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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
40/76

Episode 040【砂漠の村〈アシアナ〉と砂漠のモンスター〈ロンデウス〉と】

 灼熱の大地〈ダナキル砂漠〉を、只ひたすらに西へと歩いていたTrashとDの二人。

そこは「砂漠」と言う名に恥じぬ程、砂で構成された大地が広がり。それ以外で目にする物と言えば、風化された岩ぐらいであった。しかしそんな二人は今、約二週間ぶりの入浴を此処〈アシアナ〉で過ごしていた。


「あぁ、ええ湯やなぁ」


 湯船に浸かり、その壁に背中を委ねるDが天井を見上げていた。その天井はガラス張りに出来ており、外に生えている木々が覗けた。そして、その木々が浴場の屋根を覆っており、太陽からの陽の日差しを防いでいた。


「普通やったら、ありえへん構造しとんよな。ここ」

「ああ?」


 浴場に用意してある椅子に座り、頭を洗っているTrashがDの方に少し顔を向ける。その姿はさながら、現代の銭湯の様にTrashの前の壁には鏡があり蛇口まであった。


「いや。砂漠にあんのに、天井がガラス張りってあかんやろ。普通」

「ああ」


 Dの言葉に、髪の毛の泡を流しながら答えるTrash。


「それに、ここほんまに村なんこ?」

「何で?」

「村の割にしては、なんか立派やん。ここ」

「知るか。村って書いてあんねんから、村なんやろ」



 Dが疑問に思うのも無理はなく。ここ〈アシアナ〉は村と言うには規模が広く、目にする建物の構造もしっかりしているように見えた。只、それよりもーー


「お前、そんな事より。あれには何とも思わんかったんか?」

「ああ、あれか。デカい彫刻か何かやと思っとったわ」

「いや、それは無いわ」

「あれの正体聞いた時は、びっくりしたけどな」

「せやな」


 二人が言う”あれ”とは、ここ〈アシアナ〉のほぼ中心にそびえ立つ大きな木についての事であった。〈アシアナ〉には湖が存在し、村の至る所には木々が生えていた。文字通り、砂漠のオアシスである。そして二人が話していた大きな木は高さが20m程もあり、村の大半をその木が覆っていた。さらに、その木の幹には何かの生き物の形が浮き上がっていたのであった。


「あんなデカいモンスターって、どんなんやねん?」


 そう呟きながら体を洗い終えたTrashが湯船に入ってきた。そしてTrashは湯船に入るなり、頭の先まで湯の中に浸かり出した。隣に居るDは、その事に気にもとめていなかった。しばらくして「ああ」という声と共に、湯の中からTrashが顔を出してきた。Trashは体や頭を洗い、泡を流しても。こうしないと全身に付いた泡が取れた感じにはなれなかったのである。


「巨大モンスターなぁ……」


 その言葉に何処か聞き覚えのあるDは、目線を上にあげ何かを思い出そうとしていた。しかし頭の中に霧が掛かったように、思い出そうとすればする程。それが何であったのかが、はっきりしないでいた。


「どないしたんや?」

「あれがモンスターって聞いた時な、びっくりはしたんやけど。俺、それと似たような事どっかで聞いた気がすんねんなぁ……」

「あんな巨大モンスターが他にも居るいうんか? あんなん一匹で十分や、大人しく封印されとけ」

「それ! 封印な!」

「封印が何やねん?」

「どっかで聞いた気がすんねんなぁ……、何処やったかいなぁ?」

「気のせいやないんこ?」

「かなぁ?」


 首をかしげながらも自分の記憶を辿るD、そんなDにTrashが一つの疑問を投げかけた。


「にしてもや。封印って事は、あれはまだ生きとるって事なんやろ?」

「やろうな」

「それって、どうなんや?」

「何が?」

「あの長老さんは、封印されとるから大丈夫やって言うとったけど。俺からしたら、問題を後回しにしとるだけな気がするんやけどな」

「封印が解かれたらって話か?」

「せや。あのロンデウスってバケモンの封印が解かれたら、あれはまた動き出すんやろ?」

「やから、それを見守る為に長老さんとかが居てんねやろ?」

「まぁ、せやけど」


 Dの言葉に答えながも、何か腑に落ちない表情のTrashであった。

 ここ〈アシアナ〉は元々何も無い場所であった。村に存在する巨木や湖は巨大モンスター〈ロンデウス〉を封印する為に、術式により発生した封印そのものであった。そして、その封印が解かれないように人々が代々に渡り見守り続けてきたのである。砂漠のオアシスである〈アシアナ〉は〈ロンデウス〉が居なければ、存在しない村であったのである。


