Episode 015【フェルのフレンド】
お風呂から上がったDは宿屋の食堂に向かっていた。食堂の方に行ってみると、そこにはTrashとフェルが居り楽しそうに話していた。
「トラもフェルも来てたんや。」
二人に話しかける、D。
「お前も来たか。あ、あと この人フェルとちゃうぞ。」
Trashの話を聞いて、きょとんとするD。
そしてフェルの方を見てから返事する。
「フェルやん。」
すると、Trashが訳を話し出した。
「ちゃうねん。フェルそっくりなだけで、フェルやないねん。」
不思議そうな顔をして、Trashに聞き返すD。
「どういう事?」
「俺も最初、フェルかと思ってたけど。この人、ソウって名前の中国の人やねん。何でも語学留学で日本に来てんねやって。」
「そうなんや。」
「お前、サブいぞ。」
「いや、そういう意味で言うたんちゃうから。」
Trashの隣の席に座りながら、もう一度フェルそっくりな人の方を見るD。
「すげぇ、似てんな。」
小声でTrashに話すD。
そしてDはソウに挨拶し始めた。
「はじめまして、Dです。」
すると、ソウがDの方に顔を向けた。
「お前、何見てる? キモいアルヨ。」
ソウの第一声に驚愕するD。
「おい、トラ。ソウさんって、こんな感じの人なん?」
小声でTrashに確認するD。
「いや、俺ん時は普通やってんけどな。」
そしてTrashも小声で返事する。
Trashの返事を聞いて、もう一度ソウに話しかけるD。
「えっと、ソウさんは何処に住んでんの? 日本の生活には、もう慣れた?」
すると、またDの方に顔を向けるソウ。
「何故、お前に言わないといけないアルカ。お前、まさかストーカーする気かアルカっ!? このD変態がっ!!」
ソウの言葉を聞いて、椅子から崩れ落ちるD。
そして床に手を付き、ヘコみ始めた。
そんなDを気に病んで、Trashが話しかける。
「D、大丈夫か?」
「トラ、自分で言うのもなんやけど。俺、第一印象はええ方やのに…。」
「そやな。お前黙ったとったらイケメンやもんな。喋ったら、ただのアホになるけど。」
「俺、ソウさんに何かあかん事したんかな…? それか。俺の顔って そんな変態面なんかな…? 初対面やのにフェルみたいな事言われてもた…。」
物凄くヘコんでいるDを見てTrashが笑い始める。
「あかん。もう我慢出来ひんわっ!」
そんなTrashを見て、Dがまたきょとんとする。
「おい、フェー。もうええぞ。」
Trashがソウに呼びかける。
すると、ソウまで笑い始めた。
「まさか、本当に騙されるなんて。」
先程と様子が違うソウ。
それを見てDがTrashに確認する。
「トラ、どうなってんの?」
「おい、D。ソウを反対に言うてみぃ。」
そう言われて、ソウの名前を反対にして声にするD。
「ウソ…、ウソ? …嘘なんか、これ?」
状況が飲み込めて、びっくりするD。
「相変わらず、騙されやすいやっちゃの。」
嬉しそうに話すTrash。
そんなTrashにDが返す。
「そんな俺を騙しまくっとんのは、お前やろっ!」
それを聞いて笑うTrash。
「Dがお風呂に行ってる間に、トラに頼まれて協力したんだけど。まさか、こんなのに騙されるなんて。」
笑いながら話すフェル。
「ちゃう言われたら、ちゃう思うやん。」
それに返すD。
「無条件に何でも信じんのは、お前だけや。それにしても途中でフェルみたいにって言うた時は、さすがに気付くか? と思ったけど。期待を裏切らへんのぉ、お前は。」
「こっちは裏切らへんつもりなんかないわっ!」
それを見ていたフェルがDに尋ねる。
「Dって、今までどうやって生きてきたんだ? ほんと今まで生きてこれてるのが不思議なくらい、バカだな。」
「普通に生きてきたわいっ!」
