Episode 014【Cafe繭と有名どころと】
宿屋の入り口から中の様子を窺うTrash。
受付に誰も居ない事を確認し、急いで部屋に戻っていく。
部屋のドアを開けると、Dは部屋の中に置いてある机に向かい何かをしていた。
「何しとんじゃ?」
声をかけられ、Trashが帰って来た事に気付くD。
「おう、暇やから絵描いとった。」
「お前、昔から絵描くん好きな。」
自分の描いた絵をTrashに見せるD。そこにはTrashとフェルとDが描かれていた。
「相変わらず、上手やのぉ。」
「描き続けとるからなだけや。そんで、どやった?」
Dに聞かれ、本題に入るTrash。
「見事に戦利品全部売れたわ。」
「すげぇやん!」
「せやろ…、と言いたいところやけど。普通にあっさり売れたんや、これが。」
「嘘やろっ!? 戦利品って言うても、ほとんどがモンスターの体の一部とかやぞ。まともなんてゴブリンが落とした石斧とか棍棒とかやんけ。」
「俺もそう思ったから、めっちゃ下手に出たからな。これって売れたりしますか?って。」
「ほんで、何て言われたん?」
「あ、ゴブリンの頭蓋骨ですね。買い取りますよって。もう、めっちゃ普通に言われた。」
「マジでか、シュールやな。」
「こんな感じでこの世界に居るから、ついつい忘れてまうけど。やっぱ、ここってゲームなんやろな。」
「そっか、ゲームやったら何でも売れるもんな。」
「いちお、一番高く買い取ってくれる所ないか探してから売ってたんやけど。ゴブリンの血とかは素材屋が一番高く買い取ってくれるわ。石斧や棍棒は武器屋やったわ。」
「店の扱う物によって変わってくるんやな。」
「みたいやな。素材屋のモンスターとかの素材置いてる棚なんか、そこだけ理科室みたいやったわ。」
「すげぇな…。そんで全部売って、いくらになったんや?」
「1205ギニーや。」
鞄からお金の入った袋を取り出し、Dに見せるTrash。
それを見てDが尋ねてくる。
「聞いとってあれやけど。それって、どれくらいなもんなん?」
「まぁ、今回問題になった宿屋代は軽く払えるわ。」
「そうなんか、良かった。」
安心し肩をなで下ろすD。
それを見てTrashが続ける。
「道具屋行った時にアイテムの値段とか見て、ここの世界の物価を確かめてきたからな。」
「さすがやの。ここの支払い済ましたら、酒場の方にも行かなな。」
「酒場の方は、もう大丈夫や。」
「先に払ってきたんか?」
「いや、それがな…。」
そしてTrashは酒場の件の一連を話し始めた。
ーー戦利品を売り切り、宿屋に戻るため行き交う人々の中を駆け抜けるTrash。
そんなTrashを呼び止める声がした。後ろを振り返ってみると、そこに居たのはベルキンであった。
ベルキンは建物から出てきたばかりの様子で、手に書類の様な物を携えていた。
「おいっす。ベルキンさん。」
「おはようございます、Trashさん。」
「ベルキンさん、朝から何してんの?」
「ギルドを結成するために、ここに来てたんですよ。」
そう言って、自分が今出てきた建物を示すベルキン。
ベルキンが示した建物を見てみると、それは昨日の夜に見た〈Guild〉と書かれた建物だった。
「ギルド・ホールに行ってたんや。ここに来て間もないのに、もうギルド作るなんて大したもんやな。」
「ギルドって言っても、メンバーは私の同僚達ですけどね。」
「え? もしかしてベルキンさんが働いとる英会話学校の先生達も、ここに来てしもとるん?」
「はい。」
そう言って、恥ずかしそうに笑うベルキン。
ベルキンの反応を見てTrashがまた訪ねる。
「まさか、全員?」
「はい。」
Trashの問いかけに同じ反応をするベルキン。
「あかんやんっ! 学校運営出来ひんやん。」
「そうなんですよね。だから、せめて此処だけでもと思い。皆でギルドを作る事したんです。」
さっきとは違い真面目な顔で話すベルキン。
そんなベルキンの言葉を聞いて、不思議がるTrash。
「どういう事?」
「この世界で英会話学校を開こうと思いまして。」
「え? そんじゃ、ベルキンさんとこのギルドは英会話学校って事?」
「はい!」
満足気に答えるベルキン。
それを聞いてTrashは気になった事を聞いた。
「ベルキンさんとこのギルドって、何て名前なん?」
「English.Cafe.Cocoon.です。」
「イングリッシュ・カフェ・コクーン。略したら、有名な所と同じやな。」
Trashが小声で呟く。
「ところで、Tarshさんは何をしているんですか?」
ベルキンに聞かれ、事情を話すTrash。
話を聞き終えたベルキンがTrashにある事を教える。
「酒場のお代でしたら、払っておきましたよ。」
ベルキンの言葉にびっくりするTrash。
「えっ!? 何で?」
「本当の世界で、Dさんに助けてもらったお礼にですよ。」
そして満面の笑みをTrashに見せる。
ベルキンの話によると。
Dが現実の世界でお世話になった人物だと分かったベルキンは、何かお礼がしたいと思い。
二人に気付かれないように、二人が座っていたテーブルからこっそりと伝票を取り。
支払いを済ませたとの事であった。
ーーTrashの説明を聞いて、Dが驚く。
「マジで!? ベルキンさん、めっちゃええ人やん!!」
「ホンマにな。あの笑顔は、お前にも見せたかったわ。」
「ベルキン・スマイルかぁ。見てみたかったなぁ。」
昨日、ベルキンと出会った時の事を思い出すD。
「それやのにフェルにど突かれるなんて、ベルキンさん可哀想やわ。」
今度は酒場で倒れていたベルキンを思い出すD。
そんなDにTrashが声を掛ける。
「時間が出来たら、ベルキンさんのギルドに行ってみよかい。」
「せやな。略したら有名な英会話学校と同じ名前になるとこな。」
笑いながらDが答える。
それを聞いてTrashも笑う。
「そんじゃ。俺はフェーんとこに行って、お金の事話してくるわ。」
「おう、俺風呂入ってくるわ。やっと、ゆっくり出来るし。」
部屋から出て行くTrash。
しばらくしてからDも部屋を出て行った。
そしてDが向かっていた机の上には、Trashがベルキンから貰った〈English.Cafe.Cocoon〉のエンブレムが描かれた紙が置かれてあった。




