Episode 049【遠い記憶の彼方に】
辺りに見えるのは、普通の村の景色であった。
風に吹かれ、回る風車。そして畑があり柵の中では家畜である豚や鶏、牛が餌を食べていた。
その景色を意外そうに眺めるTrash達、そんな三人の横を通り過ぎる人々も至って普通の村人に見えた。
「ほんまに、普通の村やな」
すれ違う村人達を見て、Dが言った。
「ほんまに、そやな」
Dの後を追って、遠ざかっていく村人達を見るTrash。
「本当にここの村人が、俺達をあの洞窟に帰してくれるのか?」
鍬持つ村人を見て、アカツキが不安そうな顔をする。
「とりあえず。ここの偉いさん見付けて話するしか、しゃあないやろ」
バラハラから村への道のりを聞いたTrash達は、今その村に辿り着いたばかりであった。
「偉いさんって言うたら、やっぱ」
「村長って、事か」
Trashの言葉に応えるDとアカツキの二人。そして三人は、とりあえずこの村の村長を捜し始めた。小さな村であった為、その行為にはさほど時間は掛からなかった。
「村長? ですか?」
村人が不思議そうな顔をしてTrashに応える。
「うん。何処に行ったら、会える?」
その言葉に困った顔をして、村人が応えた。
「村長でしたら、今はゾイエンガルドに行かれてますので此処には居ませんよ」
「ゾイエンガルド?」
「なんや、それ?」
「また、ここにある村とかって話になるのか?」
村人の言葉を聞いて、また移動しなけばいけないのかと思い。少しぐったりする三人。そんな三人を見て、村人が話し掛けてきた。
「ゾイエンガルドをご存じないと言うことは、あなた方はモンスタースレイヤーの方々ですね?」
その言葉に不思議そうな顔をする三人。何故なら今までならば、その見た目でモンスタースレイヤーかどうかを判断されてきたからであった。
「そやけど。ゾイエンガルドを知らんのと俺らと何か関係あんの?」
村人に応えるD、その隣でアカツキが頷いていた。
「それは不思議な事に、私が出会ってきたモンスタースレイヤーの方、全員がご存じなかったからです」
「経験上の判断って事か」
納得した顔をするアカツキ。
「それで、そこはここから遠いん?」
Trashの言葉に、また困った顔をする村人が応える。
「申し訳ないですが。今のあなた方では、ゾイエンガルドに行く事は出来ないのです」
「何でや?」
「ゾイエンガルドとは、俗に言うあの世の事ですから」
「え?」
「マジかよ……」
村人の言葉に困った顔をするTrashとアカツキの二人。しかし、Dだけは腕を組んで何か考えているようであった。それに気が付いたTrashがDに話し掛けた。
「おい。お前、また話に付いてこれてへんねやろ?」
「いや、そうやなくてな。ちょう、待てよ。……う〜ん、あれぇ? やっぱ、何かおかしいやんなぁ?」
変に悩むDに、再度声を掛けるTrash。
「一体、何や言うねん?」
それを聞いて、Dは自分が思っている事を話し始めた。
「今から思えばや、ララから話を聞いた時に変やと思っとけば良かったんやろけどや」
「ララさんの話が変だと!?」
「怒んなや、アカツキ。ララがおかしいって話やないんやから。俺が言いたいんは、そやなくてや」
「ほんで、何が言いたいんや?」
「あの世ってや、黄泉の世界って事やんな?」
それを聞いて、「はぁ?」っという顔をする二人。
「おい、D。お前って、ほんっとうにバカだな」
「大丈夫か? ほんまに?」
そんな二人を他所に話を続けるD。
「って事はや、そこにグシュタポも居るって事やろ?」
「いや、それは無いだろ。そいつが居るのは、地獄みたいな所の事だろ」
「でもや、そうやったら。何でセトルさんは、そう言わんかったんやろ?」
「知るかよ!! ただの言葉の綾ってだけだろ!?」
Dとアカツキの話を聞きながら、Trashも考え始めた。
「おい、トラ? お前までおかしな事考えてるんじゃ無いだろうな?」
「確かに変やな。ララの話やったら、ここの人らはここに来た魂をあの世に導くぅ言うてたしな」
「おい、トラ? お前、本気でこのバカの話信じてるのか?」
「信じとるいうか、言われてみれば変やなって思うだけや」
「やろ? 何か変やない?」
「やっぱ言い伝えがちゃうって事なんか?」
その三人の話を不思議そうな顔で聞いていた村人が話し掛けてきた。
「皆様は、村長を捜してらっしゃるんですよね?」
「そうだけど。どうかしたのか?」
「どうって……、グシュタポ様がこの村の村長になりますが」
村人の言葉に固まる三人。
『はぁああ!?』
「なんでやねん!?」
「グシュタポが、ここの村長だとっ!?」
「ああ、もう頭パンクしそうやわ……」
そして、ここに来た経緯を村人に話す三人。セトルから依頼された事や、〈アシアナ〉に伝わる言い伝えの事など全てを村人に話した。
「アシアナにヤーヌですか……。なるほど」
そう言って、少し顔色が変わる村人。
「何か知ってんの?」
訳が分からずに困っているDが村人に問いかけた。
「セリヌンティア・カ・カーディアカ」
「はい?」
「巨木セリンカと言われている樹の本当の名前です」
「本当の名前?」
「そうです。生命を司る樹という意味です」
「生命を司る樹?」
「はい……」
「一体、どうなってるんだよ?」
「ヤーヌの術式で出来た木やないんこ? アシアナに伝わっとる言い伝えと全然ちゃうやんけ」
「あかん……、もう無理や」
村人の話に混乱し始める三人。そんな三人を見て、怒りを抑えたような顔をしながら村人が話を続けた。
「そもそもヤーヌは神ではありません」
「え?」
「神やなかったら、何や言うんや?」
「ヤーヌはあなた方と同じモンスタースレイヤーです」
「嘘だろっ!?」
「本当です。そしてダナキル砂漠は、本来砂漠でも何でも無かったのです。沢山の木々や草花が育つ、緑豊かな所でした」
「でした? まるで見た事でもあるような言い方すんな」
「見てきましたから……」
「どゆこっちゃっ!?」
「あなた方も知っているように、遥か昔の事になりますーー」
そして村人は手を握り締め、語り始めた。
遠い記憶の、遥か過去にしまい込んだ出来事を。




