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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
54/76

Episode 054【ヌシと言葉と】

 洞窟内とは思えないその場所で、古の獣と戦う三人達。その三人の顔は普段の戦闘とは違う表情で戦っていた。そんな三人に、キメラの鋭い爪が幾度も襲いかかる。それを必死に躱し、反撃に転じる三人だったが。その中の一人だけは、いつもと反応が遅れていた。


「お前、躊躇しとんちゃうぞっ!!」


 その人物にTrashの声が向けられる。


「うるせぇ!!」


 その男が悲痛な顔で、怒鳴り返した。

 キメラは、そんな事をお構い無し男に攻撃を繰り出してくる。キメラの攻撃は激しく、そして凄まじく。山羊の頭は常に魔法の様な物を唱え、稲妻を放ってきていた。そして蛇の尻尾からは三人に対し毒が撒かれる。


「これだけ立て続けに攻撃されると、躱すので精一杯だな。どうする? トラ?」


 キメラの猛攻により、反撃に出られなく三人達。


「……28、29、30」


 アカツキに返事する事なく、何かをカウントしているTrash。そんなTrashの返事を待っていたアカツキの元に、キメラの山羊頭から稲妻が放たれてきた。


「うわっ!?」


 間一髪、それを躱したアカツキ。


「おい! トラ! このままだと、マジでヤバいぞ!!」


 アカツキがTrashに吠える。


「おし! アカツキ、耳かせ」


 口角を上げ、アカツキに声を掛けるTrash。アカツキは言われるまま、Trashに近寄り話を聞いた。


「っ!? それ、本当かよっ!?」

「ほんまや、確認の為に何度か試したけど。間違いない」

「おまっ!? すげぇな!」

「これやったら、俺ら二人でも何とかいけるやろ」

「二人? お前、何言ってんだ?」


 するとTrashはアカツキの言葉を無視して、躊躇しながらもキメラと戦うDに向け叫んだ。


「おい!! Dぃっ!! お前は、あの人と殴り合え!!」

「何言ってんだ!? トラ!?」


 驚きの表情を隠せないアカツキ。


「あいつはアホや、言うて分かる様な奴やない!!」


 二人の元にDの言葉が返ってきた。


「武器は持たんでええねんなっ!?」

「せやっ!! 持たんでええ!!」

「……分かったっ!!」


 そう応え、男の元へと向かっていくD。


「アカツキ、こっからが正念場やぞ!!」

「Dの事は良いのかよっ!? あいつ、素手なんだぞっ!?」

「アカツキ、心配すんな。あいつやったら、何とかする」

「はぁ!?」


 そんな元にキメラが飛びかかってきた、すんでの所で避けるTrashとアカツキの二人。


「くそっ!! こんなんじゃ、それどころじゃないな」

「行くぞ、アカツキ!」

「ちゃんと合図してくれよっ!」


 そして、キメラに向かって行くアカツキ。

 そんな二人達とは離れて、ネイヴェル族の男の元に向かったDは男と対峙していた。


「貴様っ!? 素手で我を倒そうと言うのか!? 舐めた真似を!!」

「倒す倒さへんちゃう!! 俺は、あんたを止めたいんや!!」

「戯れた事をっ!!」


 そして、激突し合う二人。


「我が魔族が、魔法にだけ長けている訳ではないぞ!!」


 そう言って、Dに対し何かの武道の様な構えをとる男。


「あの世の手向けに、これを喰らわせてやろう!!」


 そして男はDに向け、攻撃を仕掛けてきた。激しい拳撃がDを襲う。その動きは、魔術師のそれよりも格闘家の様であった。男の攻撃をまともに受け、稲妻に撃たれたかの様に後方に飛んでいくD。


「ぐはっ!!」


 地に手を付き、口の中を切ったのか血を吐くD。


「どうだ? 我がネイヴェル族が生み出した、拳魔術の攻撃は?」

「け、拳魔術?」


 男の言葉に不思議がるD。


「我がネイヴェル族が編み出した魔法詠唱を兼ねた拳撃で、敵に打撃と魔法の両方を与える戦闘術だ」

「それでか……、思ったよりも痛く感じたのは」

「素手で臨む限り、貴様に勝ち目はないぞ。まして武器を持ったところで、私に勝てはしないだろうがな」


 男の言葉を聞いて、立ち上がってくるD。


「やから倒す倒さんやなくて、俺はアンタを止めたいだけやっ!!」


 そして再度、男に向かっていくD。しかし再び男の攻撃を喰らい、Dが吹き飛ばされていく。

 そんな二人を他所に、キメラと戦うTrashとアカツキの二人。


「牙刀天昇!!」


 アカツキの剣が、襲いかかってくる蛇の頭をしたキメラの尾に迫る。

 そしてTrashは弓で、キメラの頭部を攻撃していた。


「紅蓮爆矢っ!! おいっ! アカツキ、そろそろ来るぞっ!!」


 Trashの言葉にキメラへの攻撃を止め、距離をとるアカツキ。するとキメラの周囲に稲妻が轟いた。


「あいつ、本当にタイミング掴みやがった」


 Trashの方を見ながら呟くアカツキ、そんなアカツキにTrashの言葉が届く。


「このまま一気に畳み掛けるぞ、アカツキ!!」

「オッケー!!」


 激しく襲いかかってくるキメラに対し、立ち向かって行く二人。



「ほう、キメラ相手になかなか良くやる。しかし、こっちの男はもう無理そうだがな。」


 Trash達の方を見てから、地面に倒れるDに目を戻す男。


「くそ……」


 地面に手をつき、男を見上げるD。男はDに対して、最後の攻撃を仕掛けようとしていた。


『こんな奴が、ワシが認めた男の生まれ変わりなのか?』


 Dの頭の中に言葉が響く。


「誰や?」

『誰だと? ワシを忘れたと言うのか? これだから人とは面倒臭い生き物なのだ』

「一体、何言うてんねや? お前?」

『全く。以前のヌシとの約束がなければ、こんな奴、助けはせんのだがな』

「主?」

『……お前、バカだろ? 主じゃなくて、おぬしって事だ!!』

「ああ、そういう事か。うんで約束って何や? 助けるってどういう事や?」

『それが知りたければ、もう一度我の元まで来るのだな。それがヌシが我にした約束だ』

「どういう事や?」


 Dが聞き返しても、その言葉は返事をしなくなった。


「殴られ過ぎて、頭がおかしくなったのか? 残念な奴だな。しかし、これで命とともに、それも終わりにしてやろう!!」


 変わりにネイヴェル族の男が言葉を掛けてきた、そしてDに攻撃を仕掛ける。今まで以上に大きな衝撃が辺りに響く。その衝撃にDの方に目をやるTrashとアカツキ。


「おいっ!! Dぃ!!」

「嘘やろ……、あいつが……?」


 二人の目に地面に横たわるDの姿があった。そして男が二人に目を向け、叫ぶ。


「次は貴様達だっ!!」


 二人の元に駆け出す男。


「どう……、なってるんだ……?」


 目の前の起こっている事に動揺するアカツキ、Trashは言葉も出せないでいた。


「大切な人の死が、どれ程のものか。お前達にも少しは理解出来たかっ!?」




「何や? これ?」


 Trash達に向かう男の後方で、Dの声がした。その声に反応し、後を向く男。そこには赤いオーラの様な物を纏ったDの姿があった。


「アホのやる事は、俺には分からんわ」


 Trashがようやく、先程アカツキが発した言葉に答えた。






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