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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
60/76

Episode 060【ホテルと居酒屋と】

 風を切りながら、馬を走らせる三人。その先頭を走っていた男が草原にある丘で馬を止め、後ろに居る男達に分かるように前方を指し示した。男が指し示す先に目をやり、不思議そうな顔をする男達の姿がそこにはあった。


 「のぉ? あったやろ? 街」


 Dが後から来る二人に声を掛ける。


「あれ? 何でだ?」


 前方にある街を見て、アカツキがそれに答えた。


「どういうこっちゃ?」


 そう言って、鞄から地図を取り出し、確認し始めるTrash。

 その間、Dとアカツキは街を見ながら話をしていた。


「のぉ、アカツキ。あの街、今までと何か雰囲気ちゃうの?」

「そうだな。何となく今っぽいよな」


 アカツキの言った〈今っぽい〉とは、前方に見える街並みが何処となく元に居た世界。つまり現代の世界の様な感じがしたからであった。


 「あそこ行ってみようや」


 Dが興味津々で二人に声を掛ける。


 「ちょう待て、今地図見よるんやさかい」


 落ち着けと言わんばかりに、TrashがDに答えた。

 そんなTrashにアカツキが近寄って行き、声を掛ける。


「どうだ、トラ? 街あったか?」


 その質問に、釈然としない顔をするTrash。


「やっぱ、地図には載ってへんのぉ……。何でなんや?」


 それを聞いて、地図を覗き込むアカツキ。


「ほんとにねぇな。どうなってんだ?」


 そんな不思議がる二人を余所に、Dがまた声を掛けてきた。


「なぁ、あそこ行ってみようや。行ったら何か分かるかもしれへんやろ?」


 そんなDの目はキラキラと輝いていた。

 それを見て、Trashがアカツキに話す。


「うわぁ……。もう、めっちゃアホ満載の顔やんけ……。女はこんなん見て、可愛い言うたりするから分からんわ……」

「だな……。Dの場合、変に見た目良いから余計にな。話ししたら、ただの馬鹿しか残んねぇのに……」


 そして二人は今まで訪れた街を思い出していた。そこでは何故だかモテるDの印象しか残っていなかった。


「こんなアホのどこがええねん、ほんま」

「そう、そう」


 二人が話していると、返事を待ちきれずに居たDが近寄ってきた。


「おい、聞いとんのこぉ? あそこ行ってみようや、面白そうやんけ」

「お前な、D。少しは怪しいとか思わんのこ?」

「何がぁ?」

「地図に、あっこの街載ってへんねんぞ? 分かるこ? 何かあるかもしれへんって思うやろ、普通」

「思わんねんから、しゃあないやろぉ」

「ったく、お前はアホなんか? ええ? いや、アホなんは知っとるわい。重々わぁっとるわ。んでもな、何処までアホなんじゃい!! ほんまっ!!」

「うるさいのぉ、俺も何処までアホなんか知っとるわけないやろがぁ」

「ああぁ……、アカツキ。あかんわ、こいつ」

「D。トラが言いたいのは、何があるか分からないから警戒しろよって事だ」

「ああ!! なるほど!! オッケー」


 そう言って、Dは馬を走らせ街に向かって行った。

 その背中を見ながら、アカツキがTrashに声を掛ける。


「お前、ほんと苦労してるよな……」

「いやっ!! もう、マジで!! しんどいわぁ……」


 そして肩を落としたTrashがDの後を追い始める。

 その背中を見て、アカツキも後を追った。




 三人が街の入り口まで来ると、そこには大きな門があり。門の上の方に街の名前が書いてあった。


「ログタウン?」


 街の名前を見る、アカツキ。


「何か、今までとはちゃう感じの名前やな」


 アカツキと同じ様に、街の名前を見るD。


「ってか、タウンって。今まで、そんなん無かったやろ?」


 誰に突っ込むでもなく、Trashが話した。

 そして、そんな三人は門から見える街の景色に目をやった。そこには門から一直線に大通りが伸びており、左右にはそれぞれ建物が立ち並び。ある一定の間隔で左右に伸びる通りもあった。一見、普通の街と同じ様な感じではあったが。三人には何故だが違和感を覚えていた。


「遠くで見た時は、現代っぽい感じやってんけど。近くで見たら、そうでもないなぁ」

「それでも何か変な感じがしねぇか?」

「する、する。何や違和感の様な感じがするわ」


 Dとアカツキが話しているのを聞きながら、Trashは今感じている違和感の正体を探そうと街を注意深く見ていた。


「あ、俺分かったわ。何で変な感じするんか」

「えっ!? マジこ!? 何処が変なんや?」

「違和感てか、逆に久々過ぎての違和感って感じやな」


 Dにもったいつける様に話すTrash。


「何やねん!? 早よ言うてくれや」


 そんなDを見て、笑いながらTrashが二人に話し出した。


「お前ら、街にある店の看板見てみぃ。懐かしいぞぉ」


 そう言われて、アカツキとDが再度街に目をやった。するとそこには〈居酒屋 和牛八角〉や〈HOTEL ラポート〉など、至る所の看板が現代にある様な名前で書かれていたのだった。そして今まで見てきた街や村にある様な看板ではなく、看板自体も現代のそれを彷彿させる様な形をしていた。


「何や、これ?」

「一体、どうなってるんだ?」

「看板だけちゃうぞ。見てみぃ、あそこ。道路標識みたいなんまであっぞ」


 そう言われて、Trashが見ている先の方に目をやる二人。

 そこには本当に現代にある道路標識の様な物が立ってあり、先を進むと何処に行くか書かれてあった。


「何じゃ、あれっ!?」

「普通に標識じゃねぇか」

「俺らが感じとった違和感は、これやったんやな。元の世界やったら何でもない事やけど、変にここに慣れてもうとるのもあるから。しっくり来ん感じがしたんやろな」

「ああ、なるほどなぁ」

「うんでもや、トラ。これ、どういう事なんや?」

「まぁ、予想外過ぎたけど。もしかしたら、ここでええ情報が手に入るかもしれへんぞ」

「どういうこっちゃ、それ?」


 Trashの言葉の意味が分からない二人が不思議そうにするなか。

 Trashだけは何かを確信した表情で〈ログタウン〉を見つめていた。






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