Episode 045【死後の世界】
仮初めの魔術師の副作用により意識が朦朧としているTrashに駆け寄り、心配するDとアカツキ。そして、その三人を囲うように迫るスケルトンナイトとスケルトンメイジ達。今まさに三人は絶体絶命の危機に瀕していた。
「くそ……」
迫り来るモンスターの群れを見るD。
「どうする? D!?」
そんなDに必死な表情で言葉を掛けるアカツキ。
「アカツキは、とりあえず回復アイテムでトラを回復してくれっ!」
「お前はどうするんだよっ!?」
「その間、俺はこいつらの相手しとくっ!!」
アクェンを掛け、モンスターの方に向かって行くD。そんなDに対してスケルトンメイジ達が一斉に魔法を放ってきた。凍てつく空気が周りを染め、それがDの方へと流れていく。すると空中に氷の刃が幾つも現れて、Dを目掛けて飛んでいった。その中を駆けながら進んでいくD。アクェンを掛けているおかげで、ダメージを受けずにモンスター達の所まで行ける事が出来た。
「おっしゃ!! D、やったれぇ!!」
Trashに回復アイテムを使っていたアカツキが叫ぶ。
そしてDはMPの残量なども気にせず、手当たり次第に攻撃を仕掛けていく。そんなDにモンスター達も応戦してきた。Dのスキル・ソードスラッシュやスケルトンナイトの凄まじい攻撃、そしてスケルトンメイジの魔法により、そこはまるで嵐が起こっているかの如く激しい戦闘となっていた。床や壁などには亀裂や罅が入っていく。
「いける……、いけるぞ、Dぃ!!」
モンスターと互角に渡り合うDの奮闘を見てアカツキが希望を抱く。そんなアカツキの腕をTrashが掴んできた。
「トラっ!! 気が付いたかっ!?」
意識がはっきりしだしたTrashに声を掛けるアカツキ。
「…カン……」
言葉を発したが、まだ上手く体に力が入らないTrash。
「どうした? トラ?」
「アカン……」
「あかん? 何がだ?」
「あいつ……、アクェン切れとる……」
「えっ!?」
Trashの言葉を聞いて、Dの方に目をやるアカツキ。戦闘の激しさで気が付かなかったが、良く見るとDの体には幾つもの斬り傷や裂傷があった。そしてDの周りには赤い霧の様な物が漂い始めていた。
「っ!? あいつ、血がっ!!」
その赤い霧の様な物が、Dの体から飛び散っている血である事に気付くアカツキ。
「アカツキ、俺はもうええから。一緒に戦ってやってくれ」
「おう!」
Trashに力強く答え、走り出していくアカツキ。
「ウォー・グリーフッ!!」
スキルを唱え、モンスター達の意識を自分へと向けるアカツキ。そして戦闘はさらに激しさを増していき、周囲の床などにある亀裂が大きくなっていく。アカツキが加わった事によりDへの負担は減っていたが、それまでの戦闘でだいぶ消耗していたDが床に片膝を突き、苦しそうに息をする。
「Dっ!?」
それを見たアカツキが叫ぶ、しかしDは返事を返せずに下を向いたまま大きく呼吸をしていた。そこにモンスター達が迫っていき、攻撃を仕掛けてきた。Dの体にドンッ!っという衝撃が走り、横に吹き飛んでいく。Dがそこを見るとTrashの姿があり、スケルトンナイトの剣をナックルダガーで受け止めていた。
「お前、大丈夫なんかっ!?」
「出血大サービス中のお前に、言われたぁないわっ!!」
それを見て、アカツキが二人に叫んだ。
「あと一息だっ!! いくぞっ!!」
それを合図に飛び出していく三人。スケルトンナイトとスケルトンメイジもそれに応じて、一気に迫ってきた。今にもお互いが衝突しそうな次の瞬間。床の亀裂が広間中に激しく走り、床が抜け落ちていった。そしてTrash達も暗い闇の中へと落ちていく。
「っつう!!」
頭を押さえ、目を覚ますTrash。周りを見るとDとアカツキが横たわっていた。Trashは立ち上がり、二人を起こしていく。
「大丈夫か?」
目を覚ました二人に声を掛けながら、再度周りを確認するTrash。そこには先程のスケルトンナイトとスケルトンメイジ達の姿は無かった。
「ああ……、いったぁ」
腰を押さえて、立ち上がってくるD。
「何が起きたんだ?」
首の辺りを摩りながら、アカツキも立ち上がってきた。
「どうやら、下の階に落ちてもうたみたいやな」
「怪我せんで良かったな、俺ら」
自分の体を見ながら、二人に話すD。
「そうだな。さっきのモンスターからも逃げれたし、逆にラッキーだったな」
「にしても……、ここ何処や?」
辺りを見渡す三人、そこは今までの洞窟内とは違い。至る処に植物が生え渡っていた。一見すれば、そこは森や林の中の様であった。
「あんな処の下に、こんな感じの所があってんな」
不思議そうな顔をしながらDが辺りを見ていると、TrashがDの異変に気付いた。
