表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
29/76

Episode 029【ヴァンフリートの正体】

 ヴァンフリートは部屋の窓の縁に腰を掛け、空を眺めていた。

小雨づいていた空は今は晴れ、空には昼の日差しが輝いていた。


「おい、ヴァン。」


下からヴァンフリートを呼ぶ声が聞こえる。

その声には聞き覚えがある。

ヴァンフリートは下を向いて、声の主を確認した。


「ちょい、話し出来っか?」


ヴァンフリートが下を向くなり、Trashは更にヴァンフリートに言葉を掛けた。


「ああ、良いぜ。」


ヴァンフリートの返事を聞いて、Trashは建物の中に入っていく。

しばらくしてヴァンフリートが居る部屋のドアが開き、Trashが入ってきた。


「何となく、来るんじゃないかって思ってたよ。」


部屋に入ってきたTrashにヴァンフリートが声を掛けてきた。


「そないか。」


ヴァンフリートの言葉に言葉少なく答えたTrash。

Trashが椅子に座ったのを見てヴァンフリートが声を掛けた。


「それで、何から聞きたい?」


ヴァンフリートの言葉にTrashは前置きを置いた。


「ヴァン。俺は別に怒っとる訳でも、お前を責めに来た訳でもない。ただ、話を聞きたいだけや。」


Trashの顔を見て、ヴァンフリートは謝った。


「すまん、悪かった。」


その言葉を聞いて、Trashは話し始めた。


「ヴァン、お前は一体何者なんや? お前が気を失っとる間に、Dから色々聞いたけど。お前とネルソンは知り合いなんか? それに魔法も使えるって、どういう事なんや?」


Trashの言葉に少し間を置いて、ヴァンフリートが答え始めた。


「一体、何処から話したら良いだろうな…。ただ、これだけは言える。俺は学者さ。初めに出会った時に、そう言っただろ。その言葉に嘘はないよ。」

「ただの学者が盗賊団の一味と知り合いなわけないやろ!? それに魔法も使えて。ヴァン、本当の事を教えてくれや。」

「俺はお前に一回も "ただの" 学者なんて言っていないよ。」

「俺は言葉遊びをしに来たんやないぞ、ヴァン!!」

「別に言葉遊びをしているんじゃないさ。お前が俺と初めて出会った時に、俺は何について研究しているって言ったか覚えてるか?」

「この世界の伝説や、不思議な現象について調べとるって言うてたぞ。」

「なんだ、ちゃんと覚えてるんじゃないか。」

「それと今の話と何が関係あんねん?」

「それが、あるんだよ。俺はお前やD達に嘘を言った事は一度もないさ。ただ、俺の全てを話していなかっただけなんだよ。」

「どういう事や?」

「今なら話しても良いと思えるが、あの時はそうじゃなかったんだよ。その理由は、お前達がモンスタースレイヤーだったからだよ。」


ヴァンフリートの言葉に驚くTrash、そしてヴァンフリートにある事を聞いた。


「お前もモンスタースレイヤーが嫌いなのか…?」


Trashの問いに、ヴァンフリートは深く溜息を吐いてから答えた。


「はあ…、嫌いじゃないさ。俺は憎かったんだよ。俺はモンスタースレイヤーの全てが憎かった。…だが、今はその全てが憎い訳じゃない。」


ヴァンフリートの葛藤するかの様な表情を見て、Trashが声を掛けた。


「ヴァン、お前に一体何があったんや?」


自分の事を心配してくれているTrashに、ヴァンフリートが話し掛けた。


「宿屋で話した戦争の話、覚えてるか?」

「イディアの大戦争の事か?」

「その戦争な10年近くも続いたんだよ。」


ヴァンフリートの言葉に相槌をするTrash。

しかしヴァンフリートは、それとは関係なく話を続けていった。


