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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
12/76

Episode 012【ベルキンとグーパンチと】

 月明かりの中、TrashとDは必死に街の中を走っていた。周りにはもう人影はなく、街の中は静けさが漂っていた。


「ほんで、ベルキンさんは何て言うてたんや?」


前を向きながら、並走するDに話しかけるTrash。


「フェルが大変やから、早よ酒場に来てくださいって言うとった。」


同じく前を向きながら返事するD。


「他には何か言うてへんだこ?」

「誰かに殴られたんか、ベルキンさんのうめき声がしてボイチャが切れてん。」

「マジかよ。フェルのやつ事件かなんかに巻き込まれたんとちゃうか?」

「分からへんけど、とりあえず急いご。」


二人が宿屋に戻り、眠りに就いてしばらくしてから。Dにベルキンからのボイスチャットがかかってきた。その内容は〈ギオールの酒場〉で、今フェルが大変な自体になっているとの事であった。そのボイスチャットを聞いたDはTrashを起こし、急ぎ酒場へと向かっていたのだった。


「酒場や!」


行く先に酒場が見え、叫ぶD。

その酒場の入り口付近には、何人かの男性プレイヤー達が倒れていた。


「何があったんや!?」


異様な風景に警戒するTrash。

よく見ると、その中にはベルキンの姿もあった。

倒れているベルキンに駆け寄るDとTrash。


「ベルキンさん、大丈夫!?」


Dがベルキンを起こし、声をかける。


「Dさん、良かった。早くフェルさんを…。」


そう言って、また気を失うベルキン。

ベルキンの言葉を聞いて、Trashが酒場に駆け込んで行く。


「フェル、大丈夫かあっ!?」


酒場にTrashの声が響き渡る。

ベルキンを安全な所に避難させたDも酒場の中に入っていく。中に入るとTrashが呆然と突っ立っていた。


「トラ、どうした!?」


Dの言葉を聞いても返事をしないTrash。


「おい、トラ!?」


二度目の問いかけに、ようやくTrashが言葉を発した。


「マジか…、俺等…。」


Trashが呆然と見ている先の方を確認するD。

そこにはジョッキ片手に騒ぐフェルが居た。


「どうした、おらぁ!? もう僕に挑む奴は居ないのかぁ!?」


その光景を見てDがTrashに話しかける。


「俺等って、フェルを止める為に夜中起こされたんか…?」

「やろうな…。」

「マジか…。」


溜め息を吐き、目の前の光景を見る二人。

そんな二人に店員が近づいて声を掛けてきた。


「あの、もしかしてあたな達がトラさんとDさんですか?」


店員の言葉を聞いて、顔を見合わせる二人。

そしてTrashが答え始めた。


「そやけど。何で俺らの名前知っとんの?」

「それが、先程から あそこの方が ”トラとDはまだかぁ!? フェルはここに居るぞぉ!!” って仰られていて。」


店員がフェルの方を向きながら話してくれた。


「あ、それでベルキンさんもフェルの名前知っとたんや。」


Dが思わず口に出す。

Dをよそに店内に倒れているプレイヤー達を見るTrash。

そしてTrashが店員に話し掛ける。


「ここに倒れてる連中は全員、フェルに飲み潰された人ばっかなんや。」

「それが…。」


まだ店員が話をしようとしていたが、とりあえず暴れているフェルを止めようとするD。


「フェル、もうその辺にして宿屋に帰ろ。」


そう言ってフェルを連れて帰るべく、フェルの肩を触った時。


「僕に触るな、変態がぁ!!」


突然大声を上げるフェル。そして振り返りざまに思いっきりDを殴りつける。

フェルの見事なまでの右フックを喰らったDが吹っ飛んでいく。

それを見た店員が、先ほどの言葉の続きを話し始めた。


「半分の方は、あのような事になりまして。」


無言で倒れているDに近づくTrash。


「おい。D、大丈夫か?」


Trashの言葉に倒れながら答えるD。


「夜中に起こされるわ。フェルにグーパンチされるわ。ふんだりけったりやわ…。」

「お前も可哀相なやっちゃの…。それにしても、どうするよ? 手がつけられへんやんけ。」


暴れるフェルを見るTrash。

同じようにフェルを見ていたDが起き上がり、意を決したように言葉を発する。


「しゃあないっ!!」


そしてフェルに近づいていくD。

そんなDを見てTrashが何かに気が付く。


「お前、まさか玉砕覚悟かっ!?」


Trashの言葉を聞いて、振り返るD。


「あまい…。」


そしてフェルの近くで立ち止まるD。


「アクェンっ!!」


眩い光に包まれるD。

そんなDには後光が差しているようであった。


「おまっ! 大人気なっ!!」


Dの行動に笑い出すTrash。

それでも、そのままフェルに近づいていくD。


「フェル、もう帰…。」

「このD変態がぁ!!」


そして、また吹き飛んでいくD。

その様子を笑いながら見ているTrash。


「トラ、今の聞いたか? フェルのやつ、ど変態やなしに”D変態”って言いやがったぞ。あいつ確信犯やろ? 絶対。」

「D変態って言うてたな。にしても、お前ウケるわ。」

「アホぬかせ、こちとら命懸けやねんぞ。見てみぃ、俺のアクェンが一発で破壊されてもうたわ。」

「マジか。やべぇ、めっちゃウケる。」

「あいつ、酒飲むとめっちゃ凶暴やんけ。」


成す術なく、ただ呆然とフェルを見る二人。

そんなフェルは手にしていたジョッキを一気し始めた。美味しそうにお酒を飲むフェル。お酒を飲み干すと気持ちよさそうに「ぷはぁ。」っと声に出す。すると先程まで騒がしかったフェルが急にテーブルに倒れだした。


「急性アル中か?」


冗談交じりにフェルの様子を窺うD。

フェルに近寄り確認するTrash。


「いや、こいつ寝とんな。」

「マジかぁ…。自由なやっちゃなぁ。」


二人をよそに気持ち良さそうに寝入るフェル。


「んで。これ、俺らが運ぶんか?」

「え…。俺はもう勘弁やぞ、もう殴られとるんやし。」

「アホぬかせ、俺かて嫌じゃいや。いつ目ぇ覚めて、ど突かれるかもしれんのに。」

「ここは正々堂等とやな…。」


Dの言葉を合図に歩み寄る二人。


『最初はグー!! ジャンケンっ!!…』



酒場から宿屋に戻る三人。

空は段々と明るくなっていた。


「あぁ、もう朝になりよるやんけ。」

「俺ら一体何時間寝れたんや?」

「知るか!! ってか、こいつ小さいわりに重いのぉ。」

「そんなん言うてたら、お前ど突かれっぞ。」

「知るか。重いもんは重いんじゃ。ああ、まさか負けるとわなぁ。」

「ええがい、俺はもうど突かれとるんやし。とんとんや、とんとん。」

「うっせぇ。お前なんか、もっかいど突かれとけ。アホ。」

「にしても。こんなんでフェル、フレ探し出せんのかな?」

「どやろな。歩く台風やからな、こいつ。」

「酒が入るとやけどな。」

「まあでも、一番のとばっちり喰ろたんはベルキンさんやな。」

「そやな。フェルを止めようとして、ど突かれたんやろな。」

「可哀相に、これで日本嫌いにならんかったらええけど。」

「さすがに、それは無いやろ。」

「どうかな?」

「無いやろ? 多分。」


朝もや中、フェルを運び宿屋へと帰っていくTrashとD。

〈ワンダー・クロニクル〉の世界に来た二人の一日は、怒涛のように過ぎていった。






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