Episode 058【赤旗と紅月と】
〈砂漠の宮殿イシュバーン〉から〈アシアナ〉に戻ってきたTrashとDの二人は今、セトルの自宅で以前の様にソファに座りセトルと対じして居た。
「それで、どうでしたか? やはり……?」
セトルが恐る恐る、TrashとDの二人に言葉を掛ける。
それを聞いてTrashは席を立ち、セトルに返事をした。
「その前に、ある人を紹介するわ」
そう言って、建物から出て行くTrash。
それを不思議そうに聞いていたセトルがDに声を掛けた。
「一体、誰をですか?」
「ああ。ここの村の人が見たっていう、人物やで」
Dの言葉を聞いて、びっくりするセトル。
「だ、大丈夫なんですか!?」
「だいじょー、だいじょー」
呑気に答えるDに対して、不安なままのセトル。
すると、そこにTrashが戻ってきた。その隣には、厳格そうなローブを頭から纏った人物の姿もあった。それを見たセトルがTrashに声を掛けた。
「村の者が目撃したというのが、その方だったんですね」
セトルの言葉にTrashが返す。
「ああ、Dから聞いたん? そそ。目撃されたんは、この人やで」
「それで、その方は一体?」
「神聖ザイラーの人やで」
「!? 今、何とおっしゃいました!?」
「神聖ザイラーって言うたんや」
「では、その方は!?」
「さすが、セトルさん。察しが早いな。そういう事やねん」
「では、やはり彼処に何かあったのですね?」
「まぁ、とりあえず順序立って話してこか」
そう言って、Trashとローブを纏った人物がソファに座った。
その隣でDが赤色の旗の様な物を振っていた。
セトルはDの事も気にかけずにTrashの話を待っていた。
その様子に気付いてか、Trashが話始めた。
「とりあえず、俺らはあれから直ぐに洞窟に向かったんや。すると中はモンスターでごった返しとった。セトルさんから聞いた通り、あの曇り雲はグシュタポと関係しとったわ」
「では、黄泉の王が復活しようとしていたのですか?」
「いや、ちゃうかった」
「それは、どう言う事ですか?」
「グシュタポは、まだ力が完全に戻ってへんみたいで。そこに居ったんは、グシュタポの化身やった」
「化身?」
「魂の欠片みたいなもんかな?」
「なるほど。それで、その化身はどうなったのですか?」
「俺とDで、それを倒そうとしたんやけど。逆に返り討ちにおうてもうて、いったん引いたんや」
「モンスタースレイヤーの方々だけでも、大変だったのですね……」
「そこでや。俺とアホがモンスターから隠れとった時に、この人と出会たんや」
そう言って、ローブを纏った人物の方を見るTrash。そしてセトルも、その人物を見た。
それを確認してローブの人物がセトルに話し掛けた。
「申し遅れました。私は神聖ザイラーから派遣された、紅月〈コウゲツ〉と言います」
「派遣というのは?」
「今、神聖ザイラーでは各地からの不吉な気配に対し、派遣軍または派遣使を送っているのです」
「と言う事は?」
「はい、そうです。砂漠の宮殿イシュバーンの異変に対し、神聖ザイラーも気付いていたと言う事です。そして、そこに私が派遣されました」
「では……?」
セトルがそう言うと、Trashが紅月に代わり話始めた。
「そんで俺らと紅月さんとの三人で、グシュタポの化身と戦ったんや」
「それで?」
「見事に倒したったわ」
それを聞いて、深く息を吐きソファに深く座り直すセトル。
「では、もう脅威は去ったと言う事ですね?」
「いえ」
セトルの言葉に紅月が返した。
「どう言う事ですか?」
「倒したと言っても、グシュタポ本体ではなく。その魂の一部を消滅させたに過ぎません」
「では!?」
「正確に言えば、私が再度強力な封印を施しましたので。あそこに近づかない限り、危険が及ぶ事はないでしょう」
