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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
14/76

Episode 014【Cafe繭と有名どころと】

 宿屋の入り口から中の様子を窺うTrash。

受付に誰も居ない事を確認し、急いで部屋に戻っていく。

部屋のドアを開けると、Dは部屋の中に置いてある机に向かい何かをしていた。


「何しとんじゃ?」


声をかけられ、Trashが帰って来た事に気付くD。


「おう、暇やから絵描いとった。」

「お前、昔から絵描くん好きな。」


自分の描いた絵をTrashに見せるD。そこにはTrashとフェルとDが描かれていた。


「相変わらず、上手やのぉ。」

「描き続けとるからなだけや。そんで、どやった?」


Dに聞かれ、本題に入るTrash。


「見事に戦利品全部売れたわ。」

「すげぇやん!」

「せやろ…、と言いたいところやけど。普通にあっさり売れたんや、これが。」

「嘘やろっ!? 戦利品って言うても、ほとんどがモンスターの体の一部とかやぞ。まともなんてゴブリンが落とした石斧とか棍棒とかやんけ。」

「俺もそう思ったから、めっちゃ下手に出たからな。これって売れたりしますか?って。」

「ほんで、何て言われたん?」

「あ、ゴブリンの頭蓋骨ですね。買い取りますよって。もう、めっちゃ普通に言われた。」

「マジでか、シュールやな。」

「こんな感じでこの世界に居るから、ついつい忘れてまうけど。やっぱ、ここってゲームなんやろな。」

「そっか、ゲームやったら何でも売れるもんな。」

「いちお、一番高く買い取ってくれる所ないか探してから売ってたんやけど。ゴブリンの血とかは素材屋が一番高く買い取ってくれるわ。石斧や棍棒は武器屋やったわ。」

「店の扱う物によって変わってくるんやな。」

「みたいやな。素材屋のモンスターとかの素材置いてる棚なんか、そこだけ理科室みたいやったわ。」

「すげぇな…。そんで全部売って、いくらになったんや?」

「1205ギニーや。」


鞄からお金の入った袋を取り出し、Dに見せるTrash。

それを見てDが尋ねてくる。


「聞いとってあれやけど。それって、どれくらいなもんなん?」

「まぁ、今回問題になった宿屋代は軽く払えるわ。」

「そうなんか、良かった。」


安心し肩をなで下ろすD。

それを見てTrashが続ける。


「道具屋行った時にアイテムの値段とか見て、ここの世界の物価を確かめてきたからな。」

「さすがやの。ここの支払い済ましたら、酒場の方にも行かなな。」

「酒場の方は、もう大丈夫や。」

「先に払ってきたんか?」

「いや、それがな…。」


そしてTrashは酒場の件の一連を話し始めた。



ーー戦利品を売り切り、宿屋に戻るため行き交う人々の中を駆け抜けるTrash。

そんなTrashを呼び止める声がした。後ろを振り返ってみると、そこに居たのはベルキンであった。

ベルキンは建物から出てきたばかりの様子で、手に書類の様な物を携えていた。


「おいっす。ベルキンさん。」

「おはようございます、Trashさん。」

「ベルキンさん、朝から何してんの?」

「ギルドを結成するために、ここに来てたんですよ。」


そう言って、自分が今出てきた建物を示すベルキン。

ベルキンが示した建物を見てみると、それは昨日の夜に見た〈Guild〉と書かれた建物だった。


「ギルド・ホールに行ってたんや。ここに来て間もないのに、もうギルド作るなんて大したもんやな。」

「ギルドって言っても、メンバーは私の同僚達ですけどね。」

「え? もしかしてベルキンさんが働いとる英会話学校の先生達も、ここに来てしもとるん?」

「はい。」


そう言って、恥ずかしそうに笑うベルキン。

ベルキンの反応を見てTrashがまた訪ねる。


「まさか、全員?」

「はい。」


Trashの問いかけに同じ反応をするベルキン。


「あかんやんっ! 学校運営出来ひんやん。」

「そうなんですよね。だから、せめて此処だけでもと思い。皆でギルドを作る事したんです。」


さっきとは違い真面目な顔で話すベルキン。

そんなベルキンの言葉を聞いて、不思議がるTrash。


「どういう事?」

「この世界で英会話学校を開こうと思いまして。」

「え? そんじゃ、ベルキンさんとこのギルドは英会話学校って事?」

「はい!」


満足気に答えるベルキン。

それを聞いてTrashは気になった事を聞いた。


「ベルキンさんとこのギルドって、何て名前なん?」

「English.Cafe.Cocoon.です。」

「イングリッシュ・カフェ・コクーン。略したら、有名な所と同じやな。」


Trashが小声で呟く。


「ところで、Tarshさんは何をしているんですか?」


ベルキンに聞かれ、事情を話すTrash。

話を聞き終えたベルキンがTrashにある事を教える。


「酒場のお代でしたら、払っておきましたよ。」


ベルキンの言葉にびっくりするTrash。


「えっ!? 何で?」

「本当の世界で、Dさんに助けてもらったお礼にですよ。」


そして満面の笑みをTrashに見せる。

ベルキンの話によると。

Dが現実の世界でお世話になった人物だと分かったベルキンは、何かお礼がしたいと思い。

二人に気付かれないように、二人が座っていたテーブルからこっそりと伝票を取り。

支払いを済ませたとの事であった。



ーーTrashの説明を聞いて、Dが驚く。


「マジで!? ベルキンさん、めっちゃええ人やん!!」

「ホンマにな。あの笑顔は、お前にも見せたかったわ。」

「ベルキン・スマイルかぁ。見てみたかったなぁ。」


昨日、ベルキンと出会った時の事を思い出すD。


「それやのにフェルにど突かれるなんて、ベルキンさん可哀想やわ。」


今度は酒場で倒れていたベルキンを思い出すD。

そんなDにTrashが声を掛ける。


「時間が出来たら、ベルキンさんのギルドに行ってみよかい。」

「せやな。略したら有名な英会話学校と同じ名前になるとこな。」


笑いながらDが答える。

それを聞いてTrashも笑う。


「そんじゃ。俺はフェーんとこに行って、お金の事話してくるわ。」

「おう、俺風呂入ってくるわ。やっと、ゆっくり出来るし。」


部屋から出て行くTrash。

しばらくしてからDも部屋を出て行った。

そしてDが向かっていた机の上には、Trashがベルキンから貰った〈English.Cafe.Cocoon〉のエンブレムが描かれた紙が置かれてあった。






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