Episode 030【旅の支度とオッサンと】
〈アンダー・アイス〉の街に来てから、様々な事があったTrash達。
旅の準備を始めてから一日が経った彼等は、久々の平穏な日々を過ごしていった。
「おい、トラ。これ、どうや?」
そう言ってDは、手にしている武器をTrashに見せてきた。
Dが見せてきた武器を見るTrash。
そして "またか…。" と呆れたような顔をした。
「お前な、それ買うたら。他に買うもんが買えへんくなるやろがい。ええ加減、覚えろよ。」
Trashに言われて、手にしている武器のタグを見るD。
「高っ!? あかんなぁ。これや!って思ったやつは、ことごとく高いやつばっかやんけぇ…。」
Trash達は旅の出発に向け。
今〈アンダー・アイス〉の商業地区にある武器屋の一つに来ていた。
「道中、どんなモンスターが出てくるか分からへんから。今持っとるもんとあんま大差無いもんもやめとけよ。」
嘆くDに対して、棚に並んである武器を物色しながらTrashが声を掛けた。
「はぁ…。昨日は昨日で大変やったのに、今日もかぁ…。」
Trashの言葉に更に嘆くD。
「昨日はDが余計な物ばかり買おうとするから、大変だっただけじゃん。」
武器屋の店主に、会計を済ましてきたフェルが話し掛けてきた。
「えっ!? フェル、もう買うたん!?」
「Dが遅過ぎるんだよ。」
「ってか、他にも回るとこあるから。早よせぇよ。」
そう言って、武器を手にし店主の方へとTrashが向かって行った。
「トラも、もう決まったんこ!?」
Trashを見て、Dは急いで武器を物色し始めた。
「はぁ…。何か、すげぇ疲れるわぁ…。」
武器屋から出てきたDが呟く。
「自業自得じゃん。明日には出発するんだから、今日中に全て買わなくちゃいけないんだからな。この、アホD。」
「さっきのとアホと、関係ないやろ!」
「…いや、あるだろ。」
Dとフェルの話しを聞きながら、マップを見るTrash。
「あと防具屋で防具買うんと酒場で食料品買うだけやから、安心せい。」
「あれ? トラ達は地図買わないの?」
「ほんまや! おい、地図はええのんか、トラ?」
防具屋の場所を確認しマップを閉じるTrashが、二人に答えた。
「ヴァンの話やったら。俺らが向かう研究所って、かなり遠い所にあるみたいやねん。やから、ある程度の金も残しとこうと思てな。」
「そうなんだ。」
「そうなんこ。」
「おい、アホD。何、他人事のように言ってるんだ? お前もトラと一緒に行くんだぞ。ちゃんと分かってるのか?」
「それくらい、わぁっとら!!」
そして防具屋に向かい歩き出す、Trash達。
街を歩いていると、ある事に気付きだした。
「何か、若干プレイヤーの人達の数が減ってない?」
「なんでなんやろな?」
「大方、クエストしたりしとんのとちゃうか?」
「あ、そっか! 昨日、ベルベル達からクエストの事聞いてたんだった。」
「フェル。いつからベルキンさんの事、ベルベルって言い出したんや?」
「昨日からだよ。」
「…そか。」
「ベルキンさん達の話やと、ギルドホールと酒場、宿屋でクエストの受注が出来るみたいやからな。」
「でも、まさかギルドホール自体がギルドだったなんて。思ってもなかったよね。」
「元々はモンスタースレイヤー達の為のギルド "スレイヤー・オブ・ギルド" って話やったっけ?」
「うお! お前、ちゃんと覚えとったんか? ってか、話理解出来とったんやな?」
「お前ら、俺をどこまでアホやと思っとんねん!? 俺はそこまでアホやないぞ!!」
「せやな。お前は天然やもんな?」
「天然ちゃうわい!! 百歩譲って、変なだけや!!」
「D変態だもんな?」
「 "態" はないわい!! ってか。何、さり気に "ド" を "D" に変えとんねん!!」
