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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
43/76

Episode 043【謎の男】

 〈アシアナ〉を出発をして南にある洞窟〈砂漠の宮殿イシュバーン〉に辿り着いたTrashのDの二人は洞窟の中を彷徨っていた。


「洞窟の中やってのに、ここって明るいのぉ。それにーー」


 洞窟にある柱を触り、不思議そうに辺りを見渡すD。


「ほんまに宮殿みたいな造りしとんの、ここ」


 Dの言った通り、そこは洞窟と言うよりも宮殿と言った方が正しい程。その見た目は豪華な宮殿のような姿をしていた。それをDと同じ様に見渡していたTrashも不思議そうな顔をしていた。


「どないなっとんねやろな? それよか、どないする?」


 Trashの言葉に自分達が置かれている状況を思い出すD。


「そやったな、俺ら迷ってもうてたんやったな」

「セトルさんに頼まれたんはええけど。このまんまやったら、ここに来たっていう男が何かしでかしてまうぞ」

「早よ、何とかせんとあかんの」


 そして、とりあえず洞窟の中を進んで行く二人。黄泉の世界に繋がっていると言い伝えられている洞窟であったが、そこには何の気配も感じなかった。


「見た目以外は何の変哲も無い、ただの洞窟やな」

「黄泉の世界に繋がっとるって話らしいんやけどな。何でやろの?」

「さあ? ところでや、俺ら迷てもうとるけど。知らん間に死んでましたって事にならんよな?」

「……」

「どした? トラ?」


 その場に立ち止まるTrash、そんなTrashは驚いた顔をしていた。


「たまにはええ事言うの、お前。」

「何で?」

「さっきお前が言うた事にならんように、気を付けて行かなあかんぞ」

「え? マジで?」

「おう……」


 Trashの言葉を聞いて、Trashの鞄に指をさすD。


「一回、セトルさんに渡してもらったランプで外に出ぇへんこ?」

「そうしたいけど。ここに来たって男の事も気になるしの」

「せやなぁ……」


 Trashの言葉を聞いて仕方なく歩き出すD、すると先の方から声が聞こえてきた。



「何だってんだ、ここはっ!? それに、こいつらしつこいなぁ!!」


 先に行ってみると、一人の男が剣と盾を持った屍の形をしたモンスター達と戦っていた。見た所その男はTrashやDと同じモンスタースレイヤー、つまり此処〈ワンダー・クロニクル〉の世界に飛ばされてきたプレイヤーの様でありファイターの姿をしていた。そして、そこに駆けつけるTrashとDの二人。


「お前、大丈夫か?」

「何だ、お前らは?」

「ここに来たっていう男を探しとったんやけど。どうやら、あんたの事やったんやな」

「何を言ってんだ? お前ら?」

「それよか、とりあえず。こいつら、やっつけよか」

「そうだな」


 屍の様な形をしたモンスターのステータスを確認するTrash。思っていた通り、そのモンスターの名前はスケルトンであった。そしてレベルもTrashとDより低かった。


「思た通り、スケルトンか」

「トラ、こいつら弱いぞ」


 そして次々とスケルトンを倒していく二人、しかしスケルトン達は続々と現れ、なかなか戦いを終わらせる事が出来ないでいた。


「どっから湧いてきよんねん? こいつら?」


 倒しても倒しても現れてくるスケルトンに嫌気がさすDに対して、先ほどの男が声を掛けてきた。


「さっきから、こればっかで困ってんだよ。多分、この連中が次々に仲間を呼んでんだろうな」

「マジでか? くそぉ、一気にまとめて倒せたらええんやけどなぁ」


 すると二人の後ろから、Trashの声が聞こえた。


「お前ら、ちょっと退いてろ!」

「何や? ……って、マジかいっ!?」


 後ろを振り返ったDが慌てて、Trashの前から退いて行った。


「おい! お前も退いとけっ!」

「何だってんだよ?」


 Dの言葉に仕方なく従う男。それを見たTrashが両手に持っていたナックルダガーを、自分の前にクロスさせ叫んだ。


「喰らいやがれっ!! ーーブリッツ・ロートッ!!」


 するとナックルダガーをクロスさせた所から、ネルソンが使っていた魔法ブリッツ・ロートが放たれる。そして赤黒い稲妻がスケルトン達を襲う、スケルトン達は呻き声を上げながら次々に倒れていった。辺りに倒れているスケルトン達を見て、先ほどの男が驚く。