「その戦争には至る国の名だたる騎士団が参戦していた。しかし中には自国の軍事力では、到底それに対抗する事が出来ない国々もあったんだよ。そんな国々は各地から傭兵を募っていった。初めの内は力自慢や野党崩れの連中が傭兵として戦争に参加していった。次第に戦火が広がっていくと、戦争で一旗揚げようとする連中が沢山集まってきた。そして、それはいつしか各々が結束していき。傭兵集団という形になっていった。イディアの大戦争で特徴的な所は、その傭兵集団達が数多くの戦果を上げていった事なんだよ。そして、その集団は戦火に巻き込まれた村や街を襲い。略奪、暴行、強姦、殺戮、様々な事を行っていた。俺の村もその集団の一つに襲われた。今から14年前の事だ。その時、俺は5つだった。俺の村を襲った傭兵集団も他と同じようにしていた。だが他と違った所もあったんだよ。年寄り達は殺されたが、女達は人身売買にあい。俺達、子供はその傭兵達に拐われていった。そして、ある収容施設みたいな所に閉じ込められていった。初めの内は何が何だか分からなかった、それもそのはずだ。人が減っていってはいるけど、また新たに人が来るんだから気付くわけがなかった。そして俺の番が来た時になって分かったんだよ。それはそこに連れられてから半年が過ぎた時の事だ。俺は傭兵の一人にある部屋に連れて行かれた。そこには人一人がゆうに入る事が出来るガラス製の筒が幾つも並んでいた。その中には緑色に光る液体が入っていて、その中に何かが浸かっているは分かっていたんだ。しかしそれが何なのかは、はっきりとは分からなかった。そして俺がその筒の側に連れて行かれた時、それが何だったのか分かったんだ。その筒の中に居たのは、俺と同じように拐われてきた子供達だった。俺はびっくりして、周りを見渡した。すると中には人の姿には見えないような奴等も容器の中にいた。そして、俺を連れてきた傭兵が言った "お前もあれと同じようになって、この戦争で買われていくのさ" ってな。」


ヴァンフリートの話に、驚きを隠せないでいるTrash。

そしてTrashはヴァンフリートに聞き出した。


「それで、ヴァンはどうなったんや?」


ヴァンフリートは一度Trashの方を向いてから答え出した。


「俺は、この事を後になってから知った事だし。お前達にも、もうすでに話したが。その時、イディアの大戦争においてモンスタースレイヤーが深く関わっているんではないか?という話が至る国々の中に起きていた。そして幾つかの騎士団がその事を調べ始めた。俺を拐っていった傭兵集団は、その事を知り。その施設の全てを抹消し始めたんだよ。そして、そいつらは幾つかある施設の全てを燃やし始めた。俺が容器に入れられてから、数日が経った時の事だ。これも後になってから分かった事だが、俺が化物と化するのには3ヶ月ほど液体に浸らないと駄目だったらしい。運良く俺の入っていた容器が倒れ、壊れた事により俺は意識が戻り。燃え盛る施設の中を逃げ出していった。」

「ヴァンを拐っていた傭兵達が、モンスタースレイヤーだって言うのか?」

「そうだ。その集団の全員がって訳じゃないが、そこの長や幹部達はそうだ。」

「そいつらが拐っていった子供達を化物にさせ、戦争の道具として売買されていたってのか?」

「信じられないか?」

「信じれへんて言うか、何て言うたらええんやろな…。」

「Dから聞いた話の中に、俺が不思議な道具を使っていたってのなかったか?」

「聞いたぞ。」

「それも、古代の文献を元に俺が作った秘薬さ。」

「秘薬?」

「俺が魔法を使えたのも、その秘薬のおかげなのさ。」

「どういう事や、ヴァン?」

「この世界における伝説や不思議な現象の中には、そういった秘薬が関係するものもあるんだよ。俺達を化物の様にした秘薬も、ちゃんと存在する。禁術として記されている物だったけどな。」

