表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
76/76

Episode 076【真正面と正面と】

 シャカシャカシャカー


 シーカー・ロープの独特な音がする。そしてロープは幾度となく掴んできた「それ」を再び捕える。

 そして「それ」は見飽きた程に、また観客の目の前で空に飛んだ。


「マジかよ……」


 呆気にとられるアカツキ。


 どすっと、地面に叩きつけられながらも「それ」はまた立ち上がってくる。


「ここまで良くもった方だよ」


 アカツキの隣に座っている男が、二人を諭す様に呟いた。

 その言葉を聞いて、何も言えないでいる二人。



「お前、ほんっとムカつくよな。さっさと負けろよ」


 ラルフォンスがDに話し掛ける。


「うるさいぉ……。こっちは色々考えとうって言うたやろ、さっさと来んかい!!」

「チッ!!」


 そして、再びシーカー・ロープに捕らえられ宙を舞うD。


(くっそ!! どっからでも『カッ』て来て、『ドンッ』て来るな。『カドンッ』って感じや……)


 ラルフォンスを見ながら、Dが立ち上がる。


(隙突こうにも、めっちゃ動き早いし。逆にこっちが、それでやられてばっかや)


 これまでDはラルフォンスの隙を突こうと、闘技場を動き回っていた。

 が、しかしーー


 どこに動いてもシーカー・ロープの的になり、何も出来ないでいた。


(正面から行ったら、あかんって言うけど。どうしようもないぞ、マジで)


