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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
24/76

Episode 024【大所帯と小規模と】

 ほとばしる光が杖から放たれる。

その光の奥へ目掛け、黄色く光るDが走っている。

そして手にしていた大剣を振り下ろした。


「ソードスラッシュ!!」



ーー森の中を歩く三人。


「黒の盗賊団?」


話を聞いてきたフェルが疑問を口にする。


「そ。俺があのアホを探す為に走り回っとって得た情報の一つ。」

「その盗賊団のアジトがこの森の何処かにあるっていうのか?」


Trashの話にゲッツが問いかけた。


「たぶんな。その盗賊集団って、ここ最近聞くようになった組織らしくて。その盗賊団の被害報告の中で、最初の方の被害現場がこの森辺りが多かってん。」

「でも、それだけじゃ盗賊団のアジトがあるって分からないだろ?」

「それだけやったらな。」

「そっか、トラはDとヴァンが北門から出て行ったって情報も聞いてたんだった。」

「そ。」

「なるほどな。ところで、そこに辿り着く前に確認しておきたいんだが。そのDとヴァンフリートって奴の特徴を教えておいてくれ、盗賊と間違えてもあれだしな。」

「ヴァンは髪が赤くて…。」


ゲッツにフェルが答えていると、Trashが割り込んだ。


「とりあえず、アホそうに思えた奴がDやわ。」

「いやいやいや、それで判断出来る訳ないだろ。」


ゲッツのツッコミに少し考えてフェルが答える。


「うーん…、出来るね。うん、出来る。」

「ベルキンも言ってたけど。どんなバカなんだよ、そいつは。」

「さすがのベルキンさんもアホやって思っとったんや。」

「意外だね。」

「本当に、それでDって奴が判断出来るんだろうな?」

「心配せんでも、絶対に出来るから大丈夫や。」


Trashの返事に未だに心配そうにするゲッツ。

そんなゲッツにTrashが話し掛ける。


「ところでや。俺とフェーはギルド入っとらんから、その辺の情報よう知らんねんけど。E.C.C.以外にもギルドって出来たりしとんの?」

「意外と出来てるな。俺の所のEnglish.Cafe.Cocoon.は8人しか居ないが、それなりに大所帯の所もあるしな。」

「そうなんだ。」

「大所帯って、どんだけの規模なんや? ここに飛ばされてから、そんなに経ってへんやろ。」

「俺も正確な人数は知らないが。今の所で言えば、一番多くて100人規模のギルドがあるな。その他は30人辺りかな。言っても大所帯のギルド自体、そんなに多くはないがな。大半が小規模ギルドばかりだな。」

「100人!? どんなギルドやんねん、それ。 有名なプレイヤーが創ったとかなんか? そんなギルドがあの街にあったんか、全然気付かんかったわ。」

「ああ、アンダー・アイスじゃなくて違う街に在るんだよ。それに、そこは少し変わったギルドなんだしな。」

「どうして、アンダー・アイス以外に在るギルドの事を知ってるの?」

「ギルドに入ると、ギルド通信っていう新聞みたいなのが配信されるようになるんだよ。それにギルド関連の情報が書いてあるのさ。」

「へぇ、そうなんだ。」

「少し変わったって言うとったけど、どういう事なんや?」

「ああ、それな。何て言えばいいのかな? 強いて言えば、傭兵集団または有名なゲームの酒場みたいな感じのギルドかな。」

「何やそれ?」

「こういうゲームじゃ、クエストクリアするのに一人じゃ難しい事とかあるだろ? あとギルド立ち上げても、仲間集めにも大変だったりとか。逆に特定のギルドに入らずプレイしたい奴らとか、ギルドを立ち上げてリーダーになりたくはないがギルドには入りたいとか。」

