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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
39/76

Episode 039【砂漠の食物連鎖】

 〈アンダー・アイス〉を旅立ってから、何週間か経った頃。

 TrashとDは〈ダナキル砂漠〉という所をひたすら歩いていた。



「なぁ」

「……」

「なぁって」

「……」

「なぁって、言うとんやん!!」

「なんやねん!? くそ暑いねんから黙って居れんのこ、お前はっ!?」


 Trashに怒鳴られるD。


「この砂漠いつまで続くんやぁ?」

「そんな事、知るか!!」


 Trashの言葉にうなだれるD。


「もう歩き疲れたわぁ」

「……」

「しんどぉ」

「……」

「こん……」


 Dが喋ろうとした時、食い気味でTrashが言葉を返した。


「ほんまに、お前はうるさいのぉ」

「にしても、疲れたわ」

「さっきも言うたけど、くそ暑いねんから黙っとけや!」

「俺は暑いの大丈夫やし、それよか歩き疲れてんて」

「それは何度も聞いたわ!!」


 二人は日除けの為に麻で出来たフード付きのマントを羽織り、太陽からの日差しを避けていたが。それでも〈ダナキル砂漠〉の気温は暑く、Trashを苦しめていた。


「こんな事やったら、馬とかやどっかで雇っとったら良かったんやて」

「ほんまにうるさいやっちゃやのぉ。それに馬は雇うんやなくて、笛買って呼ぶんや」

「何それ!? 馬を呼ぶ笛なんかあんのこ? 何で、それ買わんかってん?」

「それなりに高いから、別に要らんやろう思たんじゃい!」

「マジでかぁ……、馬欲しかったなぁ」


 肩を落とすDを見るTrash。


「なんやお前、そんなに馬に乗りたかったんこ?」

「うん……」

「馬なんか、小さい時に乗った事くらいあるやろ? 動物園的な所で」

「写真にはあるんやけど、全然その時の事覚えてへんねん……」

「あぁ……、お前アホやもんな……」

「せやねん……」

「まぁ、さすがにきついから。次、街か村見付けたら馬呼ぶ笛買おかい」

「マジで!?」

「おう」

「おっしゃ!! せやったら、先急ご!!」



 Trashの言葉に先を急ぎ出すD。

 しかし、しばらくしてDがまたTrashに声を掛けてきた。



「なぁ、トラ?」

「……」

「なぁって」

「……」

「なぁって、言うとんやん」

「なんやねん!? まだ何かあんのこ!?」

「やなくて、さっきから後ろに見える黒いのんて一体何や? あれ?」


 Dに言われて、後ろの方を見るTrash。そこには曇り雲が砂漠の地を這うかのように黒い大きな物が、こちらに来ようとしていた。


「何や? あれ?」

「この世界特有の気象現象か何かなんかな?」

「どやろなぁ?」


 その様子をしばらく眺めていた二人だったが。その正体に気付き、走り始めた。


「なんやねん、あれ!?」

「デカすぎやろ!!」


 二人が見た大きな黒い物体は、全長2メートルは優に超える蟻の集団であった。その蟻の軍団が二人を目掛けて追い掛けて来ていたのである。


「アカンて、あんなん」

「たまにはキリギリス見習って、サボれよ!!」


 必死に蟻から逃げる二人だったが、とうとう追いつかれてしまい。取り囲まれる二人。


「軽く200は居りそうやな」


 周りの蟻を見るD。そして背中から大剣を取り出し始めた。その側でTrashも弓を構え始めていた。


「こうなったら、やるしかないな」


 そして蟻のステータスを確認する二人。そのモンスターの名前はアントリアとなっており、レベル自体は二人よりも低かった。


「レベルは俺らより、低いけど」

「数がやべぇな」


 そして蟻達に向かっていく二人。二人はこの旅で様々な敵との戦いを経て、キャラクターのレベルとは関係なく戦闘に関して上手くなってきていた。次々とアントリアを倒していくTrashとD。


「D、こいつらの攻撃受け流すか躱すかにしろ!」


 アントリアの攻撃を避けながら、Trashが叫ぶ。


「せやな! こいつら蟻だけあって、めっちゃ力は強いな!」


 Trashに言葉を返しながら、アントリアの攻撃を大剣で受け流すD。

 二人の戦いは、少し変わっていた。それは関西人の性なのか? 二人特有の物なのか?

