Episode 062【女性店員とナンパと】
女性店員に案内され、お店の奥へと進んで行くアカツキ達。その中は現代のそれと全く同じ様な造りをしており、一つ一つに部屋が区切られて並んでいた。
「マジで、懐かしいなぁ」
「本当の世界も、こんな感じなんだな?」
「そやぞぉ。あっち戻っても、もっかい20歳のお祝いしよかぁ」
「良いのか? サンキュー」
「そういうたら、お前何処にすんどんや?」
「教えてなかったか、えっとなーー」
(こいつら、マジで何も気付いてへんのこ? 気付いとっての、あれなんか? ドッキリ的なもんなんか? ……それは、ないかぁ)
先を歩く二人を見ながら、肩を落として歩くTrash。
しばらく歩いていると、三人を案内していた女性店員が立ち止まり。三人の方に向きを変え、話し掛けてきた。
「こちらをどうぞ」
そう言って、右手にある空室の部屋を示した。案内されるままに、靴を脱ぎ部屋に上がる三人。
三人が座ったのを確認して、また女性店員が話し掛けてきた。
「ご注文がお決まりになりましたら、そちらのベルでお呼びください」
そう言って、女性店員は立ち去って行った。
それを見送ってから、女性店員が言ったベルをまじまじと見るD。
「これってや、ピンポーンの代わりやろな? ピンポーンの?」
「だろうな」
そのDが言う "ピンポーン" の代わりと呼ばれたベルは。映画やドラマなどで貴族などの裕福な者が、執事や召使いなどを呼ぶ時に使うベルと同じ形をしていた。
「にしても、何でここって。こんなに今風なんや?」
「だよなぁ?」
そんな二人を見ていたTrashが堪らず声を掛けてきた。
「お前ら、ええ加減気付けぇいうねん!!」
「何やねん? いきなし?」
「どうしたんだよ? 一体?」
「どうしたも、いきなしもあるかいっ!! もう結構前から、似た様なクダり繰り返してきとうやろっ!?」
「そうかぁ?」
「だったっけかな?」
「繰り返してきとんじゃい!!」
「ほんで、それが何やねん?」
「そうだぜ。どうしたっていうんだ?」
「ああぁ、マジで……。俺もどっちかって言うたら、くだらん事言いまくる方やねんぞ!? いつまで、アホの面倒見やなあかんねん!!」
「それは、すまんとしか言えへんわ。申し訳ない」
「Dは良いけど。俺はバカじゃねぇって言ってるだろ!!」
「お前も、アホじゃあ!! ええ加減気付け、アカツキ!! 20歳を境に、そこ悟っとけ!!」
「ほんで、お前は何が言いたいねん? トラ?」
全く気付いてない眼で、Trashを見つめるDの姿を見て。諦めた様にTrashが話し出した。
「ったく、ほんまに。アホなお前らに、この俺様がわざわざ教えといたろぉ」
「それで、一体何だっていうんだよ?
「この街はのぉ、俺らプレイヤーの街や」
『プレイヤーの街?』
呆気に取られるアカツキとDの二人。
「俺もはっきり言えへんけど。ほぼ間違いなく、そうやろ」
「ちょっと待て、トラ。プレイヤーの街って、どういう事なんだ?」
「そのまんまじゃい」
「まんまって、何やんねん?」
「まんま言うたら、まんまじゃい。まだ分からへんのこ? どういう経緯か分からんけど、テスト・ユーザーの誰かしらが造った街なんやろ。ここは」
「はぁ!? そんじゃあ、俺らみたいな奴が、こんな街造ったって事なんか!?」
「やから、そや言うとんやんけ。アホやのぉ」
「嘘だろ!? こんな街、一人で造ったって言うのかよ?」
「ああ……。もしかして、お前ら。"一人で造った"って思っとんのこ? てか、そこで驚いとんのこ?」
「そうちゃうんこ?」
「違うのか?」
「普通に考えて、一人でこんな街造れる訳ないやろが!! ってか、そこちゃうからの!! 気になるとこっ!!」
「何や、ちゃうんこ」
「それ以外の何処に驚けっていうんだよ?」
「マジか? お前ら、マジか?」
「なんか変こ?」
「変過ぎじゃい!! よう考ええよ、ゲームちゃうねんぞ? ゲームみたいにコントローラー、ポチくりしとんとちゃうねんぞ? 分かるこぉ!?」
Trashの言葉を聞いて、二人は静かになり考え出した。
しばらく静寂が続いた後、二人は同時にTrashの方を見直した。
「マジでかっ!??」
「マジかよっ!??」
ようやく。本当にようやく、二人が自分の思っている所まで来たのを確認して、Trashは一つ溜息を吐いた。
「ええ情報って、そういう事かぁ!!」
「これって、かなり良い事なんじゃねぇの!?」
「やから、情報収集が目的言うたやろがい」
「アカツキには悪りぃけど。"とりあえず、生" は、とりあえず置いとかんとな」
「全然うまぁないぞ」
「っだな。とりあえずはとりあえずで良いだろ」
「アカツキ、わっけ分からんぞ」
「どっから聞きに行く? アカツキ?」
「とりあえず、とりあえずだろ!!」
「だな!!」
「とりあえずしか言うてへんのに、何で分かんねん」
「ほんなら、行くか。アカツキ、トラ!」
「おう!」
そしてDとアカツキが立ち上がろうとするのを、座ったまま眺めるTrash。
『……』
「って、ここ個室形式やんけぇ……」
「どうすんだよぉ……」
「おっせぇ!! 何が "とりあえず、とりあえずだろ!!" やっ!!」
Trashの言葉を聞いて、もう一度座り直す二人。
「どうしたら良いんだよ、ほんとに」
「ここ。元の世界みたいになっとうから、いつもみたいに気軽に話し掛けずらいやろ?」
「だよなぁ」
「ほんで、そこをどうっすかや」
「雰囲気的に難しそうだよなぁ」
「マジで、マジでーー。 って言いたいとこやねんけど」
「どうした? トラ?」
アカツキがTrashの方を見ると、TrashはDの方を向いてニヤニヤしていた。
そんなDは二人の会話に混じらず、メニュー表を見始めていた。
「おい、D」
「なんや?」
「お前、個室やっても行けるやろ?」
その言葉に少し驚くアカツキ。
「そうなのか!?」
アカツキの言葉を聞いて、何かを思い出すように目を上にやり黙り始めるD。
しばらくすると、Dが二人に答え出した。
「個室形式ってのが分かった時は、その事にビックリしたけど。別に話しに行けるな」
その言葉に呆気に取られるアカツキ。
「お前……、バカなのか?」
「誰がアホじゃい!! アホなんは、ようわぁっとら!!」
そんなDを見て、Trashがアカツキに話し始めた。
「こいつ、こんなんやねん。あっちの世界でも一緒にファミレス行っとったら、いきなし店員ナンパし始めるし」
「マジかよっ!?」
「はぁ!? あれ、ナンパちゃう言うとるやろ!! 笑顔が良かったから、話し掛けただけやんけ!! 誰でもええって訳ちゃうわい!!」
「それを世間ではナンパや言うんや」
「D? 本当なのか?」
「気になったら声かけるやろ? 普通」
「いや、それはねぇわ」
「マジでかっ!?」
「ほらの? 分かったんやったら、さっさっと行ってもうたれ!!」
「マジでか? マジでか……?」
そう言って、Dが部屋を出て行った。




