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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
22/76

Episode 022【稲妻と黒の盗賊団と】

 森の中を歩くDとヴァンフリート、二人の歩く先には一軒の建物が見えていた。


「あれが噂の盗賊団のアジトか。」


茂みに身を潜め、Dに声を掛けるヴァンフリート。


「お前、ホンマに学者なんか? すげぇ、情報力やな。」


Dの言葉に笑って答える、ヴァンフリート。


「それにしても、こんな簡単に見付けられんのに。何で王都梯団の人らは未だに盗賊団を捕まえられへんのや?」


Dの疑問にヴァンフリートが答える。


「今居る連中は、最近派遣されてきた兵士達だからな。」

「最近? 前から居るんとちゃうんか?」

「王都梯団で都市などに派遣される兵士達は、原則として5年間の期間ごとに派遣先が変わるからな。」

「そうなんか。」

「まだ街の連中との交流も深くないんだろうな。それで上手く情報も得られていない。」

「そんな事せんかったら、盗賊団なんかスグ捕まえられたんやないんか?」

「そうかもな。以前は期間置きに派遣先が変わる制度は無かったんだよ。でも、その所為で王都梯団の連中自体が悪政をしたりしてたのさ。一部の者達と癒着をしたり徴収する税を実際より高くして至福を肥やしたりしてな。全部の兵士達がそうしていた訳ではないが、そういう事があったのさ。」

「なるほど。」

「まあ黒の盗賊団自体も最近よく耳にするようになってきた連中だから。王都梯団に捕まるにしても、あまり時期は変わりはなかったのかもしれないがな。」


二人が茂みに潜んで話していると建物から誰かが出てきた。

ヴァンフリートとDは見付からないように気を付けながら出てきた人物を確認する。


「エイルや。」


建物から出てきた人物を確認したDが呟く。

それにヴァンフリートが返す。


「お前が言ってた、奴らの一人だな。」


黒の盗賊団のアジトから出てきたのはエイルだった、その顔には傷とアザがあるのが見えた。

そんなエイルは建物から出てくると、外のある薪置き場から幾つかの薪を手にし建物に戻って行った。


「エイル、誰かに殴られたんか?」


エイルを見たDが呟く。


「ダイヤを盗めなかったからかな?」


Dの言葉にヴァンフリートが答える。

ヴァンフリートの言葉を聞いたDが茂みから出て行き、建物に近づいていく。


「おい、D。何やってんだ、見つかるぞ。」


Dに声を掛けるヴァンフリート。

しかしDはそのまま建物に近づいていく、幸いDは誰にも気付かれる事なくアジトまで辿りついた。

Dがアジトの扉の前に居るのを茂みの中から見守るヴァンフリート。


(あいつ、これからどうする気なんだ?)


ヴァンフリートの心配もよそに、Dは黒の盗賊団のアジトの扉を開け出した。


(あの、バカやろう!!)