 よく分からなかったが。二人はどんな戦いにおいても、ずっとお互いに喋り合っていたのであった。


「こんなデカい蟻さんも、やっぱ女王蟻の言う事には逆らえへんねやろな」

「ヤやのぉ。俺は絶対、女のケツには敷かれたくないわ」

「こんだけ働き蟻がデカいと、女王蟻もバカデカいんやろな?」

「……想像してもうたやんけ、キモい事言うなや」


 そうこうしている内にどんどんとアントリアを倒していく二人。


「だいぶ数減ってきたな?」

「このままスキル温存して、最後まで行くぞ」

「おうよ」


 すると二人とアントリアの周りの砂が渦を巻き始めた。その渦は至る所で現れだした。


「おい、これって……」

「やろな……」


 二人の想像通り、そこから現れたのは蟻地獄の形をしたモンスター達であった。


「なんやねん!? この虫祭りはぁ!?」

「さすがにあんなんに飲まれたら、どうしようもないぞ!!」


 渦から出てきたモンスター達は、まず倒れているアントリアから渦の中へと取り込み始めた。その様子を見て、騒ぎ始めるアントリア達。


「今のうちに逃げっぞ!!」


 Trashの呼びかけに、Dが走り出した。それを見てTrashも、その場から走り去っていく。なんとか逃げ切る事が出来た二人は、岩場の陰になった所で腰を下ろし休んでいた。


「ここのモンスターって、虫みたいなんばっかやの」


 うんざりした声でTrashに話し掛けるD。


「せやの。最初のうちは、デザートワームばっか出てきたもんな」


 同じようにTrashが、それに応えた。


「とりあえず日も暮れだしよるから、今日はここでテントやな」


 そう言って、鞄を開けテントの用意をし始めるTrash。それにDが "せやな" と応え、鞄を開け始めた。何度もテントを張ってきた二人は、手際良く作業を進めた。この旅で、二人にはある程度の役割分担も出来ていた。Dは全く料理が出来ないので、料理に関してはTrashが全てを行なっていた。その代わり、Dは洗い物全般を行っていたりしていた。

 Trashが料理をするのを見るD。


「お前、凄いよな」

「何が?」

「いや、料理出来るやん」

「こんなん料理言う程の物ちゃうやろ?」

「いや、それでも俺には絶対出来ひんからな」

「せやな。一回、お前の作ったもんがどんなもんか試しに食うてみたけど。あれは最悪やったな」

「やろ!?」

「あんなん、食費の無駄になってまうからな」

「ほんまそれな」

「ほれ、出来たぞ。皿出せ、皿」

「あいあい」


 日が暮れた空を見ながら、ご飯を食べる二人。


「ここ来る前に居った街から、何日経ったんや?」


 肉を頬張りながら、Trashに話し掛けるD。


「さあのぉ? 10日くらいかな?」

「普通の生活やったら考えられへんくらい、風呂入ってへんの俺ら」

「やな。その割にはあんまし汚れとる感じもせんけどな」

「それ、俺も思た。やっぱ、この世界独特のもんかな?」

「どやろな? まぁ、明日には村に着くけどな」

「そうなん?」

「お前、相変わらず地図見ぃへんのぉ。もう地図に、村の名前出てきとるぞ」

「せやったんか」

「それにしても、俺らがこんな旅しとるけど。フェーの奴は大丈夫なんかの?」

「女性に風呂無しは可哀想やな」

「また会うた時にフェーから色々話し聞こか」

「せやな。椿さんとはどうなったとかな」


 そう言って、笑う二人。

 そんな二人の上には壮大な星空が広がっていた。






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