Episode 010【骨付き肉と店員と】
宿屋から出てくるTrashとD。出てくるなり その場で座り込み始めた。
長い道のりを経て、二人は〈アンダー・アイス〉に辿り着いていた。
「あぁ、しんど。」
息を切らしながらTrashが話す。
隣に座っているDも息を切らしている。
「でも良かったな。何とか部屋取れて。」
DがTrashに話しかける。
「3部屋空いてるとわな。意外に他の奴らは気付いてへんのかもな。」
「5つのうち、2部屋しかうまってへんだもんな。」
「ゲームを良くやってる奴の方が、見落としやすいんかもな。」
「びっくりなんが、全部屋ツインやったな。」
「そのお陰で俺とお前は一つの部屋で済んだから節約なって良かったわ。」
「残りの1部屋は誰が泊まる事になるんやろな?」
話し終わってから街の様子を見る二人。
街にはプレイヤーらしき人物達や、ここ〈アンダー・アイス〉の住人達が歩いている。
「時代感はあれど、普通な感じやな。」
DがTrashに話し掛ける。
確かにDの言う通り。街の様子は意外にも普通であった。プレイヤー達が自分の置かれてる現状に戸惑い焦っている風でもなく、騒ぐような事もなかった。
「今後、どうなるんか分からんけどな。」
TrashがDに言葉を返す。
いつもの様子のDとは違い、Trashの様子は少し違っていた。
「全員がではないやろけど、ここに来たプレイヤーの連中はこれもゲームの一環やと思っとるんかな?」
頭の中にあった疑問を呟くTrash。
「そんな事はないんとちゃうか?」
Trashの言葉にDが返す。
「お前でもそう思うのに、何で皆普通なんや?」
「一通り考えて答え出ぇへんだから、様子見してんのかもな?」
「とりあえず酒場行って情報集めするか。俺がここに来た本当の理由はそれやからな。」
「腹ごしらえもせなあかんしな。」
Trashが街に行こうとしてた本当の理由を聞いても、あまり何も思っていないD。そんなDを見てもTrashも何も思っていなかった。現実世界で幼い時から一緒に居た二人の間には、言葉にしなくても相手に伝わる絆のようなものが出来ていた。
「フェルも来たら良かったのに。」
「部屋取れたら速攻風呂って、女子やな。まぁ、酒場に行ってくるとは言うてるんやさかい。暇になったら来るやろ。」
酒場を探し歩き出す二人、その最中も周りの様子を見ていた。
周りから聞こえてくるのは「ここって、本当にワンダー・クロニクルの中なの?」や「お前は何処に飛ばされて来てた?」など、この現象について話している声や。「武器屋行ってみたか?」や「俺、ゴブリンと出会ったわ。」など、このゲームについて話している声であった。そんな中 何人かが集まって話し合っているのも、いくつか目にした。
「あれって、何かの集まりなんかな?」
集まって話し合っているグループを見てDが尋ねる。
「他のゲームでフレになってた連中が集まってるんやないか?」
「そういう事か。」
「この現象について、とにかく情報が欲しいってところやろ。」
「なるほどな。」
しばらく歩いていると、大きな建物が見えてきた。
その建物は他の建物とは少し違う感じがした。
その建物を見てDが話す。
「あれなんやろ?」
「上の方に何か書いてあんな。」
Trashが言った先を見るD。
建物の入り口の上あたりには〈Guild〉と書かれていた。
「ギルド?」
書かれてある文字を読むD。
「そういやこのゲーム、ギルドが作れるって説明書に書いてあったわ。」
Dの言葉にTrashが答える。
「どういう事や? ギルドって組合とか、そんな集まりの事やろ?」
「ああ、そっか。お前最近ゲームしてへんって言うてたな。簡単に言うたら、気に入った者同士が集まって騎士団的なもんを作るんや。」
「騎士団?」
「別に騎士団を作るわけやないぞ。ただ仲良くなった者同士が遊びやすいようにとか。目的が同じような奴等が遊びやすいようにする為にやろ。ギルドを作って自分たちのギルドホールに行けば、すぐに気の合う奴らとゲームが出来るって感じやわ。」
「なるほどな。やったら俺らもギルド作るか?」
「俺らはまだギルド要らんやろ。二人だけなんやし。」
「フェルは?」
「あいつはフレ探す為にここに来とるんやし、この先一緒に行動するか分からんやろ。」
「ああ、そっか。」