「オンラインゲームなら、当たり前にあるようなもんやな。」

「それが、どうかしたの?」

「そういうプレイヤー達の為に存在してるような所なんだよ、そのギルドは。パブリック・アン・リミテッドって言うギルドで略して "P.A.L" って呼ばれてるんだ。」

「パブリック・アン・リミテッドって、どういう意味や?」

「直訳したら "限られた公共の一つ" だな。」

「ますます、意味が分からなくなる名前だね。」

「イントネーションは変わるが、同じ読みでパブリック・アンリミテッドって言う意味もあるんじゃないか?って噂だがな。」

「それやと、どうなんねや?」

「 "限り無い、公共" ってところかな。」

「さっきとは逆だね。」

「どういう事なんや?」

「さあな、俺にも良く分からないとしか言えないな。」

「そのP.A.Lのギルマスって誰なの?」

「フェー。何や、ギルマスって?」

「ギルド・マスターの略だよ。要するにギルドのリーダーって事。」

「なるほど。」

「それで、そこのギルマスって誰なの?」

「それが分からないんだよ。聞いた話じゃ、何人かのメンバーで立ち上げたらしいんだが。それも分かっていない。」

「どういうこっちゃ?」

「P.A.Lに所属してる連中も知らないらしいんだよ。」

「はい?」

「そんなので、ギルドの運営出来るの?」

「とりあえず、今は代わりに違う奴が取り仕切ってるって話らしいな。」

「よう分からん所やな、そこ。」

「変わったギルドだね。」

「ほんとにな。あと有名な所で言えば "聖ラザロ騎士団" って所だな、所属人数は20人半ばってところらしい。」

「今度はまともなギルドっぽいな。」

「そうだな、P.A.Lに比べりゃな。」

「どういう事、それ?」

「これも噂なんだが、聖ラザロ騎士団って実際に存在した騎士団らしくて。変わってるのは、その実際に存在した騎士団の方なんだよ。その騎士団は何十回も戦場に出て行ったんだが、戦闘行為をしたのは片手で数えれる程度しかないんだと。」

「騎士団が戦わんと、何しに行っとんねん?」

「治療活動。」

「治療活動?」

「今で言うところの衛生兵みたいな事をしてたんだと。変わってるだろ? 戦闘に参加した時は毎回負けていたらしいしな。」

「そんなんが実在しとったとはな。」

「それで、ここに存在する聖ラザロ騎士団はどんな事しているの?」

「取り立てて目立った活動はしていないみたいだぞ。他のギルドと同じ感じだな。ただし、そこのギルドに所属している奴らは皆、そこのギルマスに惹かれて入ったらしい。あそこじゃ、ギルマスじゃなくて団長って呼ばれているけどな。」

「人気者なんだね、そこの団長さん。」

「そいつの名前は知っとんのか?」

「ライオネル・エルリック。職業はファイターらしいな。」

「へぇ。」

「どんな奴なんやろな。いっぺん会うてみたいな。」

「まあ、変わったって言えば。俺の所も変わったギルドだしな。」

「英会話教室。」

「あと喫茶店みたいな感じだよね、あそこって。」

「だよな。ベルキンに話を聞いた時は、思わず笑ってしまったぜ。」

「そういえば、僕にフレの居場所を教えてくれた人は何て名前なの?」

「ああ、椿の事か。」

「椿さんて言うんだ、ありがと。」

「ゲッツ達はクエストって言うか、このゲームを進めたりせんのか?」

「一応するつもりだぞ、この世界を知る為にもな。」

「なるほどな。」

「お前達はギルドを創ったり、入ったりしないのか?」

「僕はまず離ればなれになったフレの所に行かなくちゃいけないし、今はギルドに興味無いからね。」

「俺も似たようなもんやな。今んとこギルドが必要とは思わんから、ええかな。」

「なるほどな。」


三人が話しながら森の中を歩いて、しばらくすると先の方から大きな音が聞こえた。

その音に反応する三人。


「今のって。」


フェルがTrashに確認するように目をやる。


「たぶん、そうやろな。」


フェルに言葉を返す、Trash。


「いよいよだな。」


ゲッツが二人に声を掛けた。

そして三人は、音のした所に向かって走り出して行った。

いつくもの木々の中を駆け抜けて行く三人。

視界が開けていくと、その先にDとネルソンの姿が確認出来た。

そしてDはネルソンに向かい大剣を振り下ろした。


「ソードスラッシュ!!」






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