「お前、さっきまでの怪我はっ!?」
「はぁ?」
Trashの言葉にアカツキも気が付く。
「うわっ!? お前、怪我どうしたんだ?」
二人の言葉を聞いて、再度自分の体を見るD。そこには一つの怪我も無かった。
「いや、だから怪我せんで良かったなって言うたやろ?」
自分の異変に気付かないD。
「やなしにっ!! お前、さっきまで戦っとった時の怪我はっ!?」
「え?……、うわっ!? 傷が消えとるっ!? なんでやっ!?」
ようやく異変に気付き驚き始めるD。
「どうなっとんねや、これ?」
「何かのイベントか?」
「何で傷がなくなっとん? あっ!!」
Trashを見て、Dが声を上がる。
「どないしてん?」
「トラ、お前の顔の筋も消えとるぞっ!!」
それを聞いてTrashの方を見るアカツキ。
「本当だっ!?」
そんな二人に間を置いてTrashが答えた。
「いや……。これは、ただ効果が切れただけやろ」
「……ああ、そっか」
「……なるほどな」
「それよりも、もう仮初めの魔術師使わん方がええな。あれの副作用は怖いわ」
Dが先程のTrashを思い出して話してきた。
「せやな。それに、あれMP切れても魔法使えよったんやけど。今度はHPを消費しよるわ」
「そうなのかっ!?」
「ああ。そんで一気に苦しくなってくる」
「あかんな……」
しばらく沈黙する三人。
「で、今からどうする?」
その沈黙をアカツキが破る。
「とりあえず、先に進むしかないやろ」
「何処に行ったらええか分からんけどな」
「それは、もうしゃあないやろ」
「そうだな。進んでいけば、Dの傷が消えた理由も分かるかもしれないしな」
そして沢山の植物の中を進んでいく三人。しばらく歩いていくと、目の前に噴水が現れてきた。
「噴水や」
「どうなってんだ? ここ洞窟の中だろ?」
それを見て話し出すTrashとアカツキ。そんな二人を置いて、Dが噴水に向かって走って行った。
「水やぁ!!」
そして噴水から出てきた水を飲みだすD。
「お前、何があるか分からんねんから無闇に行動すんなや」
後から来たTrashがDに言葉を掛ける。
「あれ……?」
「どないしてん?」
「水飲んでるはずやのに、全然そんな感じがせぇへん……」
「はぁ? 何言うてんねん、お前?」
「どうしたんだ?」
そこにアカツキも加わった。
「こいつ、水飲んどるのに。飲んだ気がせぇへん言いよんねん」
「はいぃ? D、お前どこまで馬鹿なんだよ!?」
「ちゃうちゃう!! そんなんやんくて、ほんまやねんて。お前らも飲んでみぃや」
Dの言葉を聞いて、水を飲む二人。
「あれ……?」
「どうなってんだ……?」
不思議そうに顔を見合わせる二人。
「な? な? 俺の言うた事、ほんまやったやろ!?」
「なんでや?」
「俺達まで馬鹿になったのか?」
おかしな出来事に戸惑う二人。
「あれ? 君達、誰?」
後ろから聞こえてきた声の方を向く三人。
そこには髪の毛が長い一人の人物の姿があった。その髪の毛は背中まで伸びており、腰には見た事もないメダルのような物を提げていた。
「誰や、あんた?」
疑うような顔をして、その人物に話しかけるTrash。
「え〜っとぉ……」
その人物が答えようとした時にアカツキが声を掛けてきた。
「ってか、男? 女?」
それを見て呆れた顔になるTrash。
「アカツキ……、それ今関係ないやろ?」
「いや、男なら気になる所だろ!? そこはっ!?」
そんな二人を置いて、Dが話を進めていた。
「うんで、誰なん? ってか、ここ何処なん?」
そんなDに、その人物が答えた。
「とりあえず、今はバラハラって事にしておこうかな?」
「ヴァルハラやなしに?」
「うん、とりあえずね」
「ふ〜ん」
良く分からない会話をしている二人にアカツキが加わった。
「それで、男? 女?」
「どうしようかなぁ? ベッ君にも本当の事は言ってないからなぁ……。とりあえず、秘密って事にしとこうか」
嬉しそうな笑みを浮かべて答えるバラハラ。
「ベッ君って、誰!? 彼氏!?」
変にしつこく問いかけるアカツキを見て、呆れるTrash。
「アカツキ、お前惚れたんか?」
「っんな訳ねぇだろ!!」
「そうなの?」
アカツキに顔を近づけるバラハラ、それに対して顔を赤くするアカツキ。そんなアカツキを嬉しそうな顔をして、おちょくるTrashとDの二人。
「そやったんか」
「惚れたんやな」
「違うって言ってるだろ!!」
「若いってええなぁ、トラ」
「ほんまやなぁ、D」
「ほんと、ほんと」
TrashとDに加わり一緒にアカツキをおちょくるバラハラ。そんなバラハラを見て、Trashが言葉を掛けた。
「ってか、ここ何処やねん!?」
バラハラは少し首を傾げて、Trashの言葉に答えた。
「何処って、あの世だよ」




