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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
4/76

Episode 004【スキルと空と】

 TrashとDは一路〈アンダー・アイス〉を目指し歩いていたが、Trashの提案で今のうちにお互い自分のスキルを確認しておこうという事になった。そして今二人はスキル・コマンドから、それぞれ自分のスキルを見ていた。


「戦う時にいちいちコマンド開いて、選択せなあかんのってめんどいなぁ。」


Dは自分のスキルを見ながら呟いていた。一方、Trashは黙々とスキルの内容を見ていた。ほとんどのゲームには、スキルの内容の中にスキル名とどういったアクションをおこすかが書いてある。Trashはそれを何度も見直していた。


「初期段階やからスキルもそんな数ないな。逆に今はそっちの方がええけどな。」


そう言いながら、Trashはスキル・コマンドを閉じ始めた。


「どうゆうこっちゃ? ようけあった方がええやんけ。」


不思議そうな顔をしてDがTrashに話しかける。


「いや、少ない方がええやろ。特にお前は。」


Trashの言葉を聞いて、さらに不思議そうな顔をするD。


「まぁ、よう見とけ。」


Trashはそう言いながら、5メートルほど先に生えている木に弓を構えた。


「トリプリケートっ!!」


Trashの叫びと同時に矢が放たれる。

それを未だ不思議そうな顔でDが見ている。


「…お前、何しとんじゃ?」


首を傾げながらDが尋ねる。


「まぁ、あっこの木ぃ見てこい。」


Dは言われるまま、矢が放たれた木の方に歩いて行った。


(やっぱし、そうなんやな。多分あいつには見えてへんやろけど、ちゃんと矢が3つ連射して放てたわ。)


Trashは何かを確信していた。すると木が生えている方からDの声がする。


「なんじゃこれ!? 矢が3つ刺さっとるやんけ!! これ、お前のスキルなんこ?」

「せやぞぉ。」

「お前いつ、3つも矢放っとってん!? すげぇな!!」


(いや、驚くトコそことちゃうやろ…。)


呆れるような顔をするTrash。

そこにDが矢を持って戻ってきた。


「ほれ、矢。」


Dが矢をTrashに渡しながら話を続けた。


「トリプなんちゃらってのが、さっきのスキルなんか?」

「せや。あと撃った矢やけど。この普通の矢やったら、もう取ってこんでもええぞ。」

「なんでや? 矢が無くなったら、もう撃てへんやんけ。」

「え〜っとな…。」


(ああ、説明すんのめんどくせぇなぁ…。)


疲れた表情でDの方を見るTrash。


(まぁ、こいつのおかげで分かった事やし。こんなん今に始まった事ちゃうから、ええか。)


そして、Trashは説明しだした。

何故スキルの確認をしたのかや矢を取ってこなくてもいいと言った事などを。きっかけはDが鞄から直接、地図を取り出せた事にある。ゲームにおいては行動の殆どがコマンド選択またはボタン操作である、Trashは今までここの世界もそうであろうと思っていた。しかしDはここがゲームの世界であると感じながらも、その天然故かコマンド選択せずに地図を取り出した。Trashからすれば、その行為は「取り出せた」となったのである。そして、ある疑問が頭に浮かんだ「ゲームの世界でありながらも、現実世界のように行動出来るのでは?」と。さらに改めて思い直してみると、ここにはコントローラーがなくボタン操作が出来ないのにも関わらず俺はDと「話が出来ている」という事にも気が付いた。普通に考えれば当たり前の事だ、喋れば声が出て会話が出来る。しかし、ここが完全にゲームの世界ならばボタン操作が無ければ不可能ではないかと。そしてTrashはスキルがコマンド選択無しでも発動出来るか試してみる事にした。それは、ここの行動に関する疑問を確認する為と今後の為にであった。


「って、事やねん。」


Trashの言葉に反応しないD。


「…お前、途中から訳分からんくなって話聞いてへんだな。」


黙って頷くD。

はあっと深くため息をつくTrash。


「まぁ要するに。スキル使いたかったら、技の説明読んで名前覚えとけって事やろ?」

「…もう、それでええわ。」


Trashは遠くの方を見るような目でDを見た後、空を見上げて思った。


(頑張ろう…。俺、頑張ろう。)






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