Episode 064【バカと電話と】
〈ログタウン〉の街の酒場〈居酒屋 和牛八角〉で、Dの戻りを待っているTrashとアカツキ。
そんな二人は一通り食事を済まし、くつろいでいた。
「Dの奴、遅くないか?」
「遅いって事は、それなりに情報収集しとるって事やろ? たぶん」
「なら、良いけど。あいつ、迷ってねぇよな?」
「……知らんっ!!」
「あっ!! 今、お前。"あり得る"って思っただろ?」
「知らんっ!! こんなトコで迷うような奴、俺は知り合いに持った記憶が無いっ!!」
「あいつ、戻ってこれるのかぁ?」
「知らんっ!!」
二人が、そんな話をしている所に。
ちょうどDが部屋に戻ってきた。
「あぁ〜、すっきりしたわぁ」
Dの言葉に不思議そうな顔をするアカツキが話し掛けてきた。
「すっきりしたって、何の事だ?」
「いや、トイレ行ってきてや。すっきりしたわぁ」
「おい!! Dぃ!! お前、クソしてきただけちゃうやろの?」
「何言うてんねん! ションベンだけじゃい!!」
「ションベンだけで、どんだけ時間食うとんねん!?」
「あほう、ションベンだけちゃうわい!! ちゃんと話しも聞いてきたっちゅうねん!!」
その言葉を聞いて、安堵するアカツキ。
「あぁ。それ聞いて、安心した」
「何、ほっとしとんねん!? そこまで、アホちゃうぞ。俺は」
「いや、お前は"それ程"や。ほんで、どやってん?」
Trashの言葉を聞いて、Dはカピパラから聞いた話を二人にし始めた。
Dの話を聞いていたTrashが、ある言葉に反応した。
「戦争?」
「おう。大きな戦争があったって、カピは言うとったぞ」
「おい? それってや、イディアの大戦争の事ちゃうんけ?」
Trashの言葉に、思い出したようにDが返事した。
「ああ! あれの事か! 何や、どっかで聞いたような気がする思たわけや」
「お前、アホこっ!?」
「すまん、すまん」
二人の話を聞いて、アカツキが問い掛けてきた。
「おい、何なんだ? そのイディアの大戦争って?」
「ああ、アカツキは知らんかったんか」
「何が "知らんかったんか" や! お前はわへとったやんけ」
そして、Trashがアカツキに〈イディアの大戦争〉の事を話し始めた。
Trashの話を聞くにつれ、顔が強張っていくアカツキ。
「テスト・ユーザーが戦争を? それにモンスターを造ってたって、マジなのかよ!?」
「ほんまや。お前もアシアナで、"あれ"見たやろ」
Trashの言う「あれ」という言葉に、思い出すアカツキ。
「ロンデウスか」
「せや。狭間の世界の村で出会うた人の話でもあったやろ?」
「魔獣騎兵……、古代の人間が造ったってのだろ」
「せや」
「じゃあ、本当に"本当の事"なんだな」
「せや……」
二人の話が一区切りしたのを見て、Dが話の続きをしだした。
「ほんで。カピが言うには、その大戦争の後にここが出来たって事らしいわ。経緯は知らんけど」
Dの言葉を聞いて、引っかかるTrash。
「経緯は知らんって、そこ重要やろ!? お前、アホこっ!?」
「しゃあないやんけ、カピも詳しく聞かされてへん言うとったんやし」
「おい? D? もしかしてだけどな? そのカピパラって人としか話し聞いてきてないのか?」
「せや」
アカツキの言葉に、当たり前だという風に答えるD。
その返事を聞いて、二人が肩を落とす。
「やっぱ、アホやわぁ〜」
「Dぃ〜」
残念そうにする二人を見て、Dがカピパラとの話で忘れていた事を二人に話しした。
「あ、そういうたら。ここってや、ノイエグラーデって言う国の領地らしいんやけど。何でか自治権があるっぽいぞ」
「どういう事や?」
「さぁ?」
「"さぁ?"って何だよ?」
「いや。カピの話聞いとったら、頭ごっちゃしてきてや。それで話やめてもろてん」
Dのその言葉を聞いて、再び残念そうにし畳の床に倒れこむ二人。
「マジかぁ……」
「Dぃ……」
そんな二人を見て、Dが申し訳なさそうに謝った。
「いや……。マジで、すまん」
Dの話を聞いてから、しばらくして。
Trashとアカツキが話をしていた。そして、その横で一人食事をするD。
「時間も時間やし、今日は宿行って休むか」
「そうだな」
「そんで明日もっかい、俺らで話聞いて周ろ」
「Dに頼んでも、あれっだったしな」
「まさか、ここでアホにやられるとは俺も思わへんだわ」
「まぁ、仕方ないだろ。いちお、それなりには聞いて来てくれたんだし」
「まぁ、せやの」
そこに食事を済ませたDが何気なく呟いた。
「にしても。カピ、大丈夫かなぁ?」
「大丈夫って何がだよ?」
「何か、さらに特訓されるっぽかってん」
「その人のフレンドにか?」
「そそ」
「うんな事、分かる訳ないやろ? フレにも登録してへん人やのに」
「ん? フレ登録ならしたぞ、カピに言われて」
Dの言葉を聞いて、喰いつくTrashとアカツキ。
「はぁ!? 何で、それ先言わんねん!?」
「本当なのか!? それ!?」
二人が何故、そんなに驚いているか分からないでいるD。
「どないしたんや? 急に?」
「どないしたもあるかいっ!!」
「ボイチャが出来るじゃねぇかよ!! その人と!!」
その言葉を聞いてから数秒して、Dが二人の意図を理解した。
「ああ!!」
「"ああ" ちゃうわいっ!!」
「Dぃ。バカなんだか、バカじゃないのかはっきりしてくれよぉ」
「すまん、すまん」
そしてDはフレンドリストを開き出し、カピパラの文字を探し始めた。
「あった、あった」
「ええから、早よかけえぇ」
「あいあい」
目の前のウィンドウからカピパラの欄を押し、ボイスチャットをするD。
Dの耳に電話の呼び出し音と似た音が聞こえる。
ーープルルル、プルルル
カピパラの耳にボイスチャットが掛かってきた音が聞こえる。
しかしカピパラは、今それ所ではなかった。
目の前に見える〈ボイスチャット「D」〉の文字を見ながら、カピパラが叫ぶ。
「Dぃい!! 助けてぇえ!!」
それを聞いて、ハンターがカピパラに声を掛けた。
「カピ、何言ってんだ? さっさとやれよ」
それにイヴが続く。
「カピたん。早くしないと、やられちゃうよ。ほら、早く!!」
そんな三人の前には、大きなモンスターの姿が見える。
今にも襲い掛かってきそうなモンスターを見て、カピパラがもう一度叫んだ。
「いやぁあああああ!!」




