すことはしなかったけれど、かれらはお互いのことをなんとなくわかっていればじゅうぶんでした。
小柄なからだのせいか天敵は数え切れないほどいましたが、話せばわかってくれるいい生き物たちもたくさんいたので、助けあい、平穏な日々をおくっていました。
ソトにでていって、いたずらするようせいの集団がいました。
これはどうしようもありません。せめて関係のないじぶんたちには被害のありませんように、とようせいたちは祈るのみです。
ソトに迷いでていってそれきりになったようせいもいました。
これはきっと、ひとのせかいがあんまりにも強烈で、じぶんを見失ってしまったのです。あるいは、帰り道を忘れて途方にくれているやもしれない。ぽろぽろとなみだをながしていまでもなかまの迎えを待っていることでしょう。
ようせいはひとがすきでした。
けれどもソトにでたがる子はそう多くはおりませんでした。ソトはそれはそれはすてきなところでしたけれども、そのしんおうから闇が絶えずふきでてくるのです。知ってか知らずかひとはそれを身のうちにためこみつづけているのです。
ですからひとはようせいなどよりもひどく不安定でもろくなってしまいました。むかしは眼に映らずともわかりあえる関係性であったのに、いまはちっともわかりません。
ようせいはむなしさをかんじていました。どうすればみんながこころをかよわせられるひを迎えられるのだろうか。やっぱり、もうなにもかもが終わりにむかうのだろうか。
――いいえ。
そう、ようせいは知っていました。ひとはたしかにもろくよわい生き物だけど、その知恵をうまくつかってじぶんを強くすることができるのだと。
ようせいはおもいました。それならいつかはじぶんたちのあやまちにきづいて、ようせいたちの願う未来も叶えられるのかもしれないと。
ようせいたちの望む国がそのむこう側にあると。