「なるほど、そういう事だったのですね。また今回の様な事が起こるかと思い、不安になりました。安心してください。あそこは我等、マヌス一族の言い伝えにより誰一人近づく者は居ないでしょう。また今回の事もあり、再度村の者達にはきつく言っておきますので」
それを聞いて紅月はTrashの方に一瞬目をやり、セトルに話した。
「それは良かった。では私は早急に帰路に就かねばいけませんので、失礼致します」
そう言って、紅月はソファから立ち上がった。
そして、セトルはそんな紅月を玄関まで見送りに行った。
「アカツキ大作戦、大成功やな」
DがTrashに声を掛ける。
そしてTrashに向けて、手に持っていた旗を振った。
「別に宗教が嫌いって訳やないけど、信仰も恋と一緒で盲目になりやすいからな」
「ああ、それは何となく分かるわ」
そして二人は、セトルが戻ってくるのを確認して黙り始めた。
セトルはソファに座るなり、二人に感謝の言葉を掛けてきた。
「この度は、本当に助かりました。本当にありがとうございます」
「いやいや、別に構へんで」
Dが旗を振りながら、セトルに応えた。しかしセトルはそれに応えず、二人に大きな袋を出してきた。
「セトルさん、これ何や?」
「今回のクエストの報酬です」
それを聞いて、袋の中身を確認する二人。そこには大量のお金が入っていた。
「ええっ!? こんなにっ!? ええで、そんな気ぃ使わんで」
驚いたDが、セトルに声を掛けた。
「いえいえ、これでも少ない方です。どうぞ受け取ってください」
「えぇ、なんか悪いわぁ……」
気が引けるDにTrashが肘で小突いてきた、そして小声でDに告げる。
「ええから、もろとけ。変に断ると怪しまれっぞ」
それにDがしょうがななそうに頷いた。
そして二人はセトルから報酬を受け取り、セトルに別れを告げ建物から出て行った。
セトルと別れたTrashとDの二人は、そのまま〈アシアナ〉から出て行き。とある岩陰の所に来ていた。
「おーい、アカツキ。もう、ええぞぉ」
Trashが岩の方に声を掛けると、先程の紅月が姿を現した。二人の元に紅月が近寄ってくると、暑苦しそうに纏っていたローブを脱ぎ始めた。
「ああ、くそ暑かったぁあ」
ローブを脱ぐなり、アカツキが声を上げた。
「アカツキ大作戦、大成功やな」
そんなアカツキに対して、Dが呑気そうに言葉を掛ける。
「ってか、D!!」
「何や?」
「お前、何かしろよ!!」
「しとったやんけ」
「したって、何をだよ!?」
「静かにしとったやんけ」
「はぁあ!?」
そんなアカツキにTrashが声を掛けた。
「こいつに変にセリフ与えたら、ヘマするだけやろ? アカツキ?」
「……」
「そやぞ、こうげっつぁん」
どうだと言わんばかりにDも言葉を掛ける。
「……バカは楽で良いよなぁ」
「ええやろ?」
「いや、D。別にアカツキは褒めとらんぞ」
呆れた顔でDの方を見るTrash。
「それにしても、本当に上手くいったよな」
「人間、信じたいもんを信じる言うたやろ」
「だけどよ。お前、すげぇな」
アカツキが、感心したようにTrashに声を掛ける。
「まぁ、それよりもや……」
そう言って、Trashがセトルから貰った袋を出してきた。
「めっちゃ、金もろたわ」
嬉しそうに話すTrashを見て、Dが声を上げた。
「ああ!! お前、あそこでのん嘘かっ!?」
「ったり前じゃ!! 貰えるもんはもろとけ、ほんまにぃ!! この先も長いねんぞ、金がある事に超した事はないやろがい」
「やけどやぁ……」
「色々、考えんな。今の俺らにはどうする事も出来ひんねん、きりかえろ」
「わぁったわい」
「それで、次は何処に行くんだ?」
アカツキの言葉にTrashが答えた。
「とりま、西や!!」