「でも、よう考えたもんやな。ギルドホールが各地の酒場や宿屋と提携して、クエストの募集と発注を頼んどるなんて。」
「中にはギルドホールが置かれていない街や村もあるもんね。」
「お前ら…、俺の話無視かい…。」
「俺らのようなプレイヤーは、至る所に旅に出よるやろし。街や村に着いたら宿取るために宿屋行くか、飯食う為に酒場に行くかのどっちかやからな。」
「ま。僕達は誰かさんの所為で、初クエストを体験させられたけどねぇ。」
そう言って、Dの方を見るフェル。
「申し訳ないとしか言えへんわ。」
それに対して、Dはすまなさそうに答えていた。
「おっしゃ! 着いたぞ、お前ら。」
防具屋に着き、TrashはDとフェルに声を掛けた。
その防具屋には〈ヴォルケファーデン〉と書かれていた。
「ここも、ヴァンに教えてもうた店なんか?」
「そうや。ええもんがあって、比較的格安で買えるトコらしいわ。」
「こんな世界なのに、同じ物で値段が違ったりする所は現実世界と一緒だね。」
「それにしても…。」
〈ヴォルケファーデン〉が在る辺りを見るD。
「よう、こんな見付かり難い所で店なんかしとんな?」
「ほんとだよね。僕達はヴァンに教えてもらったから分かったけど、他のプレイヤー達なんか気付かないんじゃない?」
Dの言う通り〈ヴォルケファーデン〉が建っている場所は、街の通りから外れた狭い路地に入っていった所に存在していた。
「トラ、ホンマにここで合うとんのこ?」
Dに聞かれて、ヴァンフリートから貰ったメモを鞄から取り出すTrash。
「ここで間違いないぞ。」
「そないか。うんなら、行こかい。」
そして店の中へと入っていく三人。
中に入ると、店内の様子は至って普通であった。
「なんや、普通にちゃんとした店やんけ。」
店内を見渡すD。
「本当に何で、こんな所にお店出したんだろね。」
Dとフェルが話していると店の奥から店主が出てきた。
「お前達、モンスタースレイヤーだな?」
店主は出てくるなり、早々にTrash達に声を掛けた。
「せや。」
Trashの返事を聞いて、店主は腕を組んで何やらブツブツと独り言を言い始めた。
それを不思議そうに眺める三人、すると微かに店主の独り言が聞こえてきた。
「…どうして、ここがバレちまったのかなぁ? でも、客だしなぁ。仕方ねぇ。」
「おい、トラ。今あのオッサン、仕方ねぇっつっとったぞ。」
「うん。僕も聞こえた。」
「何かややこしそうな所をヴァンに教えられてもうたな、俺ら。」
店主の言葉について話している三人に、店主が話しかけてきた。
「お前達、ここはモンスタースレイヤー相手に商売してる所じゃねぇんだよ。はっきり言って、俺は在庫少ない商品をお前達に売りたくはねぇ!!」
「客に対して、どえらい事言うな。オッチャン。」
店主の言葉にビックリしつつも笑ってしまうD。
「僕達に売らなくて、一体誰に売るって言うのさ?」
Dとは違い、店主に噛み付くフェル。
「街の奴等にだよ。その為に利益がギリギリでも安く売ってるんだ。」
「ほんなら、オッサンは俺らに防具を売ってくれへんのか?」
Trashの言葉を聞いて、店主はDを指差して話し出した。
「確かに、そこの兄ちゃんが言った通り。この店に来た以上、モンスタスレイヤーであろうとお前達は客だ。」
「それなら、売ってくれても良いじゃん。」
「悪いな。坊主、俺はモンスタースレイヤーには売りたくないんだよ。」
店主の言葉に対してフェルが、また噛み付いた。
「僕は女だ!!」
「何!? そうなのか? それは悪かった。」
フェルに謝る店主にTrashが声を掛けた。
「ほんなら、どうせえっちゅうねん?」
Trashの言葉を聞いて、店主がニヤリとした。
そしてポケットから、何かを取り出して三人に見せてきた。
「ここは、これで勝負といこうじゃないか!」
店主の手の平にある物を覗く三人。
『サイコロ?』