黒の盗賊団のアジトの扉を開けきったD。


「こらぁあああ!!」


黒の盗賊団のアジトにDの声が響き渡る。

扉を開けると、そこには大きなテーブルを椅子があり。

そして暖炉があり、薪には火が付いていた。

また、そこには三人の盗賊団とエイルが居た。


「誰だ? 貴様は?」


盗賊団の一人が腰に提げていた剣を抜き、Dに話しかけながら近づいてくる。


「D? どうして、お前が此処に?」


エイルもDに声をかける。

しかしDは黙ったままだった。


「威勢が良いのは、最初だけか?」


先ほど声を掛けてきた盗賊がDに刃を向けて話し掛けてくる。

それでもDは黙ったままだった。


「何とか言え…」


再度盗賊がDに声を掛けてきたが。

盗賊が話をしている途中でDが、その盗賊をいきなり殴り飛ばした。

Dに殴られた盗賊がテーブルなどを撒き散らしながら吹き飛ばされていく。

それを見た残り二人の盗賊が武器を抜きDに襲いかかってくる。

Dは、その盗賊二人も殴り飛ばす。

Dに殴られた盗賊達は、そのまま意識を失い倒れている。

それを見て、エイルが再度Dに話し掛けてきた。


「お前、何で此処に来た?」


エイルの話に答えるD。


「エイルは何で盗賊なんかしてんねや? それに、それは誰に殴られたんや?」


Dの話を聞いて、口籠るエイル。

そんなエイルにDがまた話し掛ける。


「やっぱり、何か理由があって盗賊なんかしてんねやな?」


Dの言葉にエイルが答え始める。


「てっきり騙された仕返しに来たかと思ったんだがな。俺達は…」


エイルが話をしている最中で、階段からラムザが降りてきた。

そしてDが居るのを確認したラムザが話し出す。


「さっきの物音の確認をしに来てみたら、お前の仕業か?」


そう言って、ラムザがDに襲い掛かってきた。

それを見たエイルがラムザを抑える。


「おい、エイル。何してんだ?」

「ラムザ、やめろ。」


二人を見てDが倒れている盗賊達を指差しながら話しかける。


「やっぱりエイルもラムザも、そこに倒れとる奴らより強いやんな。」


Dの言葉にラムザが返す。


「それがどうした?」

「それじゃあ、何で盗賊なんかしてんの?」


Dの言葉を聞いて、ラムザの腕を抑えていたエイルの手が緩む。

それに気付いたラムザがDの胸ぐらを掴んで話す。


「お前、一体何しに来やがった?」

「何で盗賊なんかしてんのか聞きに来たんやけど。エイルらはしとんのとちゃうくて、させられてるんやな。」


Dの言葉にラムザがびっくりする。


「エイル、お前話したのか?」


ラムザに首を横に降って答えるエイル。

それを見てラムザがDに話し掛ける。


「アリシアか? アリシアがお前に話したんだな?」

「誰も何も喋ってへんで。」

「じゃあ、どうしてお前はその事を知ってんだ?」

「何となく、そう思って言うただけなんやけど。ラムザも意外とアホなんやな。」

「誰がアホだ?」


二人を見ていたエイルがラムザに声を掛ける。


「ラムザ、やめろ。」

「しかし…。」

「良いんだ。」


ラムザがDの服から手を離す。

それを見てエイルがDに話し始める。


「簡単に騙されるお人好しだと思ってたんだが、やっぱり流石モンスタースレイヤーといったところか。お前の言った通り、俺達は好きで盗賊なんかをしている訳じゃない。」

「それやったら、何でそんな事してんの? エイル達の力があったら、逆に盗賊なんかやっつけられるやん。」


Dの言葉にラムザが答える。


「お前は黒の盗賊団の本当の怖さを分かってないのさ。」

「本当の怖さ?」


エイルがDの疑問に答え出す。


「黒の盗賊団はまだこっちの地域に手を伸ばし始めたばかりだが、他の地域には幾つもの拠点を構える大きな組織なんだよ。そこには俺達でも太刀打ち出来ない程の奴等が沢山居る。ここにも一人、そんな奴が居るんだ。7年前に俺達の村は黒の盗賊団の襲撃に遭い、壊滅させられた。そして俺達は無理矢理に盗賊をさせられているんだ。」

「やったら、街でアリシアさんと三人で居った時に逃げたら良かったやんか。」

「無理だ。アリシアの手首には魔法がかけられたブレスレットがはめられていて、そのブレスレットの所為で居場所が分かるようになっているんだ。」

「そんな…。」


三人が話していると、二階から魔導師の様な格好をした男が一人降りてきた。


「ラムザが上に戻ってこないと思えば、一体何の話をしているんだ? お前達は?」


その男にラムザが叫ぶ。


「ネルソンッ!!」


ネルソンと呼ばれた男にDが話掛ける。


「おい、お前!! エイル達を自由にしろ!!」


Dに目をやるネルソン。


「モンスタースレイヤーが何で此処に居る? エイル、お前達の仕業か?」

「ちゃう!! 俺が勝手に来たんや。」


Dがネルソンに答える。

そんなDにネルソンが話し掛ける。


「お前、うるさいよ。」


ネルソンは持っていた杖をDに向け、青白い稲妻を放った。

稲妻をまともに受けたDは建物の壁を破り、そのまま外まで吹き飛ばされていった。

アジトから吹き飛ばされ倒れているDを、茂みから目にしたヴァンフリート。


(D!? 大丈夫か!?)


しかしDはピクリとも動かない。

そして壊れた壁からネルソンが出てきて、Dに近づいていく。


「駆け出しのモンスタースレイヤーが俺に敵うと思っているのか?」


そう言って、ネルソンは杖を空に掲げだした。


「契約の名の下に汝に集いし精霊達よ。汝の言葉に従い、紅の刃となりて かの者を屠りたまえ…。」


ネルソンが詠唱を始めると、杖の先端に幾つもの赤黒い稲光が走る。

そしてネルソンは魔法の言葉を叫んだ。


「ブリッツ・ロートッ!!」





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