「魔法って、すげぇな」

「あれは痛いねん、ほんま……」


 ブリッツ・ロートの威力を肌身で知っているDが、倒れたスケルトン達に同情する。それを笑って見ているTrashの元に、男が近寄ってきた。


「お前ストライダーじゃなかったのか。メイジって、そんなに装備出来る物多いのか?」


 それに対して、ニヤリと笑うTrash。その顔には黄色い蛍光色の筋が走っていた。そして、それを見て驚くD。


「トラっ!? お前、それって!?」

「せや。ヴァンからもろたんや」

「鉤爪の魔術師をか?」

「 ”仮初め”やっ!! 何で魔法使いになってまで、物理攻撃せなあかんねんっ!! お前、アホかっ!?」

「せやった。それよりも副作用とか大丈夫なんか?」

「ヴァンが俺らモンスタースレイヤーやったら、副作用気にせず使えるやろって。あいつが帰る前に俺にくれたんや」

「そやったんか」


「お前ら、一体何の話をしてるんだ? その仮初めって、一体何なんだよ? お前、メイジじゃないのか?」


 その言葉に、「しまった」という顔をするTrash。


(出会うたばっかの奴に、この事全部言うんは止めといた方がええやろな。どんな奴か、まだ分からへんし……)



「ああ。あれな、誰でも魔法が一つ使える様になる秘薬やねんーー」



「って!? お前なぁ、Dぃ!!」

「なんやねん?」


(くそぉ。こんな時にまで、あいつのアホが出てくるやなんて。しもたぁ……。あいつ、Dの話聞いてどう出るんや?)


 そして男の方を窺うTrash。男は腕を組んで考え始めた。


(何か思考しとるみたいやな。ベルキンさんから聞いたPKの事、Dにも言うてやったのに。ほんまにあいつはアホかっ!? 場合によってはーー)



「マジかよっ!? すげぇな、それ!! それ何処に売ってんだよ!?」


 驚きの声を上げ、Dに問いかけ出す男。



(……あ。あいつも、ただのアホや)



「それが何処にも売ってへんらしいねん」


 Trashの心配も余所に、次々に答えるD。


「何だよ、ドロップアイテムかよぉ……」


 男が言う「ドロップアイテム」という言葉を分かっていないDが「何や? それ?」と思ったが。何か面倒臭かったので、そのまま調子を合せる。


「そそ。買えへんねん」


(あ! あいつ、面倒くさがりやがった。まあ、ええか)



「それよか。お前、誰やねん? 何しにここに来たんや?」


 Dと話す男に問い掛けるTrash、それを聞いてTrashの方を見る男は自信ありげに答えた。


「俺の名前はアカツキ。この世界で英雄になる男だ!! ここに来たのは、そこに洞窟があったからさっ!!」


 それを聞いて、呆気にとられるTrash。


(……やっぱ、こいつもただのアホやな)



「D、良かったの」

「なんで?」

「お前みたいなアホが、世界に一人だけやないって事が今証明されたぞ」

「何だと!? お前!?」

「どう考えても、お前ただのアホやんけっ!!」


 揉め始めるTrashとアカツキの二人、それを余所に何やら考え始めるD。


「にしても……。ここに来たんがアカツキやったら、何もないって事なんか?」


 それを聞いて、手を止めるTrash。


「ああ、そっか。どないねんやろな?」

「さっきから何の話をしてんだ、お前らは? ここに誰かが来たら、何かあるってのか?」


 アカツキに事情を話すTrashとDの二人。 


「なるほど。それで、お前達はここに来たんだな」

「せや」

「お前。俺らに出会てへんだら、ここで迷ってあの世行きやってんぞ」

「そんな事、俺に限ってある訳ないだろ」

「お前、ここがどの辺か分かっとんのか?」


 良かったという顔をして、アカツキに詰め寄るD。そんなアカツキが辺りを見渡す、そして頭に手をやりDに答えた。


「すまん。あいつらと戦ってたから、ここが何処か分からんわ」

「お前、ほんまにアホやんけっ!!」


 Trashがアカツキに大声をあげる。そんなアカツキは、それを無視して話し出した。


「それよりも、クエスト名に異変って付いてるんだったら。やっぱり何かあるんじゃないのか?」

「聞けよっ! 人の話を!!  まぁ、村の言い伝えもあるしな。もう少し、ここを探索するか」

「せやな。 アカツキも俺らと一緒に来いよ。一人で居っても、ここから出られへんやろ?」

「そうだな」

「お前ら言うとくけど。さすがにアホ二人も面倒見切れんからの、余計な事すんなよ」

「あいあい」

「誰がアホだとっ!? お前もすんなり、あいつの言う事聞くなよっ!!」

「だって、俺アホやしな」


 アカツキに笑って答えるD。


「お前なぁ……、男ならもっとこう。やってやるって気持ちとかないのかよ」

「うぅん……、よう分からん」

「お前、バカなのかっ!?」

「せや」


「……」


「やめとけ、アカツキ。こっちが疲れるだけやぞ」

「お前、良くこいつと一緒に居られるな」

「ただの腐れ縁なだけや」


「おっしゃあ!! そんなら王さんのお帰りを迎えに行こかぁ!!」


「王の帰還って、どっちかって言うと帰って来たらダメな方だよな?」

「そうや」

「あいつ、分かって言ってんのか?」

「あいつは言葉の響きが気に入って言うてるだけや。気にすんな」

「そうなのか」


 そして再度、〈砂漠の宮殿イシュバーン〉の中を歩き出す三人。そんな三人の様子を柱の陰から窺う男の姿があった。


「あれはモンスタースレイヤー……、我々の邪魔をしに来たのか」






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