そして二人が話がながら歩いて行くと、酒場の看板が遠くに見え出した。
「お、酒場発見!!」
「やっとやな。」
酒場に入っていく二人。
酒場の中には他のプレイヤー達でいっぱいだった。
「面白いぐらい、プレイヤーばっかやな。」
周りを見てDが話す。
「よく見たら、NPCもちらほら居るぞ。」
Trashの言葉に不思議がるD。
「NPC?」
「ノン・プレイヤー・キャラの略や。」
「ああ、コンピューターね。」
「懐かしいな、それ。」
空いてるテーブルの席に座るTrashとD。
席に座ると酒場の店員らしき女性が近づいてきた。
「ようこそ、ギオールの酒場に。今日はなんだか、モンスタースレイヤーのお客さんばかりね。」
女性店員の言葉を聞き返すD。
「モンスタースレイヤーって?」
「あらやだ、お客さんたら。」
女性店員の反応に不思議がるD。
「ところで、ご注文は何にしますか?」
注文を聞かれ、とりあえず注文を済ます二人。
注文を聞いた女性店員がテーブルから去っていく。
「トラ、モンスタースレイヤーって何や?」
「お前、説明書読んでへんのか? モンスタースレイヤーって、俺らの事じゃい。」
「え? そうなん?」
「そうなんや。簡単に言うたら、NPCの連中とプレイヤー達を分けて言う為にある言葉なだけや。”旅人”っていうたら、旅しとるNPCも”旅人”に当てはまるからな。」
「なるほどねぇ。それにしてもNPCって言うても、普通に人やな。」
「お前、惚れたりすんなよ。ここゲームやからな。」
「どやろなぁ? プレイヤーの人らも、ここの人らも普通に人やもんなぁ。本当の世界と違うんはエルフとかの種族があるだけやし、そんなんは白人とか黒人とかと一緒やもんなぁ。」
「ったく、相変わらず能天気やのぉ。」
話している二人の所に注文した料理が運ばれてくる。
そこには、お酒や絵に描いたような骨付き肉などがある。
「うお! トラ、骨付き肉やぞ。骨付き肉。」
「スゲェな、これ何の肉つこてるんや?」
「このビールも、何ビールになるんやろな?」
「普通な感じの料理もあるけど、さすがに和風なもんは出てこんな。」
食事を始める二人。
ある程度食べてから、Dがあることに気付く。
「そういや、タバコってあんのかな?」
「言われてみたら、そやな。」
「今気づくまで全然気にしてへんだし、タバコ吸いたいって感じもなかったけど。飯食うた後はさすがに吸いたくなるよな。」
「間違いなく、なるな。」
「自販機なんかないし、ここに来るまでタバコ屋ってあったこ?」
「なかったと思うぞ。」
Trashの話を聞いた後、店員を呼ぶD。
「追加のご注文ですか?」
呼ばれた店員がD達の所まで来て、Dに話しかける。
「いや、ここってタバコってあるん?」
Dの言葉に不思議がる店員。
「タバコですか? ございますよ。」
店員の反応に喜ぶ二人。
「そんじゃ、タバコ2つお願い。あ、あとコーヒーも2つ。」
今度はTrashが答える。
Trashの言葉を聞いて店員が去っていく。
「タバコあるんやな。」
喜ぶDがTrashに話しかける。
「意外やったけどな。」
喜びながらTrashが返事をする。
話を終え二人は食事を続けた。そして食べ終わった二人の元に、先ほどの店員が戻ってきた。
「お待たせしました。タバコとコーヒーでございます。」
そう言って、テーブルの上にタバコとコーヒーを置き去っていく店員。
置かれたタバコを見てDが話す。
「これって、パイプやな。」
「どう見ても、パイプやな。」
とりあえず用意されたパイプを手に取ってみるD。
そしてテーブルに置いてあるロウソクで、タバコの葉に火をつけてみた。
「ゴホッ、ゴホッ。あかん、これ何かちゃうぞ。」
Dの反応を見て、Trashも試してみる。
「ゴホッ、何やこれ? 吸えたもんちゃうな。」
タバコを吸うのを諦め、パイプを置く二人。
「そういや、さっきの店員さんも何か反応変やったもんな。」
「何かあんのかもな? まあええわ、思ったほどタバコ吸いたいって気分にもなってへんし。」
「このままいったら、禁煙出来っかもな。」
「そんなに長い事、この状態で居りたぁないけどな。おし、飯も食うたし。そこら辺の連中に話し聞いてまわるか。」
席を立つ二人。
そして他のテーブルへと足を運んで行った。
賑やかな様子の酒場ではあったが、その何処かには少し静けさの様なものもあった。




