Episode 018【モンスタースレイヤーと呪いと】
空には満月が輝いている。そして〈アンダー・アイス〉の街には風が吹き始めていた。
その中を駆け抜けるTrash達は、急ぎDの元へと向かっていた。
「王都梯団専用地区で捕まってんのに、一体何処に連れて行かれよんねや、あいつは?」
走りながらTrashが、ベルキンに声を掛けた。
「私にも良く分かりません。」
Trashに返事するベルキン。
その様子を見ていたフェルが二人に声を掛ける。
「モンスタースレイヤーってのと、何か関係あるのかな?」
フェルの言葉に確信は無いが、納得する二人。
「それは、何か関係しとんのかもな。」
Trashはフェルにそう答えながら、今日昼間での事を思い返していた。
(街の住人以外にも、俺たちの事で兵士達が何か思とる可能性はあるな。)
するとベルキンが此処に来て感じた疑問を口にし始めた。
「Trashさんとフェルさんは、この世界が本当にワンダー・クロニクルの世界の中だと思いますか?」
ベルキンの言葉を聞いて、顔を見合わすTrashとフェル。
ベルキンは二人の返事を待たず、話を続けた。
「この世界に来て、まだそんなに経っていませんが。私は何かおかしいように感じるんです。それが何かと言われれば、具体的に答えられないんですが。私はギルド設立にあたり、ここのNPC達と沢山話をする機会がありました。それで感じた事なのですが、彼等の言葉にも何か心を感じたんです。」
ベルキンの話を聞いてTrashが聞き返す。
「こころ?」
ベルキンはその言葉を聞いて、Trashの方に顔を向け力強く「はい。」と答えた。
そして、ベルキンは話を続けた。
「これは完全に私が感じた事なので、お二人がどう感じてるか分かりませんが。私はNPC達は、もっとこう空っぽな感じの者達だと思っていたんです。彼等が話す言葉や表に現す表情などは、ただゲームの中の世界観を表現する為の動きでありゲームを滞りなく進める為のものだと思っていたんです。しかし此処に来て実際にNPCの方々に話をしてみると、彼等にははっきりとした感情や声にする言葉にも感情や重みを感じたんです。そして何より、彼等は実際にこの街で暮らす住人達なのだと感じさせられました。」
Trash達に話をするベルキンの表情は真剣だった。
ベルキンの言葉を聞いてTrashがある事をベルキンに話した。
「Dも同じような事を俺に言うてたわ。ここの人らは本当にコンピューターなんか?って。あいつはベルキンさんに比べたら、めっちゃアホやけど。そのせいか変に勘だけはええねん。あいつの脳みそが勝手に生きる為に備えた能力なんかもしれんけど。」
Trashの言葉を聞いてフェルが返事する。
「でも、捕まっちゃってるけどね。」
フェルの言葉にTrashが返す。
「そやねん。あいつの脳みそが必死に頑張ってんのに、あいつはそれすらもスルーしよんねん。一体どこまでアホやねん。」
Dの事を聞いたベルキンがTrash達に質問する。
「Trashさんとフェルさんは、どう思いますか?」
ベルキンの言葉に少し考えてTrashが答える。
「Dに言われた時は判断出来ひんだけど。今日俺もそう感じる事があって、今は7:3の割合でここの人らの事をNPCやないかもって思とる。」
それに続いてフェルが答える。
「僕はまだ道具屋の人くらいしかNPCと話しした事ないから、分からないや。」
三人がこの世界の話をしながら走っていると、上の方からTrashを呼ぶ声がした。
三人が立ち止まり声のした方に顔を向けると、建物の2階の窓からヴァンフリートが顔を出してこちらを見ていた。
三人が自分に気付いた事が分かり、ヴァンフリートがTrashに再度声を掛ける。
「Trash、こんな時間に何やってるんだ?」
ヴェンフリートの言葉を聞いて、フェルがTrashに声を掛ける。
「トラ、知り合いか?」
フェルの質問に答えるTrash。
「今日、昼間に出会うたNPCや。ヴァンフリートって言うんやけどな。」
Trashの言葉を聞いてフェルが驚く。
「あれ、NPCなのか? 普通に人間だな。」
「せやろ?」
そしてTrashがヴァンフリートに返事する。
「俺の仲間が大変な事になっとって、今そっちに向かいよんねん。」
Trashの言葉を聞いて、ヴァンフリートは何かを考えている。
そしてTrash達に「少し待ってろ。」と声を掛けて、窓から姿を消した。
「一体どうしたんでしょうね?」
ヴァンフリートの行動が気になり、ベルキンがTrashに声を掛けてきた。
