表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
27/76

Episode 027【ネルソンの言葉】

 〈アンダー・アイス〉を背にし、森に向かい走る二人。

その二人の後を20体近くのハウンドウルフが追いかける。


「ウォー・グリーフを、そんな風に使うなんて。そのTrashって人、よく思い付いたわね。」


隣を並走するベルキンに話しかける椿。


「本当だね。このままハウンドウルフを引き連れて、王都梯団に先回りしないと。」

「それで兵士達とハウンドウルフを鉢合わせさせるのが、ベルキンの役目なんでしょ。それ、さっきも聞いたよ。」

「そうだっけ?」

「そうだよ。それ聞いたから、ついてきてるんじゃん。」

「あ、そうだったね。」

「本当ベルキンって、たまに抜けてる所あるよね。王都梯団にハウンドウルフを鉢合わせさせるのは良しとして、アンタまで兵士達に見付かったら意味ないでしょ。」

「でも椿にしては珍しいよね。」

「何が?」

「だって椿って、他人に意外と冷たいでしょ。フェルさんにフレンドの事教えた時も、ビックリしたけど。この世界に来てから、椿変わったよね。」

「別に何も変わってないわよ。」

「じゃあ、どうして手伝ってくれてるの?」

「そのTrashって人と一緒に居るんでしょ、フェルちゃんも?」

「フェルちゃん? そりゃあ、Trashさんと一緒に盗賊達と戦ってるよ。」

「だから私は手伝ってるの。」


そう言って、嬉しそうに笑う椿。

それを見てベルキンが椿に話しかけた。


「あれ? 椿もレズだったっけ?」

「違うわよ! ジャンヌと一緒にしないでよ。」

「じゃあ、何でなの?」

「だってあの子、ちっさくて可愛いじゃない。なんか良いのよねぇ。」

「…フェルさんの前で、小さいとか言わない方が良いよ。」

「どうして?」

「結構、気にしてる感じだったから。」

「そうなんだ。可愛いのに。」


そして二人は森の中へと入って行った。




ーー


Dの腹に触れているネルソンの手から、ブリッツ・ロートが放たれる。

ブリッツ・ロートの直撃を喰らい、後方に吹き飛んでいくD。

するとDと入れ違うように、Trashがネルソンの元へと飛びかかってきた。

そして右手に持っているダガーをネルソンの顔を目掛け、突き付けようとするTrash。

近くに居たDの体が死角となり、また舞い上がる砂埃の所為で。

自分の元へと近づいてくるTrashの存在に気が付かなかったネルソン。

首を右に振りTrashの攻撃を躱そうとするが、反応が遅れた為に左頬を微かに切ってしまった。

ネルソンはTrashの右手首を掴み、前と同じように投げようとする。


「今、俺を殺せなかった事を後悔させてやる!!」


Trashを睨みつけるネルソン。


「後悔すんのは、お前じゃ、ボケェ!!」


Trashがそう言うと、ネルソンが避けた右側からTrashの左手がネルソンの顔を襲う。

ネルソンの両目を塞ぐように、ネルソンの顔を掴むTrash。


「ブラックアウトォ!!」


そしてTrashはネルソンに投げ飛ばされていった。

急に視界が真っ暗になるネルソン。


「貴様ぁ、何をしたぁ!?」


怒号をあげるネルソン。

すると今度は何かに縛られたかのように、両手足を動かす事が出来なくなるネルソン。



「フェー、奴の左腕をトリプリケートで狙え! 俺は反対側を狙う!」


Trashの声が響く。


「分かった、トラ。」


そして弓を構えるフェル。

Trashもネルソンに対して弓を構え出していた。


『トリプリケート!!』


舞い上がる砂埃を切り払いながら、Trash達が放った矢がネルソンへと向かっていく。


「がぁああああ!!」


辺りにネルソンの悲痛な叫びが轟く。

そして砂埃がはれていき、Trash達の前に完全に姿を表したネルソン。

そのネルソンの両手足は紫色をした棘の様な物が巻き付いていた。

そして腕には矢が深々と突き刺さっていおり、血が滴り落ちている。


「これで、もう奴は攻撃出来へんくなるやろ。」


緊張の糸が切れ、気を抜くTrash。

すると後方からDの声が聞こえた。



「ソードスラッシュ!!」


Trashの横を斬撃が走り去っていく。

そして、そのままネルソンに斬撃がぶつかる。

右肩から左脇にかけて、ネルソンの着ている服が破けていた。

そして、そこからは先程よりも多くの血が流れ出している。



それを見ていたTrashはDの方へと向かい、無言で殴りつける。


「お前、人殺しになりたいんこっ!?」


Dに怒るTrash。

そのTrashの顔を見たDは、俯向くように顔を下に向けTrashに謝る。


「すまん…。」


その様子を見ていたTrashの後ろから、ネルソンが倒れる音が聞こえた。

それに反応してネルソンの方を見るTrash。

ネルソンはバインドアンカーの効果が切れ、地面に崩れ落ちていた。


「僕たちがやった事だけど、これは酷いね…。」


ネルソンの変わり果てた姿を見て、フェルが話した。


「ゲームって分かってても、人を相手にするとな…。」


仰向けに倒れているネルソンを見ながら、ゲッツが答えた。

今までモンスターと幾度と戦ってきた彼等であったが、人間との戦闘は今回が初めてであり。

その結果の衝撃は、あまりにも酷かった。



倒れているネルソンの元へ歩いていくTrash。

そしてネルソンのステータスを確認する。

微かではあるものの、ネルソンのHPは残っていた。


「良かった。」


安心したように呟くTrash。

そしてTrashはネルソンに話し掛けた。


「今ここに、王都梯団の兵士達が向かって来よる。」


ネルソンは目を開け、Trashに言葉を返す。


「その連中に捕らえさせる為に殺さずにいたのか…?」

「そんなんやあらへん。俺は人殺しになりたぁないだけや。」

「甘いな…。 そんな事をしたところで俺は王都梯団の連中に捕まるよりも先に、殺されるだけだ…。」


ネルソンの言葉に驚くTrash。


「どういう事や!?」

「俺も監視されているようなものだ…。」


ネルソンがそう答えると、上空から剣の形をした赤黒い光が降ってきた。

そして光はネルソンの体を貫いた。


「ぐはぁっ!!」


Trashの前に表示されている、ネルソンのステータス。

僅かに残っていたネルソンのHPは0になっていた。



「え、何!? どういう事!?」


悲鳴にも似た声を出すフェル。

息絶えたネルソンを驚きの表情で見ているTrash。


(何なんや!? これは!?)




ーー


城内の一室で椅子に座り、肘掛に片肘をつく男。

その男は肘をついている方の拳の上に自分の顔をのせていた。

そこに別の男が入ってきて、椅子に座る男に声を掛けた。


「呼んだか?」


椅子に座る男は、部屋に入ってきた男に顔を向け答えた。


「ネルソンはしくじったみたいだ。」

「ネルソン? ああ、エルンダ地方に派遣した奴か。弱い奴だったからな。それにしても王都梯団の連中にやられるなんて、呆れて何も言えんな。」

「やったのは、この世界の住人じゃないさ。 と言っても、そいつ等はネルソンにトドメを刺さなかったがな。」

「そういう事か。」


椅子に座る男の話を聞いて、不気味に笑う男。


「この世界でいう所のサロスヌビアの変動再びだな。」


そう言って、椅子に座る男も不気味な笑みを浮かべた。





スキル説明


【バインドアンカー】

魔法の棘を発現させ、敵を一定時間拘束する魔法。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