「あのモンスターのおかげで、この砂漠にこんな村が出来たってのも変な感じがすっけどな」

「まあな」



 浴場〈イシア〉から出てきた二人。その二人に夜風が当たる。昼とは違い、夜の砂漠には少し涼しさが辺りを漂っていた。


「夜になると、若干寒いな」

「風呂上りやからやろ」

「ほんで。長老さんから頼まれたんは、明日からやるんこ」

「せやな。今日はもう遅いし、明日からにしよか」

「ここから南にある、洞窟内の調査って。一体何を調べたらええんや?」

「さあな。とりあえず行ってみて、変なとこないか見て回ったらええんとちゃうか? あの長老も、そんな感じな事言うとったやんけ」

「せやな」


 二人は〈アシアナ〉に着いたばかりの頃を思い出していた。



ーー


 長い砂漠の旅路の途中に、ある村に辿りついたTrashとDの二人。その村は本当に砂漠に存在しているのかと思ってしまう程、緑豊かであり水も豊富にあった。そして何より二人の視線を惹きつけたのは、村に存在する巨木であった。


「めっちゃデカいな」

「この木なんの木のバオバブ版って感じやな」

「確かに」

「あそこのあれは、何なんやろな?」

「あれか?」


 二人が巨木を見ていると、後ろから声が聞こえた。


「あなた方は、もしやモンスタースレイヤーの方々ですか?」


 その声の方に振り返る二人。そこには一人の男性が立っていた。見た目からして、50代半ばぐらいの男性で頭にはターバンを巻き。砂漠の日差しで日焼けした肌には、幾つかの皺が刻まれていた。そして口の周りには、その男性の厳格さを物語るような髭が生えていた。


「そやけど、なんで?」

「それは良かった。今しがた、宿屋の方にクエストのお願いを出してきたばかりだったので」


 Dの言葉に安堵する、その男。

 その男の言葉に疑問を抱くTrashが男に尋ねた。


「それが何か関係あんの?」


 Trashの疑問に、優しい口調で男が答え始めた。それは幼子の問いに答える父親のような雰囲気であった。


「ここアシアナは周りを広大な砂漠で囲まれている為に。クエストを出したとしても、そのクエストを行ってくれるモンスタースレイヤーの方自体がなかなか現れてくれないんです。クエストの受注範囲も広げてはいるのですが、それでもなかなか……」


 男の言葉に、「あ、そっか」と呟くTrash。そんなTrashにDが言葉を掛けた。


「ゲームやと腐るほど遠い場所でも気にせず行くけど。こんな感じやったら、その為だけに行こうなんて思わんはな」


 その言葉に頷くTarsh。

 そんな二人に男がお願いをしてきた。


「それで、お二人にクエストの依頼をお願いをしたいのですが。お願い出来ますか?」

「構わんで。ええやろ、トラ? 困ってはるんやし」

「まあ、別に断る理由も無いしな」

「ありがとうございます。立ち話もあれなので、私の自宅で詳しい内容をお話しします」


 そう言って二人を案内する男、TrashとDは男に案内されるままに村の中を進んでいく。村は活気にあふれ、行き交う人々も皆賑やかであった。そして村は周りを砂漠に囲まれている為に交易には頼らず、村の生産力だけで生きていけるように田畑などが多く存在していた。それを見て、単純に驚くD。


「砂漠に田んぼまであんねや、すげぇな」

「この村の恵みは全て、ヤーヌ様のおかげです」

「ヤーヌ?」

「はい。先ほどお二人が見ていた巨木セリンカにロンデウスを封印された神の名前です」

「え?」

「封印って、さっきのあれ。モンスターやったんかい!?」

「そうです。今から遥か昔、この世界に現れた巨大モンスター・ロンデウス。それにより世界は壊滅的な危機に至りました。そこに現れたのが、我等が神・ヤーヌ様なのです」


 突然の男の話に驚きを隠せない二人。二人は後方に見えるセリンカに振り返り、ロンデウスと呼ばれるモンスターが埋もれている所を改めて見ていた。


 「ここアシアナはヤーヌ様の恵みにより出来た村なのです。そして我々、マヌス一族はその封印が解かれないように見守り続けているのです」


 男の話を聞きながら先を進んでいくと、一軒の大きな建物が見えてきた。そして、すれ違う人々が男に向け「お帰りなさい、長老」と言葉を掛けている。


「おっちゃん、長老さんやったんか?」

「はい。アシアナの長老・セトルといいます。さ、着きました。どうぞ中へ」


 セトルに言われ、先ほど見た大きな建物の中へと入っていくTrashとD。

 砂漠の空に輝く太陽はやや傾き始めていた。





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