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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
62/76

Episode 062【女性店員とナンパと】

 女性店員に案内され、お店の奥へと進んで行くアカツキ達。その中は現代のそれと全く同じ様な造りをしており、一つ一つに部屋が区切られて並んでいた。


「マジで、懐かしいなぁ」

「本当の世界も、こんな感じなんだな?」

「そやぞぉ。あっち戻っても、もっかい20歳のお祝いしよかぁ」

「良いのか? サンキュー」

「そういうたら、お前何処にすんどんや?」

「教えてなかったか、えっとなーー」



(こいつら、マジで何も気付いてへんのこ? 気付いとっての、あれなんか? ドッキリ的なもんなんか? ……それは、ないかぁ)


 先を歩く二人を見ながら、肩を落として歩くTrash。



 しばらく歩いていると、三人を案内していた女性店員が立ち止まり。三人の方に向きを変え、話し掛けてきた。


「こちらをどうぞ」


 そう言って、右手にある空室の部屋を示した。案内されるままに、靴を脱ぎ部屋に上がる三人。

 三人が座ったのを確認して、また女性店員が話し掛けてきた。


「ご注文がお決まりになりましたら、そちらのベルでお呼びください」


 そう言って、女性店員は立ち去って行った。

 それを見送ってから、女性店員が言ったベルをまじまじと見るD。


「これってや、ピンポーンの代わりやろな? ピンポーンの?」

「だろうな」


 そのDが言う "ピンポーン" の代わりと呼ばれたベルは。映画やドラマなどで貴族などの裕福な者が、執事や召使いなどを呼ぶ時に使うベルと同じ形をしていた。


「にしても、何でここって。こんなに今風なんや?」

「だよなぁ?」


 そんな二人を見ていたTrashが堪らず声を掛けてきた。


「お前ら、ええ加減気付けぇいうねん!!」

「何やねん? いきなし?」

「どうしたんだよ? 一体?」

「どうしたも、いきなしもあるかいっ!! もう結構前から、似た様なクダり繰り返してきとうやろっ!?」

「そうかぁ?」

「だったっけかな?」

「繰り返してきとんじゃい!!」

「ほんで、それが何やねん?」

「そうだぜ。どうしたっていうんだ?」

「ああぁ、マジで……。俺もどっちかって言うたら、くだらん事言いまくる方やねんぞ!? いつまで、アホの面倒見やなあかんねん!!」

「それは、すまんとしか言えへんわ。申し訳ない」

「Dは良いけど。俺はバカじゃねぇって言ってるだろ!!」

「お前も、アホじゃあ!! ええ加減気付け、アカツキ!! 20歳を境に、そこ悟っとけ!!」

「ほんで、お前は何が言いたいねん? トラ?」


 全く気付いてない眼で、Trashを見つめるDの姿を見て。諦めた様にTrashが話し出した。


「ったく、ほんまに。アホなお前らに、この俺様がわざわざ教えといたろぉ」

「それで、一体何だっていうんだよ?

「この街はのぉ、俺らプレイヤーの街や」


『プレイヤーの街?』


 呆気に取られるアカツキとDの二人。


「俺もはっきり言えへんけど。ほぼ間違いなく、そうやろ」

「ちょっと待て、トラ。プレイヤーの街って、どういう事なんだ?」

「そのまんまじゃい」

「まんまって、何やんねん?」

「まんま言うたら、まんまじゃい。まだ分からへんのこ? どういう経緯か分からんけど、テスト・ユーザーの誰かしらが造った街なんやろ。ここは」

「はぁ!? そんじゃあ、俺らみたいな奴が、こんな街造ったって事なんか!?」

「やから、そや言うとんやんけ。アホやのぉ」

「嘘だろ!? こんな街、一人で造ったって言うのかよ?」

「ああ……。もしかして、お前ら。"一人で造った"って思っとんのこ? てか、そこで驚いとんのこ?」

「そうちゃうんこ?」

「違うのか?」

「普通に考えて、一人でこんな街造れる訳ないやろが!! ってか、そこちゃうからの!! 気になるとこっ!!」

「何や、ちゃうんこ」

「それ以外の何処に驚けっていうんだよ?」

「マジか? お前ら、マジか?」

「なんか変こ?」

「変過ぎじゃい!! よう考ええよ、ゲームちゃうねんぞ? ゲームみたいにコントローラー、ポチくりしとんとちゃうねんぞ? 分かるこぉ!?」


 Trashの言葉を聞いて、二人は静かになり考え出した。

 しばらく静寂が続いた後、二人は同時にTrashの方を見直した。


「マジでかっ!??」

「マジかよっ!??」


 ようやく。本当にようやく、二人が自分の思っている所まで来たのを確認して、Trashは一つ溜息を吐いた。


「ええ情報って、そういう事かぁ!!」

「これって、かなり良い事なんじゃねぇの!?」

「やから、情報収集が目的言うたやろがい」

「アカツキには悪りぃけど。"とりあえず、生" は、とりあえず置いとかんとな」

「全然うまぁないぞ」

「っだな。とりあえずはとりあえずで良いだろ」

「アカツキ、わっけ分からんぞ」

「どっから聞きに行く? アカツキ?」

「とりあえず、とりあえずだろ!!」

「だな!!」

「とりあえずしか言うてへんのに、何で分かんねん」

「ほんなら、行くか。アカツキ、トラ!」

「おう!」


 そしてDとアカツキが立ち上がろうとするのを、座ったまま眺めるTrash。


『……』



「って、ここ個室形式やんけぇ……」

「どうすんだよぉ……」


「おっせぇ!! 何が "とりあえず、とりあえずだろ!!" やっ!!」


 Trashの言葉を聞いて、もう一度座り直す二人。


「どうしたら良いんだよ、ほんとに」

「ここ。元の世界みたいになっとうから、いつもみたいに気軽に話し掛けずらいやろ?」

「だよなぁ」

「ほんで、そこをどうっすかや」

「雰囲気的に難しそうだよなぁ」

「マジで、マジでーー。 って言いたいとこやねんけど」

「どうした? トラ?」


 アカツキがTrashの方を見ると、TrashはDの方を向いてニヤニヤしていた。

 そんなDは二人の会話に混じらず、メニュー表を見始めていた。


「おい、D」

「なんや?」

「お前、個室やっても行けるやろ?」


 その言葉に少し驚くアカツキ。


「そうなのか!?」


 アカツキの言葉を聞いて、何かを思い出すように目を上にやり黙り始めるD。

 しばらくすると、Dが二人に答え出した。


「個室形式ってのが分かった時は、その事にビックリしたけど。別に話しに行けるな」


 その言葉に呆気に取られるアカツキ。


「お前……、バカなのか?」

「誰がアホじゃい!! アホなんは、ようわぁっとら!!」


 そんなDを見て、Trashがアカツキに話し始めた。


「こいつ、こんなんやねん。あっちの世界でも一緒にファミレス行っとったら、いきなし店員ナンパし始めるし」

「マジかよっ!?」

「はぁ!? あれ、ナンパちゃう言うとるやろ!! 笑顔が良かったから、話し掛けただけやんけ!! 誰でもええって訳ちゃうわい!!」

「それを世間ではナンパや言うんや」

「D? 本当なのか?」

「気になったら声かけるやろ? 普通」

「いや、それはねぇわ」

「マジでかっ!?」

「ほらの? 分かったんやったら、さっさっと行ってもうたれ!!」

「マジでか? マジでか……?」


 そう言って、Dが部屋を出て行った。






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