 そんなDに対して、ラルフォンスが再び仕掛けてきた。

 そして観客達は、吹き飛ばされ地面に倒れるDに対して言葉を投げかけてきた。


「もう、いい加減終われ!!」

「さっさと負けろよ!! この下位職が!!」

「俺は、お前を見に来たんじゃねぇぞ!!」


 同じ光景を何度も見せられてきた観客達は、時を切らし始めた。


「こいつらっ!!」


 立ち上がり、他の観客達を怒鳴ろうとするアカツキ。

 その腕を掴み、それを止めるTrash。


「やめぇ」

「何でだよ!? Dがこんなに言われて、悔しくねぇのかよ!? トラ!?」

「悔しいけど、しゃあないやろ。あいつらがDの事知っとる訳やないんやから」

「でもよっ!! ……クッソ!!」


 そんな二人の思いも他所に、罵声を浴びせ続けられながら倒れ込むDを見て。

 俯くTrashとアカツキ。


「おい? 聞いてるか? 皆も同じ思いしてんだよ、さっさと負けろ。良いか? ここは強い奴が偉くて、弱い奴は強い奴に従ってれば良いんだよ」


 倒れているDを見下し、ラルフォンスが言葉を掛ける。

 しかし、Dはまた立ち上がってきた。


「チッ」


 負けを認めないDを見て、舌打ちをするラルフォンス。

 そしてラルフォンスはDの顔を見て、更に嫌な思いをした。


「テメェ、何笑ってやがんだ!? やられすぎて、Mに目覚めちゃったんじゃねぇか!?」


 そして、アカツキの隣に座っていた男も。

 立ち上がるDのある事に気付き、思わず言葉を放った。


「何だ? あれ?」


 男の驚いた様な言葉を聞いて、TrashとアカツキがDの方を見る。

 すると、そこにはいつか見た赤いオーラがDを包み始めていた。


「トラ!! あれって!!」

「あん時、以来やな」


 Dの変化を見て、息を吹き返した様に元気になる二人。

 それを見て、男が声を掛けてきた。


「お前達、前にもあれ見た事あるのか?」

「ああ!!」

「あれ、何なんだ?」

「さあ!? 良く分かんねぇけど、ああなった時のDは無敵なんだよ!!」


 陽気に答えるアカツキ。


「無敵って。何だ、そりゃあ?」


 更に「?」が増える男を見て、今度はTrashが男の質問に答えた。

 その中には、ネイヴェル族のハイランド・ラインスター戦の事も含まれていた。

 そしてTrashの話を聞き終わり、男が再びDを見る。


「それが、あの赤いオーラなのか?」

「せや。あん時に比べたら、なんか色が薄い感じがするってぇか。オーラの範囲が小さい気がすっけど」

「お前達、ルーキーなんだよな? まだ下位職だろ?」

「ルーキー? 何やよう知らんけど。下位職や」


 男はTrashの言葉を聞いて、ルーキーの言葉の意味を説明し。

 再びDを見た。それは、じっくりと観察する様に。

 そんなDの変化にも、頭に血が上り気付かないでいるラルフォンスは。

 今までと同じくDに攻撃を仕掛ける。


「何やっても、今のDには効きゃしねぇって!!」


 興奮し始めるアカツキ。

 そんなアカツキの思いも他所に、Dは再び吹き飛ばされ地面に倒れるD。


『!?』


「何でだよ……?」

「あん時と同じのやないんか……?」


 そんな二人に、男がまた声を掛けてきた。


「おい? 今までと何も変わってないぞ?」

「分かんねぇ……。 おい、D!! 何やってんだよ!!」

「どないなってんや?」


 しかし、Dはまた立ち上がってきた。

 そんなDを包む謎の赤いオーラは、確かにTrashが言った様に。

 あの時に比べ、その勢いは小さく感じた。


「マジで、しぶてぇな!! 無理ゲーなんだよ!! お前が俺に勝つなんか!!」


 そんなラルフォンスにDが呟く。

 しかしその声は小さく、聞き取れなかった。


「ああ!? 今何か言ったか!?」

「もうちょいや、もうちょい……」

「はぁ!? 何がだよ!?」


 そして、Dはまた宙を舞った。


(……正面行ったらあかん、あかんねや)



 そう思いながら、立ち上がるD。


「次は返したる」


 そしてDは柄を自分の額の方にまで上げ、刃を垂らす様に構えた。


「何だ、それ?」


 呆れた様な顔をするラルフォンス。

 シーカー・ロープが独特の音を鳴らし、Dに襲いかかる。

 そしてDは再び、ラルフォンスの攻撃を喰らった。

 Dの垂らしていた刃が意味もなく、誰も居ない空間を斬っていた。


 背後でまた倒れるDを目にやるラルフォンス。

 一方的に攻め立てていたラルフォンスの息遣いは、段々と荒くなってきていた。


「クソ……」


 また自分に対峙しようとするDを見て、ラルフォンスが呟く。


「やぱ、思ったより早いんか……。惜しかったな」

「はぁ!? 惜しいだと!? 何処がだよ!!」


 そしてシーカー・ロープの鉤爪がDの体を捕える。


(……カドンッ!! やぞ、カドンッ!!)



 ラルフォンスが勢いよくDに迫ってくる。



「あの赤いの……って、いつからあんなになってた?」


 男がTrashとアカツキに声を掛けた。

 それを聞いて、二人もDを包む赤いオーラの変化に気付いた。


「色が、さっきと比べて全然濃くなってないか?」

「ってか、あんなにデカいってか。あんなに赤い靄みたいなんあったか?」


 そんなDは、今にもラルフォンスに打つかりそうになっていた。


 その刹那、周囲に「ドンッ!!」と。

 何か大きな音がした、それは打楽器の様な音でもなく。何かの鈍器を打った様な音でもなく。

 もっと身近な、人の鼓動の様な生身の音に感じた。

 同時に、Dを包んでいた赤いオーラが一気にDの体の中へと入っていく。

 いやーー

 それは「吸収されていく」と表現した方が、しっくり来た。

 オーラの全てがDに吸収されると、すぐにDの周りの空間が歪んだ様に見えた。

 そして、その現象の全てがラルフォンスの体がDに当たりそうになっていた瞬間に。

 一瞬にして起こっていた。


 その後の光景に息を飲む観客達。


「……何した? 今?」


 アカツキの隣に居る男は席から腰を上げ、驚いたまま固まっている。


「マジで……、訳分かんねぇ……」

「あんなん。うんまにバグやんけ」


 闘技場で倒れたままのラルフォンスを見て、Dが呟いた。


「正面があかんって、俺やない方もあかんねんな。やっぱ」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