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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
55/76

Episode 055【戦魔の構え】

 男の攻撃を受け、命を落としたと思われていたD。

 しかし、そんなDは何事も無かったの様に男の前に立ち上がってきた。


「貴様、確かに我の攻撃を受けていたはずだぞっ!? 一体、何をしたのだ?」


 戸惑う男が、Dに問い掛ける。


「変な声がしたと思ってたら。気が付いたらこれやから、俺にもよう分からん」


 Dの言葉を聞いてアカツキが、Trashに話し掛けた。


「変な声って、何の事言ってんだ? あいつ?」

「俺が分かるわけないやろ」

「だよな」

「にしても、あいつの体を包んどるオーラみたいなんと、何か関係してんねやろな」

「だろうな」


 そんな二人の元にキメラが襲いかかってくる、その攻撃を何とか交わす二人。


「とりあえず俺らはこっちを何とかするしかないぞ、アカツキ!」

「おうっ!」


 そしてキメラに攻撃を仕掛け出すTrashとアカツキの二人。キメラの攻撃の中でも最も強力な雷撃のタイミングを掴んだTrashのお陰で、二人はキメラを圧倒し始めていた。それでも構わずにキメラは攻撃を仕掛けてくる。その攻撃を盾で受け止めるアカツキ。さすがにTrashも弱ってきたキメラに攻撃をするのを躊躇し始めていた。


「どうするっ!? トラっ!?」

「このままやと倒してまうな……」

「モンスターだけど、こいつ操られてるだけなんだろっ!?」

「たぶんな」

「俺、そんなの倒したくないぞっ!!」

「わぁっとるわいっ!!」


 そして何か方法が無いか考え始めるTrash。


「せやっ!!」

「何か良い方法を思い付いたか!?」

「まあな。アカツキ、ウォー・グリーフやってくれ」

「ウォー・グリーフをか?」

「せや。確実にこれを当てる為に、それが必要なんや」


 そのTrashの手に黒い霧の様な物があった。それを見てアカツキが答える。


「なるほどな、了解っ!!  ウォー・グリーフッ!!」


 アカツキにひきつけられる様にキメラが迫ってくる。それを見てTrashがキメラに向かって、先ほどの黒い霧を放つ。その霧がキメラの顔に取り付く、するとキメラは目が見えなくなったのか。二人とは別の方向に動き始めた。


「ブラックアウトがあったな」

「ああ。言うほど効果時間ないから、何回かやらんとあかんやろけどな」

「オッケー!!」

「後は、あのアホ次第や」


 そう言って、キメラの様子を伺いながら。Dと男の戦いを見守るTrashとアカツキの二人。すると男は、先程とは違う構えを取り始めた。


「装魔の構えが効かぬと言うのならば、戦魔の構えで臨むまでのこと」

「せんま?」


 男の『構え』という言葉を聞いて、Dが聞き返した。そして、そんなDの質問に男が答え始める。


「装魔の構えとは、言わば属性を身に纏う構え。先程まで貴様にした拳魔術は、ただ雷の属性を付与した打撃を繰り出していたにすぎん。それとは違い、戦魔の構えとは拳の接触部分に直接魔法を打ち込む。魔術師ではない貴様等には分かりはしないだろうが、魔法とは大気に触れれば触れるほど威力は下がってしまう。それは魔法の構成を密にする事で問題なくなるのだが、そう簡単に出来るものではない。魔術師の中には詠唱を破棄し、敵に直接魔法を撃つ者がいるみたいだが。詠唱破棄など、それこそ元の魔法の威力を落としてしまうだけにすぎん」


 男の言葉を聞いて、ネルソンとの戦闘を思い出しDの体が一瞬震える。


(あれよか、キツいって事なんか……)


 Dの思いを余所に、男が続けた。


「しかし戦魔の構えの本当の怖ろしさは、それではない。放たれた魔法は少なからず分散・拡散し、目標に向かっていく。それは相手に触れ直接放ったとしても、手の平から放たれた時点で本来の威力を発揮出来ずにいるのだ。しかし拳で打撃を行い、点で魔法を放つことで、その威力の低下を抑える事が出来。貫通性も持たせる事が出来る。これの意味が貴様には分かるか?」


 誇らしく語る男に対し、Dの顔はさっぱり理解出来ていない様子であった。


「ト、トラ? お前、今ので分かったか?」


 Dと同じく理解出来ていないアカツキがTrashに問いかけた。


「多分な……」


 言葉少なに答えるTrashの表情は曇っていた。


「一体、どういう事なんだ?」


 聞き返してくるアカツキにTrashが話し出した。


「簡単に言うたら。戦魔の構えで放たれた魔法は、普通の魔法よか威力が強いって事や。あと……」

「あと?」

「魔法に貫通性が発生するって事は、装備なんか関係なく内部に……。言うたら、内臓に直接魔法を喰らうって事や」

「マジかよ……?」

「お前の盾も、意味無くなるぞ」

「そんなん受けて、大丈夫なんか?」

「大丈夫やないやろな……」


 Trashの話を聞き終え、心配そうにDの事を見るアカツキ。


(D、死ぬなよ……)



「今度こそ、終わりにしてやろう」


 そして男がDに向かって駆け出す。それに対してDは気合を入れる為か大きく声を上げ、男を迎える。その気合は衝撃波を出したかの様に、辺りに『ドンッ!!』っと音を立て。体を包んでいるオーラの色も濃くなった。


「絶対、アンタを止めたるっ!!」


 迫り来る男を凝視するD、男はあと数メートルで接触する所まで来ていた。その刹那、Dの視界から男の姿が消えた。


「っ!? 消えたっ!?」


 男を見失い、辺りを探すD。その様子を離れて見ていたTrashがDに叫ぶ。


「後ろやっ!! Dぃっ!!」


 Trashの言葉に後ろを振り向くと、男はDのすぐ傍に立っており。その拳には青白い光が宿っていた。


「凍える闇に囚われろっ!! ーーアイスバーン・ナックルッ!!」


 Dの鳩尾に男の拳が突き当たる。男の拳に宿っていた光はDの体を通し、Dの背中からビームの様に再び現れ、空中を走った。そして間を空ける暇もなく、その光は一瞬で凍り。大きな氷の塊が出来上がった。そして、それは例外なくDの体をも氷で包んでしまった。






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