Episode 066【陽気な街とその市長と】
街を歩く空には、雲一つない晴れ晴れとした天気が続いていた。その空にあるのは唯一、暖かい日差しを降りそそぐ太陽だけであった。Trashとアカツキの二人が街へ聞き込みに行ってから、しばらくして。一人、空虚な世界で呆然としていたDであったが。それに我慢出来ず、宿を飛び出していた。要するに暇で暇で。ただ、ぼうっとしている事に飽きたのだった。
「ああ、めっちゃ日差しがあったかいわぁ」
そう言って、空を見上げる。
しばらく空を見つめていたDは視線を街に戻し、街の賑やかな雰囲気を感じていた。
「っほんまに、俺がじっとしとける訳ないやんけっ!! トラも無理言うたら、あかんわ」
そして街の中を散策し始めるD。
〈ログタウン〉の街の中は、見た目やお店の雰囲気が元の世界の様ではあったが。やはり、この世界にある独特の和やかな雰囲気も感じ取れた。そんな街の様子を見ながら、Dはどんどんと歩いていく。
「あいつら、別に俺置いてかんでもええのに。ほんまにっ!! 俺も混じって、話聞きに行こ」
そう言って、Trashとアカツキの二人を探し始めるD。
しばらく歩いていると、街の所々に木で出来た建設用の足場がある事にDは気付いた。
「なんや? 何か建てよんのか? それにしては何や変やなぁ?」
Dの言う通り、その足場は四方を囲う訳でもなく。一直線にあるものや、カーブを描いた様な物まであった。
その事にやけに気になり始めたDが、通り掛かる街の人に声を掛け始めた。Dの横を通り過ぎようとしていた中年の男が、Dに呼びかけられて立ち止まる。
「なあなあ? あれ、何しょん?」
そして足場を指差して、男に見せるD。
それを見て男がDに返事をした。
「あんた、ここは初めてか?」
「うん、昨日来たばっかやで」
Dの言葉を聞いて、納得した様子の男はDに話し出した。
「そうか。あれは祭りの準備をしている所なんだよ」
「祭り?」
「そうさ。この街で年に一回行われる祭りさ。てっきり、あんたもその祭りに出る為に此処へ来たのかと思ったよ」
「オイラが祭りに出る? どういうこっちゃ、それ?」
その言葉を聞いて、男が少し驚いた様子で聞き返してきた。
「なんだ、あんた。モンスタースレイヤーじゃないのか?」
「そやけど? それが、何か関係あんの?」
「この祭りはモンスタースレイヤーしか参加出来ないんだよ。というよりはモンスタースレイヤーしか参加しないと言った方が正しいか」
そう言って、男は笑った。
男の言葉を聞いても、未だに理解していないDが更に男に尋ねた。
「うんで?」
「兄ちゃん、あんた鈍いな」
「うん?」
「要するに腕試し大会みたいな祭りなのさ。此処にある足場は、それを催す為に色々作ってるところさ。祭りの日になれば、屋台とかも沢山並び始めるぞ」
「ほえぇ、でっかい祭りなんやなぁ」
「なんたって、一週間に渡って行われる祭りだからな」
「一週間っ!? 一週間も何すんの?」
「何って、色々に決まってるだろ」
「まじかぁ、すげぇなぁ」
「兄ちゃんも試しに出てみたらどうだ? 優勝したら、えらい賞金が貰えるぞ」
「まじでっ!?」
「優勝以外にも3位までは賞金が出るからな。どうだ? 兄ちゃん?」
やけに祭りを進める男に、冗談混じりでDが返した。
「なんや、やけに勧めてくるなぁ。おっちゃん、何か企んどるやろ?」
それを聞いた男がDに返してきた。
「いやぁ、この祭りは同時に賭け事も始まるからなぁ」
「賭け事?」
「そうさ。誰が優勝するかを賭けるんだよ」
「おっちゃんは、そっち目的か?」
「兄ちゃんなら、良い大穴になりそうな気がしたからなぁ」
「大穴て、せめて対抗とか言うてや」
「わはははっ!! そうだったな。すまねぇ、すまねぇ」
そう言って、Dと別れる男。
その男の背中を見てから、先程の足場に目を戻すD。
「祭りかぁ、ええなぁ。トラとアカツキにも教えたらな」
そしてDは、また二人を探しに歩き始めた。
ウィルヘルムがTrashとアカツキを睨みつける中。
ロビンと呼ばれた男は椅子の背もたれに背中を預け、ゆったりとした感じで椅子に座っていた。
しかし、そのロビンもまた視線をTrashとアカツキに送っていた。
そんな中、Trashがウィルヘルムとロビンに言葉を返した。
「お前ら、何やねん?」
いつものTrashの声とは違う雰囲気の声を聞いて、その事にアカツキがビクッとした。
そんなアカツキを余所に、ウィルヘルムが話を続ける。
「お前等、何者や? 何しにこの街に来たんじゃ?」
そう話すウィルヘルムの目は、Trashの眼を見たまま離そうとはしなかった。
「何か勘違いしてへんこ? お前ら? 俺らは昨日たまたま、ここ見付けて寄っただけじゃ」
そうTrashが返すと、しばらく沈黙が続いた。
するとウィルヘルムの横に座っていたロビンが、ウィルヘルムに声を掛けた。
「嘘は付いてへんみたいやわ」
その言葉にロビンの方を向くウィルヘルム。
「ほんまか?」
「ほんまや」
「そないか」
「そないや」
二人が話し終わるとすぐに、ウィルヘルムの顔がもの凄く赤くなり始めた。
「うわぁ、俺めっちゃ恥ずいやん!!」
「お前、めっちゃ恥ずいな!!」
急に二人の態度が一変し、状況が読み込めないでいるTrashとアカツキの二人。
そんな二人にウィルヘルムが声を掛けてきた。
「いやぁ。マジ、すまんかった。許したってくれ!!」
そう言って、Trashとアカツキに頭を下げるウィルヘルム。
それを見てアカツキが、ウィルヘルムとロビンの二人に声を掛けた。
「一体、何だったんだ? さっきのは?」
その言葉にロビンが答える。
「俺達や、いちお此処を仕切っとる奴等の一人やねん」
その言葉にTrashが喰いつく。
「お前らがぁ!?」
「そや」
そう言って、ウィルヘルムの方を見るロビン。
「お前、いつまで頭下げとんねん!? いちお、お前がベクター不在時の代役やろが!!」
それを聞いて、申し訳なさそうな顔でウィルヘルムが頭を上げてきた。
「自分ら、ほんまにすまんかったな。堪忍や」
さっきまでとは感じが違うウィルヘルムに驚きながら、Trashはウィルヘルム達に質問をした。
「そのベクターって、誰なんや?」
Trashの問いに答えるウィルヘルム。
「この街の市長や」