「まぁ、D おちょくんのもこの辺にしとこか。」
Trashが話題を変える。
そして三人は朝食をオーダーし食べ始めた。
食べながらフェルに話しかける、Trash。
「フェルは今日、フレさんの情報聞いて回るんか?」
「うん、何処に居るか探さないと。でも、あまり有力な情報は得られなさそうだけどね。」
少し気落ちしたようにフェルが答える。
それを見てTrashが声を掛ける。
「大丈夫や、フェー。何とかなるわい。せやっ! ギルド・ホール行って、English.Cafe.Cocoon.ってギルドのベルキンって人尋ねてみろ。何人か他にもメンバー居てるみたいやから、何かしら分かるかもしれへんぞ。」
「English.Cafe.Cocoonのベルキンね。分かった、尋ねてみるよ。トラ達は今日、どうするの?」
「俺らは、ここの住人に話を聞いてみようと思う。」
「話?」
不思議そうにフェルが聞き返す。
それにDが答える。
「うんとな。俺らプレイヤーが沢山この世界に来た事に、ここの人らは何て思ってるかとか聞いてみようと思うねん。そしたら、ここに来た理由の何かが分かるかもしれへんと思って。」
「なるほど。また何か分かったら教えてよ。」
TrashとDがそれぞれフェルに返事する。
「それじゃ、僕は行ってくるよ。また宿屋でね。」
そう言って、フェルは宿屋を後にした。
TrashとDとフェルの三人は、ここ〈アンダー・アイス〉の街にしばらく滞在する事にし再度宿屋で部屋を取っていた。そして、その時に三人は宿屋が数日間まとめて部屋が取れる事も分かり。一週間、部屋を取っていた。
「ほんなら、俺らも行くか。」
Trashに声を掛けるD。
「悪りぃ。俺風呂入りたいから、先行っといてくれ。」
「あぁ、そっか。お前、風呂まだやったな。オッケー、先に行ってくるわ。」
「悪りぃな。」
「ええで、ええで。ほんなら、後でボイチャしてくれ。」
そうTrashに言い残し、Dも宿屋から出て行った。
そしてTrashも席を立つ。
「とりあえず先に糞するかぁ。」
そう言い残し、Trashはトイレに向かった。
宿屋を出たフェルは、ベルキンを訪ねにギルド・ホールへ向かっていた。
(そういえば、昨日酒場向かってる時にギルド・ホールの建物見かけたな。あれ? 酒場行ってからの記憶が無いな。昨日どうやって宿屋まで帰ったんだろ? ま、いいや。)
フェルが昨日の事を思っていると、いつの間にかギルド・ホールの所まで来ていた。
(English.Cafe.Cocoon.のベルキンって人だったな。)
ギルド・ホールの中へと入っていくフェル。
建物の中は天井が高く、目の前にはロビーの様な所があった。
そして、その中を歩いていくフェル。歩いていくと受付を見付け、フェルはそこに向かった。
「すみません、English.Cafe.Cocoonの部屋って何処にありますか?」
受付の女性に話かけるフェル。
「English.Cafe.Cocoonですね、少々お待ちください。」
そう言って、受付の女性は後ろにある棚からファイルを取り出し調べ始めた。
「2階のNo.17の部屋がEnglish.Cafe.Cocoonの部屋になりますね。あと商業地区にもEnglish.Cafe.Cocoonの建物がありますね。」
「ここ以外にもEnglish.Cafe.Cocoonのギルド部屋みたいな所があるの?」
「はい。建物を用意してこちらに申請して頂ければ、どのギルドでも建物を所有出来ますよ。」
「へぇ、そうなんだ。ありがと。」
フェルは受付の女性と話終え、2階へと向かった。
2階に上がると、そこには沢山のドアがあり。ドアには一つ一つ番号が振ってあった。