「そんなんが至る処に存在するんか?」

「現物としては、そうそう無いだろうよ。俺みたいに作る奴が居ない限りはな。」

「道具屋とかには売ってへんのか?」

「そんな所なんかには売ってねぇよ。秘薬の存在自体知らない奴が大半さ。」

「なるほど。話それてしもたけど。お前が居った施設にネルソンも居ったんやな?」

「正確には、俺が逃げ出した時に奴を見たのさ。燃え盛る施設に対して、奴は魔法で更に燃やそうとしていた。」

「そうなんか。」


ヴァンフリートの話を聞いて、下を向くTrash。

しかし、ある事に気付いてTrashはヴァンフリートに声を掛けた。


「それでも、おかしいないか? 何で傭兵しとったネルソンが今は盗賊なんや?」

「さあな? 俺もよく分かってはないんだよ。ただ何かしら理由があるんだろうよ。それに…。」

「それに、何や?」

「実際、ネルソン達や傭兵時代から居る連中が自分達の事を "黒の盗賊団" なんて言ってはいないみたいだしな。」

「そうなんか?」

「俺の情報力舐めんなよ。それに最初は "クロノ盗賊団" って呼ばれていたらしいんだが。いつしか、それが黒の盗賊団になってたって話さ。」

「なんや? そのクロノってのは?」

「クロノ・ス・ドヴェイン。アインツヴァイン傭兵団の長だよ。そして俺を拐った傭兵集団の長。」

「そういう事か。」

「それにしても、まさか騙しやすそうなお前達の所為で。俺の考えが変わるとはな。」

「騙しやすそうって、どういう事やねん? ノボリト研究所って話とか嘘やったんか?」

「騙しやすそうは語弊があったな、利用出来そうなお前達だな。それに俺はお前達に嘘は一回も吐いちゃいないって言っただろ?」

「それ、どういう事や?」

「前に話したままさ。この世界について俺も知りたいから協力したんだよ。深く言えば、それでモンスタースレイヤーの何かが分かるかもしれないと思ったからな。例えば弱点とか。Dに関しては、俺が黒の盗賊団を潰したいから協力しただけの事さ。俺は例の秘薬に浸かったおかげで、他の人間よりは再生能力が高いからな。仮初めの魔術師の副作用も他の人間に比べて、気にしなくて使えるからな。」

「宿屋でも言うとったけど。その仮初めの魔術師ってのは何なんや? さっき出てきた秘薬の一つなんは分かったけど。」

「簡単に言えば、誰でも魔法が一つ使えるようになる秘薬だよ。調合次第で使える魔法は変わってくるし、魔法を使用すればするほど身体に負担が掛かってくるけどな。それに副作用もあるし。」

「そうなんか。副作用ってのは、熱が出るって事なんやろ?」

「高熱が出るようになるのは、俺の場合だけだよ。」

「どういう事や?」

「俺は他の人間より再生能力が高いって、言ったばかりだろ? 普通の人間が使うと生死を彷徨うさ。運が悪ければ死に至るしな。」

「何が "しな" や!! さらっと怖え事言うな!!」

「ほんと、お前達は俺が見てきたモンスタースレイヤー達と違うよな。」


ヴァンフリートの話を聞いて、Trashはヴァンフリートの鞄に目をやった。


「気になとったんやけど。あの鞄って、俺らの鞄と同じ物やないんこ?」


Trashの言葉を聞いてから、ヴァンフリートも鞄に目やった。


「お前もそう思うか。ここまでモンスタースレイヤーと関わる事が俺も無かったから、今の今まで気にしてはいなかったが。お前がそう思うなら、そうなんだろうな。」

「ヴァンは、あの鞄を何処で手に入れたんや?」

「手に入れたって程の事じゃないさ。俺が施設を逃げ出して荒野を彷徨っていた時に、ある人から貰ったんだよ。"この鞄の中には沢山の食糧と飲み物が入ってあるから持って行け" って言われてな。実際、驚く程の食い物と飲み物が入っていたよ。その鞄の見た目とは裏腹にな。」

「って事は?」

「そうみたいだな…。俺が野たれ死なずにこれたのは、名も知らぬモンスタースレイヤーのおかげだったって事だな。」

「それで、ヴァンはこれからどうするんや?」

「とりあえず、俺の住んでる街に帰るよ。今のままじゃ、まだクロノ達を倒せないからな。」

「ヴァン、一人で無理すんなよ。俺らも協力するからの。」

「言われなくても、そうさせてもらうさ。」

「そうか。なら、ええわ。」


ヴァンフリートとの話を終え、部屋から出て行こうとするTrashにヴァンフリートが声を掛けた。


「今回、俺が話した話を他の連中にもするんだろ?」


ヴァンフリートの話を聞いて、Trashが答える。


「まぁ、やんわりとな。」

「そうか。Dにすまないと言っておいてくれ。」

「ヴァン、そんなに気にせんでええぞ。あいつの事やから、明日になったら大半の事忘れとるから。」

「さすがに、うんな事ねぇだろ!?」

「まぁ、そうやったとしても。気にせんでええ。あいつは普通とちゃうからの、ただのどアホやから。」


そう言って、Trashは笑いながら部屋を出て行った。

それを見てから、ヴァンフリートはまた空を見上げた。


「やっぱり、あの人もそうだったんだな…。」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