それにTrashが返事する。
「さあ? 俺もあいつとは出会うたばっかやから、よう分からんわ。」
二人が話していると建物からヴァンフリートが出てきて、三人に声を掛ける。
「お待たせ。それじゃあ、行こっか。」
ヴァンフリートの言葉を聞いて、フェルがヴァンフリートに声を掛ける。
「お前も来るのか!?」
フェルの方を向いて、ヴァンフリートがTrashに質問する。
「Trash、このチビはなんだ?」
ヴァンフリートの言葉に、カチンときたフェルがヴァンフリートに拳をあげる。
見事に殴り倒されるヴァンフリート。
「いきなり、何だ!? この暴力チビ助は!? 痛いだろうが!?」
それを見ていたベルキンが昨日の事を思い出し、ヴァンフリートに声を掛ける。
「凄い痛いですよね。分かります。」
そんな二人をよそにフェルがヴァンフリートに言葉を掛ける。
「僕はチビじゃないし女だ!! 覚えとけ!!」
フェルの言葉を聞いて驚くヴァンフリート。
「マジ!? 何ともまぁ…。」
フェルの体を見回すヴァンフリート。
それに対しフェルが声を掛ける。
「何だ!?」
「マニア好みしそうな奴だな。」
再び殴り飛ばされるヴァンフリート。
そんなヴァンフリートを見下ろしてフェルが声を掛ける。
「ったく。D以上に変態な奴だな、お前は!!」
そんなヴァンフリートを見て、Trashが声を掛ける。
「お前、一体何しに来てん?」
それにヴァンフリートが答え出した。
「お前達が助けようとしている奴って、王都梯団の奴等に捕らえられたモンスタースレイヤーの事なんじゃないのか?」
ヴァンフリートの言葉を聞いて、少し驚く三人。
そしてTrashがヴァンフリートに聞き返した。
「何でそんな事、お前知っとんねん?」
Trashの反応が意外に思えたヴァンフリートが返事する。
「街の連中なら殆ど知ってる事だぞ。今じゃ噂になってるくらいだ。」
「そうなんか?」
さらに聞き返すTrashに、ヴァンフリートが答える。
「お前達、モンスタースレイヤーはもっとここの連中と話をしろ。情報はどんな武器や防具よりも優れた物なんだぞ。」
そんなヴァンフリートを見て、TrashがDの事を話し始めた。
それを聞いてヴァンフリートがTrashに聞き返す。
「そのDって奴を、王都梯団の連中が何処かに連れて行こうとしてんだな?」
ヴァンフリートの話を聞いてベルキンが声を掛ける。
「何か思い当たる事でもあるのですか?」
ベルキンの言葉にヴァンフリートが返事する。
「たぶん、王都梯団の連中は死の泉にDって奴を連れて行こうとしてるんだろな。」
ヴァンフリートにTrashが聞き返す。
「死の泉?」
「ああ。ここから少し離れた所に在る泉で、そこには凶暴なモンスターが居るって噂があるのさ。たぶん、王都梯団の奴等はそのモンスターにDを殺させようとしてるんだろうな。」
その話を聞いてフェルがヴァンフリートに聞き返す。
「どうして? そんな事しなくても処刑とか出来るじゃん。」
フェルの言葉にヴァンフリートは少し頭を抱えて答える。
「どうしてこうも、モンスタースレイヤーの連中は何も分かっていないんだ? いいか。昔からモンスタースレイヤーを殺すと、殺した奴が呪われて死んでしまうっていう言い伝えがあるんだよ。たぶん、王都梯団の指揮官もその事を思ってモンスターにDって奴を殺させようとしてるんじゃないか。」
ヴァンフリートの話を聞いてTrashが不思議がり聞き返した。
「なんで、俺らを殺したら呪われるんや?」
Trashの質問にヴァンフリートが答える。
「さあな、俺にも良く分からないが。ただ、この言い伝えはかなりの連中に信じられてる事は確かだ。それに俺が読んだ文献の中にも良く出てきたしな。」
それを聞いて不安がるベルキンがTrashに声を掛ける。
「一体、どういう事なんでしょうか? そんな事、公式サイトや説明書には書いていなかったですよね?」
ベルキンの問いを聞いてTrashが答える。
「ほんま、ここはどうなってんねや?」
そんなTrashにフェルが声を掛ける。
「とりあえず、今はDを助けに行かないと。」
フェルの言葉に「そやな。」と返事するTrash。
そしてヴァンフリートに〈死の泉〉までの案内を頼んだ。
三人の先頭に立ち走り出すヴァンフリート、その後にTrash達が続く。
先を走るヴァンフリートの背中を見つめながら、Trashが先程の事を思い返していた。
(呪いって、どういう事や? 俺らは、この世界でどういう存在なんや?)