17の番号の部屋を探すフェル。しばらく探し歩いていると、No.17のドアが右手に見えた。
(ここだな。)
ドアをノックするフェル。
するとドアの向こうから誰かの声がした。ドアが開くと、そこには男が居た。
「あれ? フェルさん?」
初めて見る男が、自分の名前を知っている事に少し驚くフェル。
「何で、僕の名前を知っているの?」
「昨日の酒場での事を覚えてないんですか?」
「昨日酒場で何かあったの?」
フェルが昨日の事を覚えていない事に気付いた男は自分の名前を名乗り、フェルがここに来た事を尋ねてきた。
「初めまして、私はベルキンと言います。フェルさんは、どうして此処に来られたんですか?」
「あたながベルキン? 良かった。実は僕…。」
目の前の男がTrashに教えてもらったベルキンである事が分かったフェルは、フレンドと逸れてしまった事やTrashにベルキンの事を教えてもらった事などを話した。
「そうですか、Trashさんが。それでフェルさんは逸れてしまったフレンドを探してらっしゃるんですね。分かりました、中へどうぞ。」
部屋の中へとフェルを案内するベルキン。
そしてソファにフェルを座らせてから、他のメンバーを呼びに行った。
(ギルドの部屋っていうより、何かCafeみたいな感じだな。)
English.Cafe.Cocoonの部屋の中を見渡すフェル。
確かにEnglish.Cafe.Cocoonの部屋の中は、現実の世界で目にするCafeの様な内装をしていた。
しばらく待っていると、ベルキンがメンバーを連れて戻ってきた。
「良かったら、何か飲まれますか?」
そう言って、フェルにメニュー表を渡すベルキン。
「何かCafeみたいな所だね。」
先ほど思った事をベルキンに話すフェル。
「そうですね。ここはギルドっていうよりも、気軽に誰でも学べる英会話学校ですから。Trashさんから聞いてませんか?」
照れながらフェルに話すベルキン。
「英会話学校?」
「はい。ここに居るメンバーは皆、元の世界の同僚達なんです。」
「へぇ。そうなんだ。」
ベルキンが呼んできた、他のメンバー達を見るフェル。そしてフェルはベルキンに紅茶を頼んだ。
フェルの所に紅茶が運ばれてくると、フェルはEnglish.Cafe.Cocoonのメンバーに事情を話し出した。
すると、眼鏡をかけた黒髪でロングヘヤーの女性がフェルに尋ね出した。
「そのフレンドさんは、何て名前なの?」
その女性に答えるフェル。
「ギキっていう名前なんだけど。何か知ってるの?」
フェルのフレンドの名前を聞いて、先程の女性が「やっぱり。」と答えた。
その反応を見たフェルが女性に尋ねる。
「ギキが何処に居るか知ってるの!?」
そして女性は答え出した。
「私も逸れてしまったフレンドが何人か居るの。でもハードの方でフレンド登録しておいたから、皆とはチャットで連絡する事が出来たの。それで皆の居場所を聞いてる時に私達と同じようにフレンドと逸れてしまった人が居るって、一人のフレンドが言ってたのよ。確か、そのプレイヤーの名前がギキだったはずよ。」
驚くフェル、そして女性に尋ねる。
「それで、ギキは何処に居たの?」
「ここから少し遠くになるけど、グアダルっていう要塞都市よ。」
思いもしない情報に喜ぶフェル。
そんなフェルに女性が声を掛ける。
「私達のマップって、行った所しか表示しないけど。街の道具屋で地図を買えば、買った地域の所は表示されるようになるわ。グアダルがあるリディアス地方の地図も売ってあったから買っておくと良いわ。」
女性にお礼を言い、フェルは急いでEnglish.Cafe.Cocoonの部屋から出て行った。
(ギキ、待っててね。)
道具屋へと走っていくフェル。
〈アンダー・アイス〉の空は、まだ朝日が輝いていた。




