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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
66/76

Episode 066【陽気な街とその市長と】

 街を歩く空には、雲一つない晴れ晴れとした天気が続いていた。その空にあるのは唯一、暖かい日差しを降りそそぐ太陽だけであった。Trashとアカツキの二人が街へ聞き込みに行ってから、しばらくして。一人、空虚な世界で呆然としていたDであったが。それに我慢出来ず、宿を飛び出していた。要するに暇で暇で。ただ、ぼうっとしている事に飽きたのだった。


「ああ、めっちゃ日差しがあったかいわぁ」


 そう言って、空を見上げる。

 しばらく空を見つめていたDは視線を街に戻し、街の賑やかな雰囲気を感じていた。


「っほんまに、俺がじっとしとける訳ないやんけっ!! トラも無理言うたら、あかんわ」


 そして街の中を散策し始めるD。

 〈ログタウン〉の街の中は、見た目やお店の雰囲気が元の世界の様ではあったが。やはり、この世界にある独特の和やかな雰囲気も感じ取れた。そんな街の様子を見ながら、Dはどんどんと歩いていく。


「あいつら、別に俺置いてかんでもええのに。ほんまにっ!! 俺も混じって、話聞きに行こ」


 そう言って、Trashとアカツキの二人を探し始めるD。

 しばらく歩いていると、街の所々に木で出来た建設用の足場がある事にDは気付いた。


「なんや? 何か建てよんのか? それにしては何や変やなぁ?」


 Dの言う通り、その足場は四方を囲う訳でもなく。一直線にあるものや、カーブを描いた様な物まであった。

 その事にやけに気になり始めたDが、通り掛かる街の人に声を掛け始めた。Dの横を通り過ぎようとしていた中年の男が、Dに呼びかけられて立ち止まる。


「なあなあ? あれ、何しょん?」


 そして足場を指差して、男に見せるD。

 それを見て男がDに返事をした。


「あんた、ここは初めてか?」

「うん、昨日来たばっかやで」


 Dの言葉を聞いて、納得した様子の男はDに話し出した。


「そうか。あれは祭りの準備をしている所なんだよ」

「祭り?」

「そうさ。この街で年に一回行われる祭りさ。てっきり、あんたもその祭りに出る為に此処へ来たのかと思ったよ」

「オイラが祭りに出る? どういうこっちゃ、それ?」


 その言葉を聞いて、男が少し驚いた様子で聞き返してきた。


「なんだ、あんた。モンスタースレイヤーじゃないのか?」

「そやけど? それが、何か関係あんの?」

「この祭りはモンスタースレイヤーしか参加出来ないんだよ。というよりはモンスタースレイヤーしか参加しないと言った方が正しいか」


 そう言って、男は笑った。

 男の言葉を聞いても、未だに理解していないDが更に男に尋ねた。


「うんで?」

「兄ちゃん、あんた鈍いな」

「うん?」

「要するに腕試し大会みたいな祭りなのさ。此処にある足場は、それを催す為に色々作ってるところさ。祭りの日になれば、屋台とかも沢山並び始めるぞ」

「ほえぇ、でっかい祭りなんやなぁ」

「なんたって、一週間に渡って行われる祭りだからな」

「一週間っ!? 一週間も何すんの?」

「何って、色々に決まってるだろ」

「まじかぁ、すげぇなぁ」

「兄ちゃんも試しに出てみたらどうだ? 優勝したら、えらい賞金が貰えるぞ」

「まじでっ!?」

「優勝以外にも3位までは賞金が出るからな。どうだ? 兄ちゃん?」


 やけに祭りを進める男に、冗談混じりでDが返した。


「なんや、やけに勧めてくるなぁ。おっちゃん、何か企んどるやろ?」


 それを聞いた男がDに返してきた。


「いやぁ、この祭りは同時に賭け事も始まるからなぁ」

「賭け事?」

「そうさ。誰が優勝するかを賭けるんだよ」

「おっちゃんは、そっち目的か?」

「兄ちゃんなら、良い大穴になりそうな気がしたからなぁ」

「大穴て、せめて対抗とか言うてや」

「わはははっ!! そうだったな。すまねぇ、すまねぇ」


 そう言って、Dと別れる男。

 その男の背中を見てから、先程の足場に目を戻すD。


「祭りかぁ、ええなぁ。トラとアカツキにも教えたらな」


 そしてDは、また二人を探しに歩き始めた。




 ウィルヘルムがTrashとアカツキを睨みつける中。

 ロビンと呼ばれた男は椅子の背もたれに背中を預け、ゆったりとした感じで椅子に座っていた。

 しかし、そのロビンもまた視線をTrashとアカツキに送っていた。

 そんな中、Trashがウィルヘルムとロビンに言葉を返した。


「お前ら、何やねん?」


 いつものTrashの声とは違う雰囲気の声を聞いて、その事にアカツキがビクッとした。

 そんなアカツキを余所に、ウィルヘルムが話を続ける。


「お前等、何者や? 何しにこの街に来たんじゃ?」


 そう話すウィルヘルムの目は、Trashの眼を見たまま離そうとはしなかった。


「何か勘違いしてへんこ? お前ら? 俺らは昨日たまたま、ここ見付けて寄っただけじゃ」


 そうTrashが返すと、しばらく沈黙が続いた。

 するとウィルヘルムの横に座っていたロビンが、ウィルヘルムに声を掛けた。


「嘘は付いてへんみたいやわ」


 その言葉にロビンの方を向くウィルヘルム。


「ほんまか?」

「ほんまや」

「そないか」

「そないや」


 二人が話し終わるとすぐに、ウィルヘルムの顔がもの凄く赤くなり始めた。


「うわぁ、俺めっちゃ恥ずいやん!!」

「お前、めっちゃ恥ずいな!!」


 急に二人の態度が一変し、状況が読み込めないでいるTrashとアカツキの二人。

 そんな二人にウィルヘルムが声を掛けてきた。


「いやぁ。マジ、すまんかった。許したってくれ!!」


 そう言って、Trashとアカツキに頭を下げるウィルヘルム。

 それを見てアカツキが、ウィルヘルムとロビンの二人に声を掛けた。


「一体、何だったんだ? さっきのは?」


 その言葉にロビンが答える。


「俺達や、いちお此処を仕切っとる奴等の一人やねん」


 その言葉にTrashが喰いつく。


「お前らがぁ!?」

「そや」


 そう言って、ウィルヘルムの方を見るロビン。


「お前、いつまで頭下げとんねん!? いちお、お前がベクター不在時の代役やろが!!」


 それを聞いて、申し訳なさそうな顔でウィルヘルムが頭を上げてきた。


「自分ら、ほんまにすまんかったな。堪忍や」


 さっきまでとは感じが違うウィルヘルムに驚きながら、Trashはウィルヘルム達に質問をした。


「そのベクターって、誰なんや?」


 Trashの問いに答えるウィルヘルム。


「この街の市長や」






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